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猫の膵炎は「なんとなく元気がない」で始まる|犬との違い・家庭で気づくサインと受診の目安

対象の目安: 成猫〜シニア

ミオ食事・健康担当
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猫の膵炎は「なんとなく元気がない」で始まる|犬との違い・家庭で気づくサインと受診の目安

「ここ数日、なんとなく元気がない」「たまに吐くけれど、次の日はふつうに見える」。そんな曖昧な変化の裏に、膵炎(すいえん)が隠れていることがあります。人や犬の膵炎というと、激しい腹痛と嘔吐で苦しむ姿を思い浮かべる方が多いと思いますが、猫の膵炎はそこまではっきりした症状が出ないことのほうが多く、飼い主が気づきにくい病気です。この記事では、犬の膵炎と猫の膵炎の見え方の違い、家庭で拾える手がかり、診断や治療が「どういう性質のものか」、そして受診の目安を、出典を確認しながら整理します。診断も治療も動物病院で行うものなので、ここでは自己判断のための材料ではなく、早めに相談するための地図として読んでください。

猫の膵炎とは|膵臓が自分の消化酵素で傷つく病気

膵臓はお腹の中で胃や十二指腸、肝臓、胆嚢と隣り合っている臓器で、消化酵素をつくる働きと、血糖を調節するインスリンを出す働きを持っています。膵炎はこの膵臓に炎症が起こる病気です。アニコム損保の解説では、膵炎は膵臓に炎症が起こってさまざまな症状が現れる疾患で、人の膵炎のような激しい腹痛と嘔吐のイメージとは違い、猫の膵炎ははっきりとした症状が出ないため飼い主が気づきにくく、ほかの疾患と症状が似ていて明確な診断がしづらい場合があると説明されています。International Cat Careの解説でも、膵臓に炎症が起こると膵臓がつくる消化酵素が膵臓や周囲の組織に放出されて傷害と痛みを引き起こし、非常に重い場合には他臓器や血圧に影響して命に関わりうるとされています。

膵炎が膵臓に炎症が起こってさまざまな症状が現れる疾患であること、猫の膵炎ははっきりとした症状が出ないので飼い主が気づきにくく、ほかの疾患と症状が似ていて明確な診断がしづらい場合があること、放っておくと重篤な状態になりかねないことについて。アニコム損保 猫との暮らし大百科より。

膵臓が胃と小腸の隣にあり消化のための酵素と血糖を調節するインスリンをつくること、炎症が起こると消化酵素が膵臓や周囲の組織に放出されて傷害と痛みを引き起こすこと、非常に重い場合は他臓器や血圧に影響し命に関わりうること、中高齢の猫に最も多く若い猫でもみられることについて。International Cat Careより。

「珍しい病気」ではなくなってきた

かつて猫の膵炎はまれとされていましたが、近年は見方が変わってきています。アニコム損保の解説では、死亡後に解剖して調べた猫のうち60%で慢性膵炎を示す所見が認められたという報告があり、比較的多い疾患で中高齢の猫に起こりやすいことがわかっているとされています。めぐり動物病院の解説でも、米国の大学病院で剖検された115匹の猫を調べたところ組織学的に66.1%で膵炎がみられ、そのうち50.4%は慢性膵炎のみ、6.1%は急性膵炎のみ、9.6%は急性と慢性の両方の所見があったという報告が紹介されています。一見健康に見えた猫の45%に膵臓の炎症のサインがあったという数字です。

米国の大学病院で剖検された115匹の猫の研究で組織学的に66.1%に膵炎があり、そのうち50.4%が慢性膵炎のみ・6.1%が急性膵炎のみ・9.6%が急性および慢性の所見であったこと、一見健康な猫の45%に膵臓の炎症のサインがあったこと、実際に病院で膵炎と診断される頻度はこれより低いが過去20年で診断されやすくなってきていることについて。めぐり動物病院 元代々木より。

いっぽうで、実際に動物病院で膵炎と診断される猫の数はもっと少なくなります。コーネル大学猫健康センターの解説では、膵炎は一般的な猫の集団の2%未満で起こるとされています。剖検で見つかる高い割合と、生前に診断される割合とのギャップそのものが、この病気の「気づかれにくさ」を表しています。

膵炎が一般的な猫の集団の2%未満で起こるとされること、疑われる原因として外傷・過剰な脂肪の摂取・殺虫剤の摂取・薬物有害反応・炎症性腸疾患・寄生虫感染が挙げられること、無気力・食欲不振・脱水・腹部の腫瘤・低体温・皮膚や歯ぐき・白目の黄色みなどの症状がみられることについて。Cornell Feline Health Centerより。

急性膵炎と慢性膵炎

膵炎は、急に強い炎症が起こる急性膵炎と、長い期間炎症が続く慢性膵炎に分けられます。アニコム損保の解説では、猫では慢性膵炎が多いとされるものの、どちらかを確定するには病理検査が必要で、来院した猫で区別がつかない場合も多いこと、急性から慢性へ移行したり慢性の状態から急性を発症したりすることもあり、どちらも表裏一体と考えてよいと説明されています。急性膵炎は早期に適切な治療を行えば膵臓の構造や機能も回復しますが、対応が遅れると全身の炎症につながり、多臓器不全を起こして致命的になる危険性があるとされています。慢性膵炎は自覚症状を伴わない状態で進行するため初期では発見しにくく、進行すると破壊された膵臓の組織が元に戻らない状態になるとも説明されています。

猫では慢性膵炎が多いとされるが確定には病理検査が必要で区別がつかない場合も多いこと、急性から慢性へ移行したり慢性から急性を発症したりして表裏一体であること、急性膵炎は早期治療で膵臓の構造や機能が回復するが対応が遅れると多臓器不全を起こす危険性があること、慢性膵炎は自覚症状を伴わずに進行し破壊された組織が不可逆性になることについて。アニコム損保 猫との暮らし大百科より。

原因についても、猫では「わからないこと」が多いままです。ACVIMのコンセンサスステートメントでは、猫の膵炎の95%超が特発性(原因を特定できない)と考えられているとされています。アニコム損保の解説でも、遺伝的な要因、ストレス、ウイルスや寄生虫の感染、落下や交通事故などの外傷、薬物、免疫疾患の関与が考えられていると挙げつつ、原因ははっきりわかっていないのが現状だと説明されています。原因が特定できないということは、確実な予防法もないということです。だからこそ、早く気づくことのほうに力を注ぐ価値があります。

猫の膵炎の95%超が特発性と考えられ特定の原因を同定できないこと、糖尿病・慢性腸症・肝リピドーシス・胆管炎・腎炎・免疫介在性溶血性貧血などの併発疾患が報告されているがこれらが膵炎の原因なのか危険因子なのかは決着していないことについて。ACVIM consensus statement on pancreatitis in cats(JVIM)より。

犬の膵炎とここが違う|「激しい嘔吐と腹痛」を待たない

飼い主が膵炎を見逃してしまう最大の理由は、犬や人のイメージで待ってしまうことです。犬の膵炎では強い腹痛と激しい嘔吐が典型とされますが、猫では事情が違います。めぐり動物病院の解説では、猫の膵炎は犬とは似て非なるものとされ、人や犬で強い腹痛を示すとされる一方、猫の腹痛を特定するのは容易ではないと説明されています。同解説にまとめられた、膵炎と診断された猫の症状の出現率は次のとおりです。

所見膵炎と診断された猫での割合
食欲低下・食欲廃絶62〜97%
嘔吐35〜52%
体重減少30〜47%
下痢11〜38%
呼吸困難6〜20%
脱水(身体検査所見)37〜92%
低体温(身体検査所見)39〜68%
明らかな腹痛(身体検査所見)10〜30%
黄疸(身体検査所見)6〜37%

猫の膵炎が犬とは似て非なるものとされること、人や犬で強い腹痛を示すとされる一方で猫の腹痛の特定は容易でないこと、膵炎と診断された猫での症状の出現率(食欲低下・廃絶62〜97%、嘔吐35〜52%、体重減少30〜47%、下痢11〜38%、呼吸困難6〜20%)および身体検査所見の割合(脱水37〜92%、低体温39〜68%、黄疸6〜37%、明らかな腹痛10〜30%)について。めぐり動物病院 元代々木より。

注目したいのは、嘔吐が半数前後にとどまり、明らかな腹痛は1〜3割の猫でしか検出できていないことです。Today's Veterinary Practiceの解説でも、ある臨床評価では17%の猫が無気力以外に症状を示さず、62%が食欲不振で、嘔吐は35〜52%の猫にみられ、腹痛が検出されるのは少数だとされています。つまり、「吐いていないから膵炎ではない」「お腹を痛がっていないから大丈夫」という判断は、猫では成り立ちません。

ある臨床評価で17%の猫が無気力以外の症状を示さず62%が食欲不振であったこと、嘔吐は35〜52%の猫にみられ腹痛が検出されるのは少数であること、急性膵炎の猫では併発疾患の頻度が83%に達しうること、Spec fPLの感度と特異度がそれぞれ79%と82%と報告されていること、超音波検査の感度が11〜68%と幅があること、早期の経腸栄養が絶食より優先されるようになってきたことについて。Today's Veterinary Practiceより。

犬・人でよく語られる膵炎の姿猫の膵炎の実際
嘔吐ほとんどの症例で目立つ35〜52%にとどまる
腹痛強い腹痛が典型明らかな腹痛の検出は10〜30%
主な訴え急な激しい消化器症状元気消失・食欲不振・体重減少
高脂肪食との関係犬では高脂肪食や高脂血症が原因とされる猫では影響ないとも言われるが、見解は一致していない
経過急性が中心に語られやすい慢性が多いとされ、静かに進む

アニコム損保の解説では、人ではお酒やたばこ、脂分の多い食事、胆石が膵炎の原因になることが知られている一方、犬では高脂肪食や高脂血症が膵炎を引き起こすとされるが猫では影響ないとも言われていると説明されています。

ただし、脂肪をめぐる見解は資料によって一致していません。コーネル大学猫健康センターの解説では、発症に関連しうる要因の1つとして「過剰な脂肪の摂取」が外傷や殺虫剤の摂取、薬物有害反応、炎症性腸疾患、寄生虫感染とともに挙げられています(ただし、いずれも「原因として証明された」ではなく「関連が指摘されている」というレベルの記述です)。いっぽうACVIMのコンセンサスステートメントは、膵炎の猫で食事中の脂肪が有害だという科学的根拠は得られていないとしています。「関係ない」と結論が出ているわけではなく、「有害だと示す根拠がまだない」という状態だと理解しておくのが正確です。ここは家庭のケアに直結する重要な違いなので、後半の「してはいけないこと」であらためて触れます。

家庭で気づける手がかり|「静かなサイン」を拾う

膵炎は痛みを伴いうる病気ですが、猫は痛みを隠すのが得意です。International Cat Careの解説では、膵炎のサインとして最も多いのは食べる量が減る・まったく食べない、嘔吐、無気力・だるさ、下痢で、膵炎はとても痛みを伴うことがあるものの猫は痛みのサインを隠すことが多いため、家族との関わりが減る、寝ている時間が増える、いつもと違う場所で休んだり眠ったりする、毛づくろいが減る、といった変化しか目に見えないこともあると説明されています。さらに、体重が減って脱水になり、被毛のつやが失われてフケっぽくなることもあるとされています。

膵炎のサインとして食べる量が減る・食べない、嘔吐、無気力、下痢が多いこと、猫は痛みのサインを隠すため家族との関わりが減る・寝る時間が増える・いつもと違う場所で休む・毛づくろいが減るといった変化しか見られないことがあること、体重減少や脱水、被毛のつやの低下がみられること、長く続いた膵炎では糖尿病や消化酵素の産生不足につながることがあることについて。International Cat Careより。

慢性膵炎の場合はさらに控えめです。アニコム損保の解説では、慢性膵炎は炎症がゆっくり進むためはっきりとした症状が見られないのが特徴で、嘔吐や下痢があっても数日に1回など頻度が低く軽度なケースが多く、消化器症状がまったく見られない猫もいる、進行すると徐々に体重が減り、毛づやが悪い、なんとなく元気や食欲がないといった様子がみられると説明されています。急性膵炎については、1日に何度も嘔吐や下痢を繰り返す、食欲が急になくなる、上腹部を痛がる、動きが鈍くなるといった症状が突然現れることが多い一方、食欲や元気がなくなるだけのわかりにくい場合もあり、様子を見ている間に急激に悪化する危険性があるため、なるべく緊急対応で受診することがすすめられています。

急性膵炎では1日に何度も嘔吐や下痢を繰り返す・食欲が急になくなる・上腹部を痛がる・動きが鈍くなるといった症状が突然現れることが多いが食欲や元気がなくなるだけのわかりにくい場合もあり、様子を見ている間に急激に悪化する危険性があるためなるべく緊急対応で受診がすすめられること、慢性膵炎ははっきりした症状が見られず嘔吐や下痢の頻度が低く軽度なケースが多いこと、進行すると体重減少・毛づやの悪化・なんとなく元気や食欲がないといった様子がみられることについて。アニコム損保 猫との暮らし大百科より。

膵炎かもしれない『静かなサイン』の例

  • ごはんを残すようになった、食べる量がじわじわ減っている
  • 週や月の単位で体重が落ちてきた
  • 数日に1回など、低い頻度でも吐く・軟便が続く
  • 呼びかけへの反応が鈍い、遊びに乗ってこない、寝ている時間が増えた
  • いつもと違う場所(隅・暗がり・高い所ではなく床)でうずくまっている
  • 毛づくろいが減って毛づやが悪い、フケっぽい
  • 水を飲む量やおしっこの量が変わってきた

食欲不振や嘔吐は、膵炎以外にもたくさんの原因で起こります。ごはんを食べないときに家庭で確かめたいポイントは

に、吐くことの整理は

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に、軟便や下痢の見方は

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にまとめています。この記事はそれらの「症状ごとの記事」とは角度を変えて、複数の曖昧なサインが重なったときに膵臓という臓器を思い出すための視点を扱っています。

三臓器炎と併発疾患|膵臓だけの問題として見ない

猫の膵炎を語るときに外せないのが、他の臓器との関係です。アニコム損保の解説では、猫では膵臓が肝臓や胆嚢、胃や十二指腸といった臓器と隣接して存在することから、これらの臓器も同時に炎症を起こしやすく、肝臓と胆嚢・胆管の炎症、腸炎、膵炎の3つをあわせて併発する炎症を「三臓器炎」と呼ぶと説明されています。さらに、膵炎の半数が三臓器炎を併発していたという報告もあるとされ、膵炎がみられる場合は他の臓器にも異常がないかよく診てもらう必要があること、逆に肝炎や胆管炎、腸炎がある場合は膵炎も起きていないか注意して診てもらうことがすすめられています。

猫では膵臓が肝臓・胆嚢・胃・十二指腸と隣接するためこれらの臓器も同時に炎症を起こしやすく、肝臓と胆嚢・胆管の炎症、腸炎、膵炎の3つをあわせて三臓器炎と呼ぶこと、膵炎の半数が三臓器炎を併発していたという報告もあること、慢性膵炎では膵臓の機能低下によりインスリンの分泌が障害され糖尿病を併発するリスクがあることについて。アニコム損保 猫との暮らし大百科より。

ACVIMのコンセンサスステートメントでも、猫の膵炎は糖尿病、慢性腸症、肝リピドーシス、胆管炎、腎炎、免疫介在性溶血性貧血などと併発することが報告されており、これらが膵炎の原因なのか、膵炎になる危険因子なのかはまだ決着していないとされています。Today's Veterinary Practiceの解説では、急性膵炎の猫における併発疾患の頻度は83%に達しうるとも紹介されています。

つまり、膵炎が疑われるときは「膵臓だけ」を診るのでは足りず、肝臓・胆管・腸、そして糖尿病や腎臓の状態まで含めて確認していくことになります。飼い主としては、検査が思ったより多岐にわたる理由がここにあると理解しておくと、獣医師の説明が受け止めやすくなります。長く続いた膵炎では、International Cat Careの解説にあるように糖尿病を発症して体重が減り、水を飲む量やおしっこの量が増えることや、まれに消化酵素を十分につくれなくなって体重減少と下痢につながることもあるとされています。糖尿病のサインについては

もあわせて参考にしてください。

診断は「組み合わせ」で|単独の検査で白黒はつかない

膵炎は、1つの検査で「陽性だから膵炎」「正常だから膵炎ではない」と言い切れる病気ではありません。ここは飼い主が誤解しやすいところなので、丁寧に整理します。

検査できること限界
一般的な血液検査全身の状態把握、脱水や肝酵素・ビリルビン、腎数値の確認、他疾患の除外猫の急性・慢性膵炎の診断に特異的なものではない
Spec fPL / SNAP fPL(膵特異的リパーゼ)膵炎の可能性を高い精度で示す。陽性なら膵炎の可能性が高い正常値でも膵炎を除外できない。軽度の膵炎では感度が下がる
腹部超音波(エコー)膵臓の腫大や周囲の変化、肝臓・胆嚢・腸の併発疾患の確認急性膵炎に対する感度は報告により11〜67%と幅がある
腹部レントゲン他の病気の除外に役立つ膵炎を見つけるための感度・特異度は高くない
病理検査(生検)確定診断ができる侵襲が大きく、状態の悪い猫では現実的でないことが多い

めぐり動物病院の解説では、猫の膵炎の診断における血清リパーゼ活性は膵炎でも上昇しないとされる一方、猫に特有な血清膵リパーゼ免疫反応性(fPLI)を測定することで診断の精度が上がり、軽度の場合より重度の場合のほうが感度が高いと説明されています。275匹の病気の猫におけるSpec fPLの陽性的中率90%、陰性的中率76%という報告が紹介され、著者らはSpec fPLが陽性であれば膵炎の可能性が高い診断を示すが、数値が正常だからといって膵炎の除外には使用できないと示唆したとされています。また、超音波検査の所見の感度は11〜67%と報告されており重症度が高いほど発見されやすいこと、腹部レントゲンは膵炎を見つけるための感度と特異度が良い検査ではなく他の病気の除外になることも説明されています。

猫の膵炎で血清リパーゼ活性は上昇しないとされること、fPLIの測定で診断の精度が上がり軽度より重度のほうが感度が高いこと、275匹の病気の猫でSpec fPLの陽性的中率90%・陰性的中率76%が報告され、陽性なら膵炎の可能性が高いが正常値でも除外には使えないと示唆されたこと、超音波所見の感度が11〜67%で重症度が高いほど発見されやすいこと、腹部X線は膵炎に対する感度・特異度が良い検査ではなく他疾患の除外になること、血液検査は状況把握と除外診断に必要だが膵炎の診断に特異的ではないことについて。めぐり動物病院 元代々木より。

Today's Veterinary Practiceの解説でも、Spec fPLの感度と特異度はそれぞれ79%と82%、超音波の感度は11〜68%と幅があると紹介されています。コーネル大学猫健康センターの解説では、身体検査・病歴・血液検査を基本に、レントゲンで他の疾患を除外し、超音波で膵臓が腫れていたり形がいびつになっていないかを確認すること、fPLI検査でリパーゼの量を正確に測ること、完全に信頼できる診断は生検だけだが重篤な猫にはリスクが高いことが説明されています。International Cat Careの解説でも、軽度の膵炎は診断が難しいため、それが原因だという疑いのもとで治療が行われることもあるとされています。

メモ

検査結果を家庭で読み解こうとしないことが大切です。Spec fPLは陰性でも膵炎を否定できず、超音波も所見が出ないことがあります。逆に、数値が高いからといって重症度がそのまま決まるわけでもありません。数値そのものではなく、症状・身体検査・画像・経過を合わせた獣医師の総合判断に沿って進めてください。

治療は支持療法が中心|輸液・鎮痛・制吐・栄養

「膵炎の薬」を期待して受診すると、説明にとまどうかもしれません。アニコム損保の解説では、膵炎を直接治す特効薬のような薬は今のところなく、治療は炎症を起こした膵臓や全身の血液循環の改善、痛みの管理、吐き気などの消化器症状の治療、栄養管理といった対症治療が主になると説明されています。ACVIMのコンセンサスステートメントでも、急性膵炎の管理目標は輸液療法、疼痛管理、嘔吐と明らかな吐き気のコントロール、栄養サポートに焦点を当てるとされています。

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    輸液で循環と脱水を立て直す

    アニコム損保の解説では、血液循環を改善させることが膵炎の治療では最も重要とされ、静脈に点滴を流す輸液療法が行われること、輸液は嘔吐や食欲不振による脱水の改善にも効果があり、通常は入院して時間をかけて行うと説明されています。
  2. 2

    痛みを取る

    同解説では、急性膵炎で明らかな腹痛を示す猫もいる一方、慢性膵炎で痛みの症状を示さない猫でも痛み止めの治療を行うことで食欲や体調がよくなる場合が多いとされています。痛がって見えないから鎮痛が不要、とはならないということです。
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    吐き気を抑える

    吐き気と嘔吐を抑えることは体液と電解質の損失を減らすうえで重要で、抑えられることで自発的に食べたり経管栄養を受け入れたりしやすくなるとめぐり動物病院の解説では説明されています。
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    早めに栄養を入れる

    食欲が戻らない場合は食欲増進剤が使われ、それでも難しいときは経鼻食道チューブや食道瘻チューブでの栄養補給が検討されます。アニコム損保の解説でも、一時的に経鼻カテーテルや胃・食道チューブを設置して流動食を投与する場合があるとされています。
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    併発疾患を同時に扱う

    三臓器炎や糖尿病を併発している可能性があるため、これらの治療も同時に行う必要があること、細菌感染を伴う場合は抗生剤、炎症を抑える目的でステロイド剤を投与する場合もあると同解説では説明されています。

膵炎を直接治す特効薬はなく治療は血液循環の改善・痛みの管理・消化器症状の治療・栄養管理といった対症治療が主であること、血液循環の改善が最も重要で輸液療法が行われること、慢性膵炎で痛みの症状を示さない猫でも痛み止めの治療で食欲や体調がよくなる場合が多いこと、経鼻カテーテルや胃・食道チューブから流動食を投与する場合があること、三臓器炎や糖尿病の併発疾患の治療も同時に行う必要があり細菌感染時は抗生剤・炎症を抑える目的でステロイド剤を用いる場合があること、急性膵炎では入院管理による集中的な治療が必要となることがほとんどで慢性でも治療が1〜2週間以上と長期になることがあることについて。アニコム損保 猫との暮らし大百科より。

急性膵炎の管理が輸液療法・疼痛管理・嘔吐と吐き気の制御・栄養サポートに焦点を当てること、制吐薬が体液と電解質の損失を抑え早期の経口摂取や経管栄養の受け入れにつながりうること、食欲増進剤に48時間以内に反応しない場合や発症前から長期の食欲不振があった場合に経腸栄養チューブの留置が推奨されること、経鼻食道チューブは局所麻酔で設置でき短期の栄養補給に適し、食道瘻チューブは全身麻酔が必要だが長期の栄養補給に適していることについて。めぐり動物病院 元代々木より。

International Cat Careの解説では、膵炎に特異的な治療はなく、獣医師は膵炎の症状と原因がわかっていればその原因を治療し、多くの猫は時間とともに改善すること、重症例では入院と点滴が必要になり、食べたがらない猫では回復を助けるための給餌チューブや食欲を改善する薬が必要になることがあると説明されています。また、猫に無理やり食べさせるべきではない(食欲に強い悪影響を与え、必要量も満たせない)ともされています。この「無理強いはしないが、栄養は入れる」というバランスが、家庭でのケアと病院での治療の分かれ目になります。

注意

回復までにかかる時間は状態によって大きく変わります。アニコム損保の解説では、急性膵炎では早急に入院管理による集中的な治療が必要となることがほとんどで、慢性膵炎でも治療が1〜2週間以上と長期になることがあるとされています。入院が猫のストレスになる場合の進め方も含め、かかりつけの動物病院とよく相談しながら決めてください。

絶食させない|肝リピドーシスという別の危険

膵炎と聞いて「膵臓を休ませたほうがいいのでは」と考える方は少なくありません。ここが、猫でとくに注意したい落とし穴です。ACVIMのコンセンサスステートメントでは、膵炎の猫はすでに一定期間食欲不振であることがほとんどのため、食事を差し控えること自体が有害となりうるので推奨されないこと、食欲がない、あるいは食べられない状態が続くと肝リピドーシスを発症する猫がおり、それが死亡率を大幅に高めることが記されています。急性膵炎の猫では、経口摂取または経管栄養による経腸栄養を早期に開始すべきだともされています。

膵炎の猫はすでに一定期間食欲不振であることがほとんどのため食事を差し控えることは有害となりうるので推奨されないこと、食欲不振や食べられない状態が続くと肝リピドーシスを発症して死亡率が大幅に高まる猫がいること、急性膵炎の猫では経口摂取または経管栄養による経腸栄養を早期に開始すべきであること、急性膵炎の管理目標が輸液療法・疼痛管理・嘔吐と吐き気の制御・栄養サポートであること、猫は犬より食事中の脂肪に対する耐性が高いことについて。ACVIM consensus statement on pancreatitis in cats(JVIM)より。

コーネル大学猫健康センターの解説でも、食事を差し控えることはできず、そうすると猫は深刻な肝臓の病気を発症するリスクがあるため、チューブを介して食べさせることになると説明されています。めぐり動物病院の解説でも、かつては膵炎の猫で絶食がされていたが今は推奨されず、食欲不振で肝リピドーシスを発症すると死亡率が大幅に増加することが知られているため、経口栄養または経管栄養による経腸栄養を早期に開始する必要があるとされています。Today's Veterinary Practiceの解説でも、経口摂取を差し控えることは近年厳しく見直されており、早期の経腸栄養が絶食より優先されるようになったと紹介されています。

注意

「膵臓を休ませるために食べさせない」という考え方を、飼い主の判断で猫に当てはめないでください。猫では食べない時間が続くこと自体が肝リピドーシス(脂肪肝)という別の命に関わる状態を招きます。食べられない状態が続いているなら、家で工夫して耐えるのではなく、早めに動物病院で栄養の入れ方を相談するのが安全です。

してはいけないこと|犬の常識・人の薬・自己判断

膵炎が疑われるとき、善意でやってしまいがちな行動のうち、避けたいものを3つ挙げます。

1. 人用の解熱鎮痛薬を与えない

痛そうに見えるからと、人の鎮痛薬を与えるのは絶対に避けてください。南が丘動物病院の解説では、猫はアセトアミノフェンの代謝に必要なグルクロン酸抱合能を持たないため体内に毒性物質が蓄積すること、3.5kgの猫が162.5mgのアセトアミノフェンで中毒症状を示した報告があり、人の市販薬は1錠または1包あたり40〜500mgを含むため人の1回分でも致命的になりうること、吸収が速く30〜60分で最高血中濃度に達するため直ちに動物病院での治療が必要になることが説明されています。イブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)も同様に、獣医師の処方がない限り猫に与えないでください。

猫はアセトアミノフェンの代謝に必要なグルクロン酸抱合能を持たないため毒性物質が蓄積すること、3.5kgの猫が162.5mgのアセトアミノフェンで中毒症状を示したこと、人の市販薬は1錠または1包あたり40〜500mgを含むため人の1回分でも猫には致命的になりうること、吸収が速く30〜60分で最高血中濃度に達し直ちに治療が必要になること、薬は猫の手の届かない場所に保管し床に落とさないことについて。南が丘動物病院より。

誤飲・誤食や中毒全般の備えは

にまとめています。

2. 自己判断の絶食・市販薬でしのがない

前の章のとおり、自己判断の絶食は猫では危険です。同じように、人用の胃薬や整腸剤、動物用でも以前に処方された薬の残りを自己判断で使うのは避けてください。膵炎の治療で使われる制吐薬や鎮痛薬は、猫の状態や併発疾患をふまえて種類と量が選ばれるものです。また、ACVIMのコンセンサスステートメントでは、薬歴を注意深く調べ、膵炎の原因となりうる薬剤の使用は可能な限り避けるほうがよいとされています。いま与えているサプリメントや薬があれば、受診時にすべて伝えましょう。

3. 「脂質を減らせば治る」とは限らない|犬の常識を持ち込まない

犬では高脂肪食が膵炎の引き金として語られますが、アニコム損保の解説では、犬では高脂肪食や高脂血症が膵炎を引き起こすとされる一方、猫では影響ないとも言われていると説明されています。ACVIMのコンセンサスステートメントでも、猫は犬より食事中の脂肪に対する耐性が高いとされ、慢性膵炎の猫について、食事中の脂肪が有害だという科学的な根拠は得られておらず、コンセンサスパネルの大半は脂肪含量に懸念を持っていなかったと記されています。一部のパネルメンバーが高脂肪食を避けることが役立つと感じた一方で、高脂肪食は少ない食事量で十分なカロリーを確保するのに役立つ場合もあると述べられ、最終的には猫ごとに食事を評価して必要なら変更することが推奨されています。

いっぽうで、コーネル大学猫健康センターの解説では、発症に関連しうる要因の1つとして過剰な脂肪の摂取が挙げられています。つまり「脂肪は猫の膵炎と無関係だ」と結論が出ているわけではなく、ACVIMが言っているのは「有害だと示す科学的根拠は得られていない」ということ、コーネルが挙げているのは「関連が指摘されている要因の1つ」ということで、両者の見解は一致していません。飼い主の側で「だから低脂肪にすべき」とも「だから脂肪は気にしなくていい」とも決めつけられる状況ではない、というのが現時点の正確な理解です。

発症に関連しうるさまざまな要因として外傷・過剰な脂肪の摂取・殺虫剤の摂取・薬物有害反応・炎症性腸疾患・寄生虫感染が挙げられていることについて。Cornell Feline Health Centerより。

猫は犬より食事中の脂肪に対する耐性が高いとされること、慢性膵炎の猫で食事中の脂肪が有害だという科学的根拠は得られておらずコンセンサスパネルの大半は脂肪含量に懸念を持っていなかったこと、一部のパネルメンバーは高脂肪食を避けることが役立つと考えた一方で高脂肪食は少量で十分なカロリーを確保するのに役立つ場合もあること、猫ごとに食事を評価して必要なら変更することが推奨されることについて。ACVIM consensus statement on pancreatitis in cats(JVIM)より。

つまり、猫の膵炎では「とりあえず低脂肪」が答えとは限りませんし、逆に脂肪を無視してよいと言い切れるわけでもありません。食事の変更は自己判断ではなく、併発疾患やその猫の体重・食欲もふまえて、必ずかかりつけの動物病院の指示のもとで行ってください。療法食の考え方は

も参考になります。

受診の目安|迷ったら「早すぎるくらい」でいい

猫の膵炎は、症状の軽さと重症度が一致しないことがある病気です。だからこそ、受診のハードルは低めに設定しておくのが安全です。オダガワ動物病院の解説では、猫の食欲不振について、成猫では24時間以上食べない場合は注意が必要で観察を始め、48時間以上食べないなら受診が強く推奨され、72時間以上は緊急事態でできるだけ早い治療が必要とされています。子猫や高齢の猫では半日から1日食べない段階で受診を検討すべきで、生後2〜3か月の子猫は半日食べないだけでも低血糖を起こすリスクがあるとされています。また、太っている猫では2〜3日食べないだけで肝リピドーシスを発症するリスクがあるとも説明されています。

成猫では24時間以上食べない場合は注意が必要で48時間以上なら受診が強く推奨され72時間以上は緊急事態であること、子猫や高齢猫では半日から1日で受診を検討すべきで生後2〜3か月の子猫は半日でも低血糖のリスクがあること、2〜3日食べないだけで肝リピドーシス(脂肪肝)を発症するリスクがあること、ぐったりして元気がない・嘔吐や下痢を繰り返す・呼吸が荒い・黄疸があるといった場合は緊急受診が必要であることについて。オダガワ動物病院より。

この状態ならすぐ動物病院へ

  • 24時間以上ほとんど食べていない(子猫・シニアは半日〜1日で相談)
  • 繰り返し吐いている、吐こうとするが何も出ない
  • うずくまって動かない、抱き上げると嫌がる・唸る
  • 歯ぐきや白目、耳の内側が黄色っぽい(黄疸のサイン)
  • 呼吸が荒い、口を開けて呼吸している
  • 皮膚をつまむと戻りが遅い、歯ぐきが乾いている(脱水のサイン)
  • 体温が低く、耳や足先が冷たくぐったりしている

なお、脱水や低体温は膵炎の猫の身体検査所見として高い割合で報告されています(脱水37〜92%、低体温39〜68%)。家庭で体温を測る方法は

にまとめていますが、測定でぐったりした猫に負担をかけるくらいなら、測らずに受診を優先してください。

コーネル大学猫健康センターの解説では、膵炎の症状として無気力・食欲不振・脱水・腹部の腫瘤・低体温・腹水の増加、そして皮膚や歯ぐき、白目の黄色みが挙げられています。とくに黄疸を思わせる黄色みは、肝臓や胆管の併発を疑うサインでもあるので、急いで相談すべき変化です。

家庭でできること|1日3行の観察メモ

診断が難しい病気だからこそ、家庭の記録が診察室で大きな武器になります。「なんとなく元気がない」を獣医師と共有できる形にするのがゴールです。

  1. 1

    食べた量を『皿の量』ではなく数字で残す

    計量スプーンやキッチンスケールで、出した量と残した量をグラムで記録します。多頭飼いなら食事の場所を分けて、誰が何を食べたかがわかるようにします。
  2. 2

    吐いた回数と中身をメモする

    日付と時刻、吐いたものが未消化のフード・液体・毛玉のどれかを1行で書きます。膵炎では頻度が低い嘔吐が続くことがあるため、「たまに」を数字に変えると傾向が見えます。
  3. 3

    体重を週1回はかる

    体重は慢性膵炎で最も現れやすい変化の1つです。同じ曜日・同じタイミングで測り、10g単位で残します。測り方は

    あわせて読みたい

    猫の体重計・ペットスケールの選び方比較|専用スケール・ベビースケール・抱っこ測定を中立比較

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  4. 4

    便とおしっこを毎日1行で

    便の硬さと回数、尿の回数と量(固まる砂ならかたまりの大きさ)を残します。三臓器炎では腸の症状が同時に出ることがあります。
  5. 5

    活動量と居場所を書き添える

    遊びに乗ってきたか、寝ていた場所はどこか、毛づくろいをしていたかを一言添えます。痛みを隠す猫では、この「行動の変化」が最も早いサインになることがあります。

アニコム損保の解説では、猫の膵炎は症状がわかりにくく無症状の猫もいるため、中高齢になったらできれば月1回程度、体重やその他の身体検査を行って客観的に変化がないか獣医師にチェックしてもらうと安心で、症状がなくても半年に1回を目安に血液検査や超音波などの画像検査を行うことがすすめられています。半年に1回は頻繁に思えるものの、人でいえば約2年に1回程度の検診にあたるとも説明されています。かかりつけを持っておくと、こうした定期チェックと「いつもと違う」の相談がつながります。動物病院選びは

もあわせてどうぞ。

10歳の愛猫が、2週間くらい「なんとなく食べムラがある」程度でした。吐くのは10日に1回くらいで、そのたびに翌日は元気に見えたので様子を見ていましたが、体重が3か月で400g減っていたのに気づいて受診しました。血液検査と超音波で膵炎を疑うと言われ、点滴と痛み止め、吐き気止めで数日入院。退院後は食べる量を毎日記録するようにしています。あのとき体重を測っていなければ、まだ気づいていなかったと思います。

International Cat Careの解説では、膵炎を特別に予防する方法はなく、他の病気と同じように適正体重の維持、質のよい食事、ワクチンや駆虫・ノミ対策といった予防医療、そして定期的な健康チェックが、猫を健康に保つためにできる最善だとされています。繰り返しエピソードを起こす猫では、さらなる検査や治療がすすめられることもあると説明されています。予防できない病気だからこそ、早く気づく仕組みを暮らしに置いておく、という考え方が現実的です。

よくある質問

吐いていないのに膵炎ということはありますか
あります。猫の膵炎では嘔吐がみられるのは35〜52%と報告されており、明らかな腹痛が検出されるのは10〜30%にとどまるとされています。無気力以外に症状を示さなかった猫が17%だったという臨床評価の紹介もあります。嘔吐がないことは膵炎を否定する材料になりません。元気消失や食欲不振、体重減少が続くなら動物病院に相談してください。
血液検査で膵臓の数値が正常でした。膵炎ではないと考えていいですか
言い切れません。Spec fPLについては、陽性であれば膵炎の可能性が高い診断を示すが、数値が正常だからといって膵炎の除外には使用できないと示唆されています。とくに軽度の膵炎では感度が下がるとされます。診断は症状・身体検査・血液検査・超音波などを組み合わせた総合判断で行われるので、結果の解釈はかかりつけの獣医師に確認してください。
膵炎と言われたら、低脂肪のフードに変えたほうがいいですか
自己判断で変えないでください。犬では高脂肪食や高脂血症が膵炎を引き起こすとされますが、猫では影響ないとも言われています。ACVIMのコンセンサスステートメントでも、猫は犬より食事中の脂肪への耐性が高く、慢性膵炎の猫で食事中の脂肪が有害だという科学的根拠は得られていないとされ、猫ごとに食事を評価して必要なら変更することが推奨されています。ただしコーネル大学猫健康センターの解説では、発症に関連しうる要因の1つとして過剰な脂肪の摂取が挙げられており、脂肪の位置づけは資料によって一致していません。『無関係』とも『減らせば治る』とも言い切れないので、食事の変更は動物病院の指示のもとで行いましょう。
食べないので、しばらく絶食させて胃腸を休ませるべきでしょうか
猫では推奨されません。膵炎の猫はすでに一定期間食欲不振であることが多く、食事を差し控えること自体が有害となりうるとされ、食べられない状態が続くと肝リピドーシスを発症して死亡率が大幅に高まる猫がいることが知られています。無理やり口に押し込むのも逆効果とされるので、食べられない状態が続いているなら早めに受診し、栄養の入れ方を相談してください。
三臓器炎とは何ですか。膵炎だけの治療ではだめなのですか
猫では膵臓が肝臓・胆嚢・胃・十二指腸と隣接しているため同時に炎症を起こしやすく、肝臓と胆嚢・胆管の炎症、腸炎、膵炎の3つをあわせて三臓器炎と呼びます。膵炎の半数が三臓器炎を併発していたという報告もあり、膵炎がみられる場合は他の臓器にも異常がないかよく診てもらう必要があるとされています。検査や治療が膵臓以外にも広がるのはこのためです。
一度よくなった膵炎は、また起きますか
慢性膵炎では再発を繰り返す可能性があるので注意深く経過をみていく必要があるとされています。また慢性膵炎では膵臓の機能低下によりインスリンの分泌が障害され、糖尿病を併発するリスクがあるとも説明されています。治って終わりではなく、体重や食欲、飲水量の変化を継続して見ていくことが大切です。定期検査の間隔はかかりつけの獣医師と相談してください。

まとめ

猫の膵炎は、犬や人のイメージで待っていると見逃してしまう病気です。嘔吐がみられるのは35〜52%、明らかな腹痛が検出されるのは10〜30%とされ、無気力以外に症状がない猫もいます。慢性膵炎ではさらに静かで、数日に1回の軽い嘔吐や、じわじわ減る体重、毛づやの低下、なんとなく元気がないという程度のことも珍しくありません。剖検研究では高い割合で膵炎の所見が見つかる一方、生前に診断される猫は少ないというギャップが、この病気の性格をよく表しています。

診断はSpec fPLなどの血液検査、超音波、レントゲン、症状や身体検査を組み合わせた総合判断で行われ、単独の検査で確定も除外もできません。治療は膵炎そのものを治す特効薬ではなく、輸液・鎮痛・制吐・栄養という支持療法が中心で、併発しやすい三臓器炎や糖尿病への対応も同時に必要になります。家庭では、自己判断の絶食をしないこと、人用の解熱鎮痛薬を絶対に与えないこと、「脂質を減らせば治る」という犬の常識をそのまま持ち込まないことが、まず守りたい線です。脂肪の位置づけは資料によって見解が分かれており、食事の変更は動物病院の指示のもとで行ってください。

そのうえで飼い主にできる最大の貢献は、食べた量・吐いた回数・体重・便・活動量を記録し、「なんとなく元気がない」を具体的な情報として診察室に持ち込むことです。24時間以上ほとんど食べない、繰り返し吐く、うずくまって動かない、黄疸や脱水のサインがある。そんなときは様子を見ずに、かかりつけの動物病院に相談してください。早い相談は、猫の負担を減らすいちばん確かな方法です。

出典・参考

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