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猫の呼吸数を家で数える|安静時・睡眠時呼吸数の測り方と目安、ミリ波センサー研究でどこまで来たか

対象の目安: 全ライフステージ

ソラ編集長 / 住環境・多頭飼い担当
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猫の呼吸数を家で数える|安静時・睡眠時呼吸数の測り方と目安、ミリ波センサー研究でどこまで来たか

猫の健康チェックというと、体重、食欲、うんちの様子あたりが思い浮かびます。そこにもうひとつ、道具も費用もほとんどかからないのに、意外なほど役に立つ項目があります。眠っている猫の呼吸を30秒だけ数える、という習慣です。猫は具合の悪さを隠すのが上手な動物で、心臓や肺に負担がかかりはじめても、しばらくは「いつもどおり窓辺で丸くなっている」ように見えます。それでも呼吸の速さは、本人の意思とは関係なく先に動きます。この記事では、安静時呼吸数・睡眠時呼吸数の数え方、資料によって食い違う目安の読み方、そして「その数字はあてにならない」場面を整理します。あわせて、2026年4月に公表された、猫の呼吸を非接触で数えるミリ波センサーの共同研究についても、リリースに書かれている範囲で紹介します。

非接触で猫の呼吸を数える技術が、実用の段階に来た

まず、今回この記事を書くきっかけになった話題から入ります。2026年4月6日、電気通信大学の孫光鎬准教授(機械知能システム学専攻)、東京農工大学の田中綾教授、および株式会社LIXILの三者が、「ミリ波センサーを用いた猫の呼吸計測精度に関する共同研究」を実施したと公表しました。共同研究は2024年11月から2025年3月にかけて行われています。

仕組みはシンプルです。猫にミリ波を照射し、体表面で反射してきた波を計測することで、猫に触れずにお腹の上下運動から呼吸数を算出します。検証では長毛猫と短毛猫を対象に、産業分野で使われる高精度レーザー計測器をリファレンスとして精度を比較しました。その結果、平均計測誤差は2.7%、とくに長毛の猫がうつぶせで寝ている状態では平均誤差0.5%だったと報告されています。

共同研究の実施主体(電気通信大学・孫光鎬准教授、東京農工大学・田中綾教授、株式会社LIXIL)、実施期間が2024年11月〜2025年3月であること、ミリ波を照射し反射波からお腹の上下運動をとらえて呼吸数を算出すること、長毛猫と短毛猫を対象に高精度レーザー計測器をリファレンスとして検証したこと、平均計測誤差2.7%・長毛猫うつぶせ時の平均誤差0.5%という結果、およびこれが特定の実験条件下での検証結果であり実際の使用環境等により変動する場合があるという注記について。電気通信大学ニュースリリース(2026年4月6日)より。

同一の共同研究について、株式会社LIXILからも同日付でニュースリリースが公表されています(平均計測誤差2.7%、長毛猫がうつぶせの状態で平均誤差0.5%、実施期間2024年11月〜2025年3月)。株式会社LIXILニュースリリースより。

リリースには「本成果は特定の実験条件下での検証結果であり、実際の使用環境等により変動する場合があります」という注記も添えられています。ここは正確に受け止めておきたいところです。実験室で高い一致が出たことと、いつもの部屋でいつもの猫を毎日測ることは、同じではありません。

この検証成果をもとに、LIXILは非接触型呼吸計測デバイス「neamo」を製品化し、2026年2月からMakuakeで販売を開始しています。計測データは専用アプリで確認でき、その子固有の「いつもの呼吸数」を算出して、いつもどおりかどうかを1日1回のレポートで通知する機能を備えるとされています。

「neamo」がミリ波センサーを搭載し安静時の呼吸数を非接触で自動計測する製品であること、計測データを専用アプリで確認でき、その子固有の「いつもの呼吸数」をもとに変化を1日1回のレポートで通知する機能を備えること、2026年2月からMakuakeで販売を開始したことについて。株式会社LIXILのニュースリリースより。

メモ

この記事は特定の製品をすすめるものではありません。装置があってもなくても、家庭でできることの中身は変わりません。むしろ機械に任せる前に、飼い主自身が「うちの子の呼吸はふだん何回か」を目で数えられるようになっておくほうが、いざというときに効きます。以下はその話です。

なぜ「呼吸数」が家庭の見守りに向いているのか

体温は測るのに保定が要り、猫にとって負担の大きい処置です(この点は

で詳しく扱っています)。体重は測れますが、日単位の変化はわずかです。その点、呼吸数は触らずに、離れたところから見るだけで数えられます。猫を起こす必要すらありません。

しかも、循環器の分野では実際に使われている指標です。猫の心筋症に関する2020年のACVIMコンセンサス・ステートメント(米国獣医内科学会の合意文書)では、心臓の状態に応じて、飼い主が家庭で安静時または睡眠時の呼吸数をモニタリングすることが推奨され、治療中は呼吸数を30回/分未満に保つことが目標として繰り返し挙げられています。

猫の心筋症に関するACVIMコンセンサス・ステートメント(Journal of Veterinary Internal Medicine 2020)では、飼い主が猫の安静時または睡眠時の呼吸数をモニタリングすることが推奨され、「呼吸数を30回/分未満に保つことを目標として(with the goal of maintaining the respiratory rate under 30 breaths/min)」という趣旨の記述が複数箇所に出てきます。また、呼吸困難で来院した猫のうち呼吸数が80回/分を超えていた例は、他の原因よりもうっ血性心不全である可能性が高かったとされています。PMC掲載版より。

ポイントは、左心系の心不全で肺に水がたまりはじめたとき、猫が苦しそうな様子を見せるより先に、呼吸が速くなるという順番です。「見た目に元気」と「呼吸数は上がっている」は両立します。だからこそ、目で見た印象ではなく数字を残しておく価値があります。

もっとも、これは心臓病だけの話ではありません。日本の動物病院の解説でも、安静時呼吸数の増加は心臓病(とくに肺水腫)のほか、猫喘息などの呼吸器疾患、肺炎といった病気に気づく手がかりになるとされています。逆に言えば、呼吸数が増えているという事実だけでは、原因が心臓なのか肺なのかは分かりません。Vets & Clinicsの解説も、呼吸数のモニタリングでは頻呼吸の原因を特定することはできないが、獣医師に相談する必要があることは示す、とはっきり書いています。

ヒント

「呼吸数の記録は、原因を当てるためのものではなく、受診のタイミングを決めるためのもの」。この位置づけを最初に押さえておくと、数字に振り回されずに済みます。

数え方:眠っているとき、30秒×2

やり方はごく簡単です。難しいのは、正しい条件で測ることのほうです。

  1. 1

    眠っているとき、または静かに横になっているときに測る

    VCAは「ペットが眠っているのを待つのがいちばんよい」としつつ、静かに休んでいる状態でもかまわないとしています。Vets & Clinicsの解説では、快適な室温の落ち着いた環境で、できれば深く眠っている間に測るのが望ましいとされています。
  2. 2

    ゴロゴロ言っていないことを確認する

    これが意外に大事です。VCAは、猫については「ゴロゴロ言っていないことが重要」と明記しています。喉を鳴らしている間は呼吸のリズムが変わってしまい、数えた値の意味がなくなります。
  3. 3

    胸(またはお腹)がふくらんで、へこむまでを1回と数える

    VCAの説明は「胸が1回出入りしたら1回と数える」です。触る必要はありません。少し離れて、静かに見るだけです。
  4. 4

    30秒測って2倍にする

    スマホのタイマーで30秒を計り、その間の回数を2倍して1分あたりに換算します。Vets & Clinicsは「少なくとも30秒、できれば1分」としています。数えにくければ、胸元を20〜30秒動画で撮っておくと、あとから落ち着いて数えられます。
  5. 5

    日付と数値をノートかアプリに残す

    VCAも数えた呼吸数をノートやカレンダーに記録するよう勧めています。体重を測る日にセットにしておくと続きます。
  6. 6

    最初の数日は続けて測り、「その子の平常値」をつくる

    Vets & Clinicsは、まず数日連続で測って基準値を確立し、以後は状況に応じて1日1回、または週1〜2回でよいとしています。個体の値は日ごとに大きくは変わらないためです。

静かに休んでいるか眠っているときの正常な呼吸数が15〜30回/分であること、胸が1回出入りしたら1回と数えること、30秒計測して2倍する方法、眠っているときに測るのが最良で猫ではゴロゴロ言っていないことが重要であること、安静時・睡眠時の呼吸数が継続して30回/分を超える場合は増加しており異常とみなされること、継続的に増加しているならできるだけ早くかかりつけに連絡すべきこと、呼吸に努力を伴う(努力性呼吸)ことが受診を要する所見に挙げられていること、数えた値を記録しておくことについて。VCA Animal Hospitalsより。

慣れると1回30秒で終わります。夜、寝る前に猫の様子を見にいくついでに数える、という飼い主さんが多いようです。日本の動物病院の解説でも、毎日同じ時間帯(たとえば就寝前)に記録すると変化が分かりやすいと勧められています。

獣医専門誌Veterinary Practice Newsの記事では、飼い主に対して、最初の数週間は週2〜3回の測定を行ってその猫固有の平常値を定めるよう促し、1回だけ値が上がったことは緊急事態ではないが、確立した平常値より20%以上高い状態が続く場合は速やかに獣医師の評価を受けるべきだ、という運用が紹介されています。測定の条件として、猫が本当に眠っていること(目を閉じて休んでいるだけでは足りない)が求められ、喉を鳴らしている間は呼吸のパターンが変わるため測定を無効にすべきだ、とも書かれています。値が高めに出たときは、2〜3回続けて測って上昇が続くことを確かめてから動物病院に連絡するよう勧められています。なお同記事にある「およそ5分」という数字は、再診の場で獣医師が飼い主に測り方を教えるのに要する診療時間のことで、飼い主が1回測るのにかかる時間ではありません。家庭での測定そのものは、前述のとおり30秒から1分で終わります。

健康な猫の睡眠時呼吸数(SRR)は家庭環境では通常30回/分を下回ること、胸が完全に1回上下することを1呼吸と数えること、最初の数週間は週2〜3回測定してその猫固有の平常値を定めるよう飼い主に勧めるべきこと、1回だけの上昇は緊急事態ではないが確立した平常値より20%以上高い状態が続く場合は速やかな獣医師の評価が必要であること、猫が本当に眠っていること(単に目を閉じて休んでいるだけでは不可)が測定の条件であること、ゴロゴロと喉を鳴らしている間は呼吸パターンが変わるため測定を無効とすべきこと、上昇した値は2〜3回連続の測定で確認してから動物病院に連絡するよう飼い主に伝えるべきこと、および「およそ5分」は再診時に飼い主へSRRの測り方を指導するのに要する診療時間(teaching SRR monitoring requires approximately five minutes of clinical time)を指すことについて。Veterinary Practice Newsより。

最初は「30秒じっと見てるだけで何かわかるの」と半信半疑でした。1週間続けたら、うちの子はだいたい22〜25回で落ち着くとわかって、それ以来ちょっと多い日はすぐ気づけるようになりました。

目安の数字は、資料によってかなり違う

ここが多くの人がつまずくところです。「猫の正常な呼吸数」を調べると、出典ごとに違う数字が出てきます。まとめると次のようになります。

出典目安として挙げられている値
VCA Animal Hospitals(家庭での呼吸数評価)安静・睡眠時で15〜30回/分。継続して30回/分超は異常
ACVIMコンセンサス(猫の心筋症, 2020年)治療中は30回/分未満を保つことを目標とする
Vets & Clinics(文献のまとめ)起きて安静のとき22〜23回/分とする報告、安静時16〜60回・睡眠時9〜28回/分とする報告がある
PetVoice(日本)リラックス時に約20〜30回/分。40回/分超で要注意、60回/分超は緊急
笠松動物病院(日本)1分間に15〜30回程度。安静時に30回/分超が続くなら受診

安静時呼吸数の目安が1分間に15〜30回程度であること、胸やお腹の上下の動きを1回として数えること、スマホで動画を撮って数える方法や15秒間数えて4倍する方法、毎日同じ時間帯(たとえば就寝前)に記録すると変化が分かりやすいこと、安静時に30回/分を超える呼吸が続くときは受診すべきサインであること、心臓病(とくに肺水腫)や猫喘息などの呼吸器疾患、肺炎の早期発見につながりうることについて。犬猫医療センター笠松動物病院より。

なぜここまで幅が出るのか。ひとつは、「安静時」と「睡眠時」で値が違うからです。Vets & Clinicsが引く報告では、同じ猫でも起きて休んでいるときのほうが、眠っているときより高く出ます。もうひとつは、どの目的で線を引いているかの違いです。30回/分という線は、心臓病をもつ猫を管理するときの「ここを超えたら連絡してほしい」という運用上のしきい値として使われています。40回/分・60回/分という線は、症状の緊急度を段階分けするための目安です。同じ数字を比べているようで、実は用途が違います。

起きて安静にしている健康な猫の呼吸数を22〜23回/分とする報告があること、別の報告では安静時16〜60回/分・睡眠時9〜28回/分という範囲が示されていること、まれに健康な猫でも睡眠中に30回/分をわずかに上回ることがあること、健康な猫でも診察を受けている間に呼吸数が最大176回/分まで劇的に上がりうること、うっ血性心不全がよく管理されている猫や無症候性の心疾患をもつ猫の多くは睡眠中30回/分未満であること(後者では40回/分に達する例もある)、現在のコンセンサスとして睡眠中の呼吸数が30回/分を超える場合はかかりつけに連絡するよう勧められていること、呼吸数のモニタリングでは頻呼吸の原因を特定できないこと、少なくとも30秒(できれば1分)数えて記録すること、まず数日連続で測って基準値を確立し以後は1日1回または週1〜2回でよいことについて。Vets & Clinicsより。

健康な猫がリラックスしているときの呼吸数が約20〜30回/分であること、子猫は成猫より1〜2割ほど速いこと、1分間の測定が難しい場合は20秒×3または30秒×2で換算できること、安静時呼吸数が40回/分を超えたら要注意で受診を検討すべきこと、60回/分を超えたら緊急事態であること、安静時呼吸数が循環器疾患をもつ猫のモニタリング指標としてとくに優れていることについて。PetVoiceより。

実務上の折り合いのつけ方は、こうです。まず、眠っているときに継続して30回/分を超えるなら、様子見ではなくかかりつけに連絡する。40回/分を超えているなら、その日のうちに相談する。60回/分を超えている、あるいは苦しそうなら、夜でも連絡する。そのうえで、いちばん強い判断材料は「その子のいつもの値からどれだけ増えたか」だと覚えておいてください。ふだん21回の猫が29回になっているのは、教科書的には正常範囲でも、変化としては十分に大きいのです。

注意

1回だけ高い値が出たからといって、あわてる必要はありません。夢を見ている、直前に動いた、部屋が暑い、といった理由でも上がります。判断すべきは「同じ条件で測った値が、何日か続けて高いままかどうか」です。逆に、明らかに苦しそうな様子があるときは、数字がいくつであっても待たずに受診してください。

その測定、条件が崩れていませんか

呼吸数は環境と気分で簡単に動きます。次のような場面で測った値は、記録から外すか、条件を注記しておいたほうがよいです。

測っても参考にならない(あるいは注記が必要な)場面

  • ゴロゴロと喉を鳴らしている
  • 遊んだ直後、キャットタワーを駆け上がった直後
  • 抱っこの直後、来客中、掃除機のあと
  • 部屋が暑い、日なたのベッドで寝ていた
  • 体温が上がっている(発熱時は呼吸数も増える)
  • 動物病院の待合室・診察室で測った値
  • 足がぴくぴく動くような浅い眠り(夢を見ている段階)
  • たまたま1回だけ測った値しかない

とくに、動物病院で測った呼吸数を家庭の基準にしないでください。Vets & Clinicsが引く報告では、健康な猫でも診察を受けている間に呼吸数が最大176回/分まで上がりうるとされています。緊張下の数字は、家でくつろいでいるときの数字とはまったく別物です。同じ理由で、家庭で測った値を持参すると、診察室での数字を解釈する助けになります。「うちでは寝ているとき22回前後です」と言えると、獣医師にとって情報量がまるで違います。

暑さの影響も見落としがちです。夏場に室温が上がっていると、健康な猫でも呼吸が速くなります。季節をまたいで比較するときは、そのときの室温も一緒にメモしておくと、あとから読み返しやすくなります(夏の室温管理は

にまとめています)。

受診を急ぐべきサイン:数を数えている場合ではないとき

呼吸数を数えるのは、あくまで平常時の話です。次の状態は、数える前に動くべき所見です。

注意

1)遊んだ直後でもないのに口を開けて呼吸している(パンティング・開口呼吸)、2)呼吸に明らかな努力が要っている(お腹を大きく使う腹式呼吸が目立つ、首を伸ばして肘を張る、うずくまって頭を下げる)、3)舌や歯ぐきが青紫色になっている(チアノーゼ)、または歯ぐきが白っぽい、4)呼吸数が明らかに増えていて、いつもと様子が違う、5)ぐったりしている、隠れて出てこない。これらが見られるときは、様子を見ずに動物病院へ連絡してください。夜間・休日にあたる可能性もあるので、通えるエリアの救急動物病院の連絡先を、平時のうちに調べておくと安心です。移動は無理に抱きしめず、キャリーに入れて静かに運びます。

コーネル大学猫健康センターの解説は、呼吸困難(dyspnea)は病気そのものではなく、多くの猫の疾患に伴う重要な臨床徴候だとしたうえで、呼吸困難のある猫は呼吸が速くなり、口を開けて音を立てて荒い呼吸をすることがあり、頭を下げて体を前に伸ばす姿勢をとることがあると説明しています。そして、呼吸のトラブルが速やかに治療されなければ死亡するリスクが高いとし、「動物が楽に呼吸できているかどうかに疑問があるときは、いつでもすぐに獣医師のところへ連れて行ってください」という言葉を紹介しています。

呼吸困難(dyspnea)が病気そのものではなく多くの猫の健康障害に伴う重要な臨床徴候であること、呼吸困難のある猫では呼吸が速くなり口を開けて音を立てて呼吸することがあり頭を下げて体を前方に伸ばす姿勢をとること、呼吸窮迫のもっとも多い3つの原因として喘息・心不全による肺の水分貯留・胸水が挙げられていること、呼吸のトラブルが速やかに治療されなければ死亡リスクが高いこと、呼吸が楽にできているか疑わしいときはすぐに獣医師に診せるべきであることについて。Cornell Feline Health Centerより。

心臓病の側から見た危険なサイン、とくに突然の後肢麻痺などについては、

で扱っています。この記事は「数え方と目安の読み方」に絞っているので、病気そのものの見取り図はそちらをあわせてご覧ください。

パンティングは、猫では犬と同じに扱えない

犬が舌を出してハアハアするのは、体温を下げるためのごく普通の行動です。猫は違います。光が丘動物病院グループの解説では、猫は通常、口を開けて呼吸する動物ではなく、猫の口呼吸は基本的に異常なサインと考えるとされています。安静にしていても口呼吸が続いている、呼吸が速く浅い、胸やお腹を大きく動かして呼吸している、舌や歯ぐきが青紫色になっている、ぐったりしている、といった状態は緊急性が高いとされ、激しい運動や強い緊張による一時的な口呼吸であっても、繰り返す・安静にしても治まらない場合は受診が必要だと説明されています。

猫は通常口を開けて呼吸する動物ではなく猫の口呼吸は基本的に異常なサインと考えること、安静時にも口呼吸が続く・呼吸が速く浅い・胸やお腹を大きく動かして呼吸する・舌や歯ぐきが青紫色になる(チアノーゼ)・ぐったりしているといった状態は緊急性が高いこと、原因として猫風邪や鼻炎などの上気道の問題、気管支炎・猫喘息・肺炎・肺水腫などの下気道の問題、肥大型心筋症などの心臓病、熱中症や胸水が挙げられること、口呼吸を繰り返す・安静にしても治まらない場合は受診が必要であることについて。光が丘動物病院グループより。

「暑かったのかな」「はしゃぎすぎたのかな」で片づけたくなる場面ですが、猫については、その解釈を一段厳しくしておくのが安全側です。動画で撮っておくと、受診したときに獣医師が状態を判断しやすくなります。

記録の残し方と、かかりつけへの伝え方

せっかく数えるなら、伝わる形で残しておきたいところです。特別なアプリは要りません。日付、数値、そのときの状況(眠っていた/横になっていた、室温、直前に何をしていたか)の3点があれば十分です。

動物病院に持っていくと役立つ記録

  • ここ1〜2週間の睡眠時呼吸数の推移(日付と回数)
  • いつもの値(平常時の平均や、よく出る範囲)
  • 増え始めた時期と、そのころの生活の変化
  • 呼吸のしかたの動画(10〜20秒。胸とお腹の動きが見えるもの)
  • 食欲・体重・元気の様子
  • 服用中の薬やサプリメント、療法食があればその名称

体重の推移と一緒に残しておくと、より読み取りやすくなります。定期的な健康診断の場に、この記録を持っていくのがいちばん活きる使い方です(健康診断の考え方は

を参照してください)。

なお、見守りカメラを使えば、留守中や別室で寝ているときの様子も確認できます。胸の動きが映る画角なら、あとから動画で数えることも可能です。カメラの選び方は

にまとめています。

非接触デバイスをどう位置づけるか

冒頭で紹介したミリ波センサーの研究のように、触らずに呼吸を測る技術は着実に進んでいます。装着型のデバイスを嫌がる猫、狭くて暗い場所に潜り込んで寝る猫では、カメラでも首輪でも計測が難しいという課題があり、電気通信大学のリリースでも、そうしたストレスとプライバシーの課題を解決する手段としてミリ波センサーの活用が期待されている、と共同研究の背景が説明されています。

一方で、こうしたデバイスができることは「数えて記録して、いつもと違うことを知らせる」ところまでです。増えている理由が心臓なのか、肺なのか、暑さなのか、興奮なのかを判定するのは獣医師の仕事です。前述のとおり、呼吸数のモニタリングだけでは頻呼吸の原因は特定できません。

メモ

機械を導入するかどうかにかかわらず、最初にやっておく価値があるのは「自分の目で数えて、うちの子の平常値を知る」ことです。平常値がなければ、どんな精度のセンサーでも「いつもと違う」を判断できません。逆に平常値さえ分かっていれば、道具はノートとスマホのタイマーで足ります。

シニア期に入ると、心臓や腎臓に負担がかかりやすくなり、こうした日々の記録の価値が上がります。年齢に応じた見守りの組み立ては

にまとめました。かかりつけの動物病院を決めておくことも、数字を相談できる相手を持つという意味で大切です(

あわせて読みたい

猫のかかりつけ動物病院の選び方|元気なうちに「猫を診る体制のある病院」を決めておく

)。

眠っている猫を起こさずに測れますか
起こす必要はありません。むしろ眠っているときのほうが望ましく、VCAも「ペットが眠っているのを待つのがいちばんよい」としています。触らず、少し離れたところから胸やお腹の上下を見て数えます。近づきすぎて猫が目を覚ますと、それだけで値が変わってしまうので、1〜2メートル離れた位置から静かに見るのがコツです。
ゴロゴロ言っているときはどうすればいいですか
そのときは測らないでください。VCAは猫についてゴロゴロ言っていないことが重要だと明記しています。喉を鳴らしている間は呼吸のリズムが乱れ、数えた値が実態を反映しません。落ち着いて静かに眠るまで待つか、別の日に測り直しましょう。
正常なのは15〜30回/分ですか、それとも20〜30回/分ですか
どちらも「間違い」ではなく、出典によって示している範囲が違います。VCAは安静・睡眠時で15〜30回/分、日本のPetVoiceの解説はリラックス時で約20〜30回/分としています。Vets & Clinicsがまとめた文献では、起きて安静のとき22〜23回/分とする報告や、安静時16〜60回・睡眠時9〜28回/分という幅の広い報告も紹介されています。範囲を暗記するより、自分の猫の平常値を数日測って把握するほうが実用的です。
30回/分を超えていたら、すぐ病院に行くべきですか
1回だけなら、条件を整えて測り直してみてください。VCAは「継続して30回/分を超えるなら異常とみなし、できるだけ早くかかりつけに連絡する」としています。継続して超えている、あるいは40回/分を超えているなら受診を検討してください。ただし、口を開けての呼吸や苦しそうな様子があるときは、数字にかかわらずすぐに連絡してください。
子猫は成猫と同じ目安で見ていいですか
子猫は成猫より速めに出ます。PetVoiceの解説では、子猫の呼吸数は成猫より1〜2割ほど速いとされています。体が小さいほど呼吸は速くなる傾向があるため、成猫の目安をそのまま当てはめると「速すぎる」と感じてしまうことがあります。この場合も、その子の平常値をとっておくのがいちばん確実です。
呼吸数が増えていたら心臓病ということですか
そうとは限りません。Vets & Clinicsの解説も、呼吸数のモニタリングでは頻呼吸の原因を特定することはできないと明記しています。心臓病のほか、猫喘息などの呼吸器疾患、肺炎、胸水、発熱、痛み、暑さ、貧血など、呼吸が速くなる原因はいくつもあります。原因の切り分けは、レントゲンや心エコー、血液検査を含めた動物病院での検査が必要です。
非接触の計測デバイスがあれば、自分で数えなくてもよいですか
デバイスは記録の手間を減らしてくれますが、判断まで肩代わりするものではありません。電気通信大学のリリースでも、精度の検証結果は特定の実験条件下でのものであり、実際の使用環境等により変動する場合があると注記されています。数字が上がったときにどう動くかを決めるのは飼い主と獣医師です。自分でも数えられるようにしておくと、機器がないときや外出先でも同じ判断ができます。
何回測れば「うちの子の平常値」と言えますか
Vets & Clinicsは、まず数日連続で測って基準値を確立し、以後は1日1回または週1〜2回でよいとしています。個体の呼吸数は日ごとに大きくは変わらないためです。獣医専門誌の記事では、最初の数週間は週2〜3回測ってその猫固有の平常値を定め、以後は平常値より20%以上高い状態が続くようなら受診の目安とする、といった運用も紹介されています。まずは1週間、同じ時間帯に測ってみてください。

まとめ

眠っている猫の胸やお腹の上下を30秒数えて2倍する。この30秒が、猫の心臓や肺の異変に早く気づくための、いちばん手軽な手がかりになります。目安として示される数字は資料によって幅があり、VCAは安静・睡眠時で15〜30回/分、猫の心筋症に関するACVIMコンセンサスは治療中に30回/分未満を保つことを目標として挙げ、日本の解説には40回/分超で受診検討・60回/分超で緊急とするものもあります。どれかひとつを暗記するより、まず数日続けて測って「うちの子の平常値」を作るほうが、はるかに役に立ちます。

一方で、ゴロゴロ言っているとき、遊んだ直後、暑い部屋、動物病院の中で測った値は使えません。健康な猫でも診察中は最大176回/分まで上がったという報告があるほど、この指標は環境と気分に左右されます。そして、口を開けての呼吸、努力性の呼吸、チアノーゼ、明らかな呼吸数の増加といった所見が出ているときは、数を数えている場面ではありません。すぐに動物病院へ連絡してください。

非接触で呼吸を数える技術は、2026年4月に公表された電気通信大学・東京農工大学・LIXILの共同研究のように、実用の段階に入りつつあります。それでも、数字が意味を持つのは「その子のいつも」と並べたときだけです。家庭での記録は診断ではなく、受診を判断するための材料であり、獣医師と会話するための共通言語です。今夜、猫が寝ているあいだに30秒だけ、数えてみてください。

出典・参考

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