ニャレッジ
健康・病気・ケア

中高齢の猫を9年追いかけた研究CatPAWSで分かったこと|リバプール大学が新たな臨床試験を開始(2026年9月)

対象の目安: シニア猫(7歳〜)

ミオ・食事・健康担当
・ 約18分で読めます
中高齢の猫を9年追いかけた研究CatPAWSで分かったこと|リバプール大学が新たな臨床試験を開始(2026年9月)

「7歳を過ぎた猫を、同じ猫のまま何年も追いかけて健康の変化を記録する」。英国のリバプール大学で2017年2月に始まったそんな研究が、9年を超えました。研究の名前はCat Prospective Ageing and Welfare Study、略してCatPAWSです。大学は2026年9月24日に節目の発表を行い、あわせて、食事が猫の老化にどう影響するかを調べる初めての臨床試験の参加募集を始めたことを明らかにしました。この記事では、大学の発表とこれまでに出た論文で確認できた範囲に絞って、研究の中身、分かってきたこと、新しい臨床試験の概要を整理し、日本でシニア期の猫と暮らす飼い主が健康診断に生かせるポイントにつなげます。

CatPAWSはどんな研究か

CatPAWSは、リバプール大学が運営するFeline Healthy Ageing Clinic(猫の健康的な老化のためのクリニック)で行われている研究です。大学の発表によると、クリニックはペットフードメーカーのロイヤルカナンが支援しており、研究は7歳を超えた猫の健康と福祉を良くすることを目的にしています。最初の猫が登録されたのは2017年2月で、9年間で243匹が参加しました。いちばんの長老はPou Pouという猫で、現在18歳を超えているそうです。

この研究の特徴は、同じ猫を長い期間にわたって繰り返し診察する「前向きの縦断研究」であることです。ある時点の猫をまとめて調べる研究とは違い、1匹ごとの変化を追えます。研究責任者のAlex German教授は発表の中で、同じ猫を時間をかけて観察することで、健康と老化のより完全な姿を調べられる、とコメントしています。

大学のCatPAWS紹介ページによると、参加した猫はクリニックに6か月ごとに通い、次のような検査を受けます。

受診のタイミング主な内容(CatPAWS紹介ページの記載)
獣医師による診察(年1回。10歳を超えた猫は6か月ごと)全身の身体検査(心拍数、体重、筋肉と体型のスコア、血圧、歯の状態、網膜の検査、神経学的検査)、血液検査と尿検査、整形外科的な検査
10歳未満の猫の中間(6か月目)の健診(動物看護師が担当)血圧測定、歯の状態の確認、体重測定、体型と筋肉のスコア

Feline Healthy Ageing Clinicがロイヤルカナンの支援を受けていること、7歳を超えた猫の健康と福祉の改善が目的であること、2017年2月の初登録、243匹の参加、最高齢のPou Pouが18歳を超えていること、German教授のコメントについて。University of Liverpool News(2026年9月24日)より。受診間隔と検査内容はリバプール大学のCatPAWS紹介ページより。

7年分の追跡で分かってきたこと

2026年6月24日にFrontiers in Veterinary Scienceに掲載された論文では、2017年2月から2024年1月までに登録された最初の209匹を解析しています。猫たちは英国イングランド北西部で暮らす飼い猫で、ほとんどが7〜10歳で登録されました。診察は合計1,241回、追跡期間の中央値は4.4年です。

ほとんどの猫が何かしらの異常を抱えていた

追跡期間中に、209匹のうち96%に診察で何らかの異常が見つかりました。異常がまったく見つからなかったのは9匹(4%)だけです。さらに84%の猫は、2つ以上の病気や異常を同時に抱えていました。論文ではこれを多疾患併存(multimorbidity)と呼んでいます。

病気・異常追跡期間中に見つかった割合
歯科疾患84%(176匹)
整形外科的な異常82%(172匹)
心雑音59%(124匹)
高血圧20%(41匹)
慢性腎臓病11%(23匹)
腫瘍9%(19匹)
甲状腺機能亢進症9%(18匹)
糖尿病2%(4匹)

いちばん多い組み合わせは「歯科疾患、整形外科的な異常、心雑音」の3つで、209匹中103匹(49%)に見られました。

ただし、数字の読み方には注意が必要です。論文によると、整形外科的な異常は触診などの診察で判断したもので、レントゲンで確かめたものではありません。心雑音についても、ほとんどの猫で心臓の超音波検査(心エコー)を行っていないため、構造的な心臓病があったかどうかは確認できていないと書かれています。論文は別の研究を引いて、心雑音があって心エコーを受けた猫の半数以上には心臓病の所見がなかったという報告にも触れています。心雑音59%を「6割の猫が心臓病」と読み替えることはできません。

寿命と、筋肉・体型・品種との関係

追跡期間中に209匹のうち59匹(28%)が亡くなり、この集団の寿命の中央値は15.2歳と推定されました。ただし、これは中年期まで元気に過ごして研究に登録された猫だけを対象にした推定です(後述の研究の限界も参照してください)。死因でいちばん多かったのは腫瘍(59匹中18匹、31%)で、次いで心血管の病気(8匹、14%)でした。

死亡との関係を調べた解析では、次のような結果が出ています。

  • 純血種の猫は、雑種の猫に比べて死亡のハザード(ある時点で亡くなるリスクの大きさ)がおよそ2倍(ハザード比2.62)
  • 登録時に軽い筋肉の減りがあった猫は、なかった猫に比べておよそ2倍(ハザード比2.01)
  • 11歳以降では、登録時に太り気味から肥満(BCS 7〜9)だった猫は、理想体型(BCS 5)の猫よりハザードが高かった(ハザード比5.04)
  • 性別は死亡と関係していなかった

著者らは、中年期の筋肉の減りが死亡のハザードを2倍にしたことから、猫が年をとっても適正な体の状態を保つための取り組みが必要かもしれないと述べ、健康的な老化のための対策は中年期より前、あるいは中年期のうちから始めるべきだとまとめています。筋肉量を保つ方法の例としては、十分なたんぱく質を含む食事と、状況に応じた遊びや負担の少ない運動が挙げられています。

一方で論文は、研究の限界も書いています。対象の猫はイングランド北西部という1つの地域に限られ、ほかの地域の猫に当てはまるとは限らないこと、猫を中年期(7〜10歳)から登録しているため、病気が見つかった年齢や寿命の中央値(15.2歳)は実際より高めに出ている可能性があることなどです。論文は、生まれたときから登録する研究であれば、より正確な推定ができるとしています。また、論文の著者の一部はロイヤルカナンの資金を受けており、研究にもロイヤルカナンの資金が入っていると明記されています(資金提供者は研究デザインや解析、執筆には関与していないとの記載もあります)。

209匹・1,241回の診察・追跡期間の中央値4.4年、イングランド北西部の猫であること、各病気の割合、96%と84%、多い組み合わせ49%、整形外科的な異常と心雑音の確認方法の限界、死亡59匹・寿命の中央値15.2歳・死因、純血種・筋肉の減り・BCSのハザード比、著者の結論、研究の限界、資金と利益相反の記載について。Pye CRほか、Frontiers in Veterinary Science(2026年6月24日)より。

登録した時点で、すでに変化は始まっていた

2022年に出た論文では、登録時点(7〜10歳)の206匹の様子がまとめられています。飼い主へのアンケートでは、見た目の変化(53%)、行動の変化(47%)、食べ方の変化(41%)、活動量の変化(40%)を感じていた人が多くいました。診察では45%が太り気味、12%が肥満で、歯科疾患は54%、心雑音は29%に見られています。すべての検査を受けられた176匹のうち、病気の所見がまったくなかったのは12%だけでした。

論文は、飼い主の観察と病気の関係にも触れています。たとえば、歯科疾患は毛並みのもつれや寝る時間が増えたことと、整形外科的な異常は毛並みのもつれや毛づくろいの増加と関連していました。血液検査で腎臓の数値が高かった猫は、「フードのにおいをかいで、立ち去る」様子と関連していたと報告されています。いずれも関連を示したもので、その行動があれば病気だと言えるものではありません。

登録時の206匹で飼い主が感じていた変化の割合、太り気味45%・肥満12%、歯科疾患54%、心雑音29%、所見がなかった猫が12%であること、毛並み・睡眠・毛づくろい・食べ方の観察と病気との関連について。Dowgray Nほか、Frontiers in Veterinary Science(2022年)の要旨より。

筋肉は、体重より先に落ち始める

2025年の論文では、209匹の体重、体型スコア(BCS)、筋肉スコア(MCS)の年齢による変化を調べています。体重は7歳から10歳にかけてわずかに増え、その後16歳までに減っていきました。体型スコアも10.5歳を過ぎてから下がり始めています。一方で筋肉スコアは、7歳から10歳の間にすでにゆるやかに下がり、その後はさらに速いペースで減っていました。10歳を過ぎると軽い筋肉の減りがある状態のほうが多くなり、14歳ごろには肥満よりやせすぎの猫のほうが多くなっていたと報告されています。

論文は、猫の筋肉の減りは中年期より前から始まっていて、体型や体重の減りは10歳以降に始まるとまとめ、年をとった猫の診察でこれらの指標を見ていくことが大切だとしています。つまり「体重は変わらないから大丈夫」とは言い切れず、筋肉の落ち方は体重計だけでは分かりにくいということです。

体重・BCS・MCSの年齢による変化、10歳以降は軽い筋肉の減りがある状態が多くなり14歳ごろには肥満よりやせすぎが多くなること、筋肉の減りが中年期より前から始まるとの結論について。Pye CRほか、Frontiers in Veterinary Science(2025年)の要旨より。

新しく始まった臨床試験の中身

今回の発表のもう1つの柱が、CatPAWSとして初めてのランダム化比較試験です。大学の発表によると、試験の目的は、栄養による介入が猫の老化にどう影響するか、そして健康に過ごせる期間を延ばせるかを調べることです。

発表と紹介ページで確認できた内容は次のとおりです。

  • 試験期間は12か月
  • 紹介ページでは、7〜12歳の猫を募集中と書かれている
  • 参加すると、12か月分のキャットフードが無償で提供され、6か月ごとの受診時にCatPAWSの健診も無償で受けられる
  • 参加希望の飼い主は、オンラインの募集アンケートに回答する

一方で、試験で与える食事の具体的な内容、比較の方法、健康状態などの細かい参加条件、募集の人数や期限は、大学の発表にも紹介ページにも書かれていません。当然ながら、結果もまだ出ていません。「この食事で老化が遅くなる」といった効果は、現時点ではまだ何も示されていない段階です。

メモ

日本から参加できるかどうかについて、大学の発表と紹介ページに居住地の条件は書かれていません。ただし、紹介ページによるとクリニックはリバプールにあり、参加した猫は6か月ごとにクリニックに通います。日本で暮らす猫が参加するのは、現実的には難しいと考えられます(編集部の推測です)。

7〜12歳の猫を募集していること、12か月分のフードの無償提供と6か月ごとの健診、クリニックがリバプールにあることについて。リバプール大学のCatPAWS紹介ページより。試験が初めてのランダム化比較試験で栄養介入の効果を調べるものであること、12か月であること、募集アンケートで応募することはUniversity of Liverpool News(2026年9月24日)より。

日本の飼い主が、シニア期の健康管理に生かせること

CatPAWSは英国の研究で、対象はイングランド北西部の猫に限られています。それでも、どんな項目を定期的に見ているか、どんな異常が多かったかは、日本でシニア期の猫と暮らす私たちにも参考になります。

健診の頻度の考え方

2022年の論文は、中高齢の猫についての専門家の合意ガイドラインでは、10歳を超えた猫には年1回または6か月ごとの健康診断がすすめられていると紹介しています。2026年の論文によると、米国動物病院協会(AAHA)などのガイドラインでは、7〜10歳を中年期(mature)、10歳を超えるとシニア期(senior)と分類しています。

10歳を超えた猫に年1回または6か月ごとの健康診断がすすめられていることは、Dowgray Nほか、Frontiers in Veterinary Science(2022年)の序論より。AAHAなどのガイドラインによる中年期とシニア期の年齢区分は、Pye CRほか、Frontiers in Veterinary Science(2026年6月24日)の序論より。

CatPAWSの猫たちは中年期から6か月ごとに診察を受け、そのなかで多くの異常が見つかっていました。2022年の論文も、中高齢の飼い猫に丁寧な診察を行うと、異常が見つかることは多いとまとめています。何歳から、どのくらいの間隔で、どの検査を受けるかは、猫の状態や持病によって変わるので、かかりつけの獣医師と相談して決めてください。シニア期の健康管理全体の流れは

で整理しています。

健診のときに聞いておきたい項目

CatPAWSで定期的に見ている項目は、日本の動物病院の健診で相談するときの目安になります。

シニア期の健診で相談したい項目(CatPAWSの検査項目をもとに)

  • 体重だけでなく、体型スコア(BCS)と筋肉の状態も見てもらう
  • 血圧を測れるか聞いてみる
  • 歯と歯ぐきの状態を確認してもらう
  • 関節や歩き方に気になる点がないか診てもらう
  • 聴診で心雑音がないか、あればどんな追加検査が考えられるか聞く
  • 血液検査と尿検査のタイミングを相談する
  • 前回からの数値の変化を記録してもらう、または控えておく

歯科疾患は209匹中84%と最も多い異常でした。家庭での歯みがきやお口のチェックは

にまとめています。整形外科的な異常も82%と多く、関節の痛みのサインと治療の考え方は

あわせて読みたい

猫の関節炎(変形性関節症)の見逃しやすい痛みのサインと新しい治療|シニア猫に多い隠れた痛み

で扱っています。

家でできる記録

健診と健診の間に、家庭で残しておける記録もあります。

  1. 1

    体重を定期的に量る

    同じ体重計、同じ時間帯で量ると比べやすくなります。ただし2025年の論文が示すように、筋肉は体重より先に落ち始めることがあります。体重が変わらなくても、背中や腰を触ったときに骨が以前よりごつごつしてきたと感じたら、健診で伝えてください。
  2. 2

    毛並み・睡眠・食べ方の変化をメモする

    2022年の論文では、毛並みのもつれや睡眠の増加、フードのにおいをかいで立ち去る様子などが、病気と関連して見られていました。いつから、どのくらいの頻度か、を書いておくと受診のときに伝えやすくなります。
  3. 3

    寝ているときの呼吸数を数える

    心臓の状態を家庭で見守る手がかりになります。測り方は

    あわせて読みたい

    猫の呼吸数を家で数える|安静時・睡眠時呼吸数の測り方と目安、ミリ波センサー研究でどこまで来たか

    で詳しく扱っています。
  4. 4

    暮らしの質もときどき振り返る

    病気が1つとは限らないシニア期は、数値だけでなく暮らしぶり全体を見ることも大切です。飼い主が回答する質問票の考え方は

    あわせて読みたい

    猫のQOLを飼い主が測る「FelQoL」|2026年に検証された7つの領域と、わが家版チェックの作り方

    で紹介しています。

体重が減ってきたときの原因の切り分けは

、シニア期に多い慢性腎臓病は

あわせて読みたい

猫の慢性腎臓病(CKD)と新薬FeliAIMの最新状況|今できる早期発見と日々のケア

、夜鳴きや迷うような行動が気になるときは

あわせて読みたい

猫の認知症(高齢性認知機能不全症候群/CDS)とは、増えるシニア猫の行動変化とケア

もあわせて読んでみてください。

注意

急にごはんを食べなくなった、水を飲む量やおしっこの量が急に増えた、口を開けて呼吸している、急に後ろ足が立たなくなった、ぐったりしているといった変化は、次の健診を待たずに動物病院に連絡してください。
うちの子はもうすぐ11歳。体重は変わっていないので安心していましたが、背中を触ると確かに前より骨を感じます。次の健診では、血圧と筋肉の状態も見てもらえるか聞いてみます。
日本の猫もこの臨床試験に参加できますか。
大学の発表と紹介ページには居住地の条件は書かれていません。ただ、クリニックはリバプールにあり、参加した猫は6か月ごとに受診する形のため、日本から参加するのは現実的には難しいと考えられます。
臨床試験ではどんなフードを使うのですか。効果はありますか。
試験で使う食事の具体的な内容は、大学の発表にも紹介ページにも書かれていません。試験は始まったばかりで、結果もまだ出ていないため、効果については何も分かっていない段階です。
心雑音が59%と聞いて心配になりました。
論文では、ほとんどの猫で心エコー検査を行っておらず、心雑音が心臓病によるものかは確認できていないと書かれています。心雑音があっても心臓病の所見がない猫もいるため、健診で心雑音を指摘されたら、追加の検査が必要かどうかを獣医師と相談してください。
純血種の猫は寿命が短いということですか。
この研究では、純血種の猫の死亡のハザードが雑種の猫のおよそ2倍でした。ただし純血種は209匹中29匹と少なく、英国の1地域の猫に限られた結果です。純血種の猫すべてに当てはまるわけではないので、1つの研究結果として受け止めてください。
筋肉の減りを防ぐにはどうすればよいですか。
論文では、十分なたんぱく質を含む食事と、状況に応じた遊びや負担の少ない運動が例として挙がっています。ただし持病によっては食事の内容に配慮が必要な場合もあるので、食事を変える前にかかりつけの獣医師に相談してください。

まとめ

英リバプール大学の長期研究CatPAWSは、2017年から中年期以降の飼い猫を6か月ごとに診察し、9年間で243匹が参加しました。最初の209匹の解析では、ほとんどの猫が何らかの異常を抱え、歯科疾患、整形外科的な異常、心雑音が特に多いこと、中年期の軽い筋肉の減りや純血種であることが死亡のハザードの高さと関係していたことが報告されています。新しく始まった臨床試験は、7〜12歳の猫を対象に12か月間、食事による介入の効果を調べるもので、結果が出るのはまだ先です。

日本の飼い主にとっては、「中年期のうちから定期的に診てもらう」「体重だけでなく筋肉や血圧、歯、関節も見てもらう」「家庭での小さな変化を記録しておく」という3つが、この研究から持ち帰れるヒントです。気になることがあれば、次の健診を待たずにかかりつけの獣医師に相談してください。

出典・参考

この記事をシェア

関連する記事

健康・病気・ケア

猫の関節炎(変形性関節症)の見逃しやすい痛みのサインと新しい治療|シニア猫に多い隠れた痛み

猫の変形性関節症は加齢とともに多く、犬のように足を引きずらず痛みを隠すため見逃されがちです。ジャンプをためらう・毛づくろいの変化・トイレの失敗・怒りっぽくなるなどのサインと、環境調整や月1回の注射薬(抗NGF抗体)まで、家庭で気づき動物病院につなぐための知識を整理します。