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猫のかかりつけ動物病院の選び方|元気なうちに「猫を診る体制のある病院」を決めておく

対象の目安: 全ライフステージ

ミオ食事・健康担当
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猫のかかりつけ動物病院の選び方|元気なうちに「猫を診る体制のある病院」を決めておく

猫のかかりつけを探すのに一番向いていないタイミングは、猫の具合が悪くなった当日です。息が荒い、丸一日ごはんを食べない、トイレに何度も行くのに尿が出ない。その状態で地図アプリを開き、口コミを読み比べ、電話をかけ、初診の受付時間を確認する。これはかなり過酷な作業です。しかも猫は、初めての場所と初めての人が特に苦手な動物でもあります。

だからこそ、かかりつけは元気なうちに決めておくものです。ここでは「どんな病院を選ぶか」ではなく「どうやって選び、どう付き合っていくか」を、国際的な認証基準と国内の法令・公的統計を手がかりに整理します。キャリーに慣らす方法や、オンライン診療・往診の使い分けは別記事にまとめてあるので、本稿は病院そのものの選び方に絞ります。

なぜ「元気なうちに」決めておく必要があるのか

理由は3つあります。

1つめは単純に、探す時間がないことです。夜間や休診日に具合が悪くなったとき、初めての病院に電話をかけて症状を一から説明し、受け入れ可否を確認する時間は、猫にとっては待ち時間そのものです。

2つめは、初診の壁です。初めての病院では、これまでの病歴、体重の推移、ワクチン歴、既往、投薬内容を、飼い主の記憶だけで伝えることになります。獣医師の側も、その猫の平常時を知りません。「この子にしては元気がない」という判断は、平常時を知っている病院にしかできません。

3つめは、記録が積み上がらないことです。毎回違う病院にかかると、血液検査の数値が「前回と比べてどう動いたか」という形で読めません。腎臓や甲状腺のように、じわじわ進む病気ほど、一点の数値より推移が意味を持ちます。

ヒント

かかりつけを決めるのに、特別なきっかけは要りません。ワクチンや健康診断、去勢・避妊の相談、爪切りといった「元気なとき用事」で一度行ってみるのが、いちばん自然な始め方です。そのときの対応がそのまま、いざというときの対応でもあります。

なお、猫の健康診断の頻度については国際的な目安があります。2021 AAHA/AAFP Feline Life Stage Guidelinesは、すべての猫について最低でも年1回の診察を推奨し、個々のニーズに応じて頻度を増やすこと、シニア猫は少なくとも6か月ごとに、慢性疾患のある猫はさらに頻回に診るべきだとしています。年1回でも通うのなら、その1回をどこで受けるかは決めておいたほうが合理的です。

2021 AAHA/AAFP Feline Life Stage Guidelinesは「The Task Force recommends a minimum of annual examinations for all cats, with increasing frequency as appropriate for their individual needs.」「Senior cats should be seen at least every 6 months and more frequently for those with chronic conditions.」と述べています。AAHAより。

日本にある動物病院の数と、その内訳

まず全体像を押さえておきます。農林水産省の「飼育動物診療施設の開設届出状況(診療施設数)」によれば、令和7年12月31日現在の飼育動物診療施設は全国で17,200施設あり、うち産業動物が4,154施設、小動物・その他が13,046施設です。

数だけ見れば選択肢は多いのですが、内訳を見ると事情が変わります。同じ統計の「就業獣医師数別の施設の状況」では、小動物・その他13,046施設のうち、獣医師を1人使用する施設が8,067施設、2人が2,636施設です。つまり小動物の診療施設のおよそ6割は獣医師1人体制ということになります。

農林水産省「都道府県別飼育動物診療施設の開設届出状況」(令和7年12月31日現在)によれば、飼育動物診療施設の合計は17,200施設で、うち産業動物が4,154施設、小動物・その他が13,046施設です。就業獣医師数別では、小動物・その他13,046施設のうち獣医師を1人使用する施設が8,067施設、2人が2,636施設、3人が825施設となっています。また「飼育動物診療施設におけるエックス線装置の届出状況」(単位:か所)では、列見出しが「飼育動物診療施設数」と「エックス線装置数」に分かれており、小動物・その他のエックス線装置数は10,406、割合は79.8%と示されています。同表の注2は「割合は診療施設に対する届出数」としており、この79.8%は装置の届出数を診療施設数で割った値です。農林水産省より。

これは良し悪しの話ではありません。1人体制の病院には、いつ行っても同じ獣医師が診てくれるという大きな利点があります。一方で、休診日・学会出張・体調不良のときに代わりがいないという構造的な弱点もあります。だから「かかりつけを1つ決める」ことと「かかりつけが開いていないときの行き先を決めておく」ことは、常にセットで考える必要があります。

同じ統計には、エックス線装置の届出状況も載っています。小動物・その他について届け出られたエックス線装置数は10,406で、診療施設数13,046に対する割合は79.8%です。ここで注意したいのは、この10,406が施設の数ではなく装置の届出数だという点です。1つの施設が複数台を届け出ることもあるため、レントゲンを備えている施設の割合は79.8%より低い可能性があります。いずれにせよ、院内でレントゲンが撮れるかどうかは病院ごとに違い、看板からは読み取れません。

「猫を診る体制がある」を国際基準で見る

猫にやさしい病院かどうかを、飼い主の感覚だけで判断するのは難しいものです。ここで役に立つのが、第三者が基準を決めて審査している認証制度です。

iCatCareのキャット・フレンドリー・クリニック(CFC)

International Cat Care(iCatCare)が運営するCat Friendly Clinicは、猫の診療環境の水準を引き上げるための認定プログラムです。団体名について先に整理しておくと、iCatCareは1958年に英国でFeline Advisory Bureau(FAB)として設立された慈善団体で、2013年にInternational Cat Careへ改称しています。獣医師向けの部門として運営されてきたInternational Society of Feline Medicine(ISFM)は、2025年1月にiCatCare Veterinary Societyへ名称が変わりました。ガイドラインの著者名などで今も「ISFM」を見かけるのは、この経緯によるものです。

International Cat Careの「Our History」ページは、同団体が1958年設立の慈善団体で「Initially called the Feline Advisory Bureau (FAB)」であったこと、「In 2013, FAB was rebranded as International Cat Care」であることを記載しています。獣医部門については「launching its veterinary division the European Society of Feline Medicine (ESFM), which became the International Society of Feline Medicine (ISFM)」とし、「In January 2025, the ISFM was renamed the Veterinary Society to align with the charity's name」と述べています。International Cat Careより。

iCatCareの飼い主向けページは、認定を受けたクリニックのスタッフは猫のニーズを理解し、やさしく敬意をもって扱う方法を知っており、猫のケアに必要な知識と設備を備え、治療と回復について明確かつ丁寧に説明する、と説明しています。

認定は3段階です。すべてのクリニックが基本(ブロンズ)基準を満たす必要があり、追加の基準を満たすとシルバー、さらに上位がゴールドになります。iCatCareは、この段階制について、クリニックは規模・立地・構造・人員・設備が大きく異なるためだと説明しています。

領域基本(ブロンズ)シルバーゴールド
待合室猫が待つための別スペースがない場合は猫専用の予約時間を設け、キャリーを床から離して置ける設備が必要猫専用待合室、または犬と猫の視線を遮断する仕切りで区切られた猫専用待合スペースが必要シルバーと同じ(追加基準なし)
診察室安全で設備の整った診察室。通常の診察時間は最低10分(病気・高齢・不安の強い猫や複雑な症例はより長く)追加基準なし猫の診察に主にまたは専属で使う診察室が1つ以上。通常の診察時間は最低15分
入院設備必ずしも必要ではない猫専門の入院室が院内に必要。ケージの大きさなど詳細な要件あり猫専用の入院室と、より大きなケージ
手術院内に外科設備は必須ではない必要な場合に猫を麻酔できる設備が必要専用の手術室が必要
設備猫にやさしい設備を一定水準で備える歯科処置の機器など追加設備臨床検査機器などより高い水準の設備

International Cat Careの「Cat Friendly Clinic - For Owners and Caregivers」は、「All clinics must meet the foundation criteria (Bronze level), with additional criteria required to achieve Silver or Gold level accreditation.」としたうえで、待合室・入院設備・診察・手術・設備の各領域について段階ごとの要件を表で示しています。診察時間については「Minimum of 10-minute consultation times」(ブロンズ)、「Minimum of 15-minute consultation times」(ゴールド)と記載されています。International Cat Careより。

iCatCareが公開している日本語版の「キャット・フレンドリー・クリニック シルバーまたはゴールド認定基準」は、シルバーの待合室要件として「猫専⽤待合室」または「⽝と猫の視線を遮断するため、視界を遮るもので仕切られた猫専⽤待合スペースを設置」のいずれかに該当する必要があるとし、「猫専⽤の予約時間は推奨されますが、上記を省くことはできません」と明記しています。ゴールドの診察室要件は「少なくとも⼀つ以上の診察室を主にまたは専属的に猫の診察に使⽤していること」「通常の診察時間は最低15分」としています。International Cat Careより。

基本(ブロンズ)基準のほうも、飼い主が知っておくと役に立つ内容です。日本語版の基準書は、獣医師と動物看護師の全員が年間3時間以上の猫専門の卒後教育を受けること、1施設あたり1名以上(3名まで)の「猫専任従事者(Cat Advocate)」を指名することを求めています。さらに猫との接し方として、力づくの保定や首の後ろをつかんで持ち上げるスクラッフィングを禁忌とし、革手袋・保定袋・口輪・捕捉用網といった器具を使わないこと、キャリーの中や膝の上でも診察するなど身体検査時のストレスを減らすこと、猫の目を見つめたり直接覗き込んだりしないことを挙げています。

iCatCareの日本語版「キャット・フレンドリー・クリニック基本(ブロンズ)基準」は、獣医師と動物看護師全員に年間3時間以上の猫専門の卒後教育(CPD)受講を求め、1施設あたり1名以上(3名まで可)の「猫専任従事者(Cat Advocate)」の指名を求めています。獣医療上のインタラクションの項では「猫を⼒づくで保定したり、⾸ねっこをつかまえて持つ(スクラッフィング)ことは禁忌です。⾰⼿袋、保定袋、⼝輪、捕捉⽤網などの不適切な器具を使⽤しないでください」と記載し、身体検査時の工夫としてキャリーの中や膝の上での診察、負担の大きい検査を後回しにすること、猫の目を見つめないことを挙げています。International Cat Careより。

日本ではどのくらい認定病院があるのか

日本ではJSFM(Japanese Society of Feline Medicine、ねこ医学会)が国内でのCFC普及を担っています。JSFMのサイトは、CFCを「猫にやさしい動物病院の"道しるべ"としてiCatCareによって確立された国際基準の規格」と説明したうえで、「CFC認定の審査は全てiCatCare本部(英国)が行っており、JSFMが審査に関与することはありません」と明記しています。申請にはiCatCareのClinic membership(要年会費)への登録が必要とされています。

そのうえで、JSFMの「取得病院紹介」ページには、2026年3月現在で国内のCFC取得病院はゴールド174病院、シルバー59病院、ブロンズ3病院と記載されています。また、CFC認定病院の資格継続には3年ごとの更新が必要とされています。北海道から沖縄まで、都道府県別に病院名・住所・電話番号・サイトURLが掲載されているので、近くに認定病院があるかどうかはここで確認できます。

JSFM(ねこ医学会)の「CFC取得病院紹介」ページには「現在国内のCFC取得病院はゴールド取得病院174病院、シルバー取得病院59病院、ブロンズ取得病院3病院となっています。」「CFC認定病院の資格継続には3年ごとの更新が必要となります。」と記載され、「2026年3月現在」と付記されています。また同ページは「最新のCFC認定病院の情報はInternational Cat Careのウェブサイトにてご確認下さい」と案内しています。JSFMより。

JSFMの「CFCとは」ページは、CFCを「猫にやさしい動物病院の"道しるべ"としてiCatCareによって確立された国際基準の規格」とし、「CFC認定の審査は全てiCatCare本部(英国)が行っており、JSFMが審査に関与することはありません」「CFCの申請にあたってiCatCareの会員(Clinic membership)に登録する必要があります」と説明しています。JSFMより。

なお、iCatCareのサイトには市名や郵便番号から最寄りのCFCを探す検索窓もあります。掲載の更新には時差が出ることがあるため、気になる病院があれば直接問い合わせるのが確実です。

米国側のCat Friendly Practice(CFP)

もうひとつ知られているのが、米国のCat Friendly Practiceプログラムです。ここは名称の変更があったので注意が必要です。運営団体だったAmerican Association of Feline Practitioners(AAFP)は現在Feline Veterinary Medical Association(FelineVMA)となっており、CFPプログラムはFelineVMAがInternational Cat Careと連携して運営しています。プログラムは10の領域からなる130項目のオンライン自己評価チェックリストで構成され、シルバーまたはゴールドのステータスが与えられます。認定を受けた施設は、FelineVMAの飼い主向けサイトから探せるとされています。

Cat Friendly Practice Programのページは、同プログラムがFeline Veterinary Medical Association(旧American Association of Feline Practitioners)とInternational Cat Careによって設立されたグローバルな取り組みであるとし、「The CFP Program consists of 10 topic areas outlined in an online self-assessment 130-point checklist.」としてシルバーまたはゴールドのステータスがあることを説明しています。なお同ページはInternational Cat Careを「formerly known as the International Society for Feline Medicine (ISFM)」と表記していますが、iCatCare自身の沿革ページによればISFMは同団体の獣医部門の名称で、団体全体の旧称はFeline Advisory Bureauです。FelineVMAより。

メモ

認定がない病院は猫を診られない、という意味ではまったくありません。認定は費用も手間もかかる任意の取り組みで、取得していない病院にも猫の診療に長けた獣医師は大勢います。認定は「外から見えにくい体制を、第三者の基準で確認できる」ことに価値があるのであって、選択肢を絞り込むためのふるいではありません。

なぜ「犬と分ける」ことが基準になるのか

待合室や入院室で犬と猫を分けるという要件は、単なる配慮ではなく診断精度に関わります。2022年のISFM/AAFP Cat Friendly Veterinary Environment Guidelinesは、理想的には猫は犬や他の動物の視覚・聴覚・嗅覚から離れた別の待合スペースを持つべきだとし、待合室を改装しなくても家具や仕切りの配置の工夫で患者同士の接触を防げると述べています。そして、こうした環境が引き起こす負の情動と生理的ストレスは、誤解を招く臨床所見や、患者の苦痛、病気からの回復の遅れにつながりうるとしています。

2022 ISFM/AAFP Cat Friendly Veterinary Environment Guidelinesは「Ideally, cats should have a separate waiting area, which is away from the sight, sound and scent of dogs and other species.」とし、改装を伴わない工夫として「Arranging furniture and barriers in creative ways can help prevent contact between patients without necessitating waiting room renovations.」を挙げています。また院内でのストレスについて「Such experiences can trigger negative (protective) emotions and associated physiological stress, which can result in misleading clinical findings, patient distress, prolonged recovery from illness.」と述べ、入院中の猫には隠れられる場所を用意すべきこと、ケージは猫同士が視線を合わせないよう同じ方向を向けるべきことを示しています。Journal of Feline Medicine and Surgery掲載版(PMC)より。

つまり、猫が落ち着いて診察を受けられるかどうかは、快適さの問題であると同時に、正しい診断にたどりつけるかの問題でもあるということです。待合室で心拍数が上がったまま測った数値は、その猫の本当の数値ではありません。

通院そのもののストレスを家庭側から減らす方法は

にまとめています。病院選びと両輪で考えると効果が出やすい部分です。

病院の探し方の実際

  1. 1

    地域の獣医師会の会員病院検索から当たる

    日本獣医師会のサイトには「動物病院を探す」ページがあり、全国の地方獣医師会(都道府県・政令市の獣医師会)へのリンクが並んでいます。各獣医師会が自分の地域の会員病院リストや検索機能を持っているため、まずここから地元の病院を洗い出すのが確実です。全国横断で探したい場合は、日本小動物獣医師会の「動物病院検索」も使えます。

  2. 2

    猫にやさしい体制で絞り込む

    JSFMの「CFC取得病院紹介」で、通える範囲に認定病院があるかを確認します。認定がなくても「猫の待合を分けている」「猫の日を設けている」と明示している病院はあります。病院のサイトで、猫の診療についてどれだけ具体的に書かれているかを見てください。

  3. 3

    通院の現実性を確かめる

    片道の移動時間、駐車場の有無、公共交通機関で行けるか、混雑する時間帯、予約制かどうか。猫の場合、移動時間が短いことは想像以上に大きな価値を持ちます。名医であっても片道1時間なら、通う頻度そのものが下がってしまいます。

  4. 4

    元気なうちに一度かかる

    ワクチン、健康診断、爪切り、体重測定など、緊急性のない用事で受診してみます。このときの説明の仕方、猫の扱い方、待合の様子、費用の伝え方が、そのままいざというときの姿です。

  5. 5

    二番目の行き先と夜間救急を決める

    かかりつけの休診日と診療時間を確認し、休診日をカバーできる別の病院と、夜間・救急に対応する病院の連絡先を控えます。往診を検討する場合は、往診獣医師協会の「往診動物病院検索」など、往診に対応する病院を探せるサイトもあります。

猫専門病院や「猫の日」という選択肢

犬を診ずに猫だけを診る病院や、曜日や時間帯を区切って猫だけを受け入れる枠を設けている病院もあります。iCatCareのシルバー基準が「猫専用待合室」または「犬と猫の視線を遮断する仕切りで区切られた猫専用待合スペース」を求め、猫専用の予約時間は推奨としつつもそれで待合の要件を省くことはできないとしていることからも分かるとおり、時間帯を分ける運用は空間を分けることの代わりにはなりません。とはいえ、既存の建物で改装が難しい病院にとっては現実的な工夫であり、飼い主にとっては待合での消耗を減らせる選択肢です。

猫専門をうたう病院が近くにない場合でも、「猫の予約は午前中に集めています」「猫は別室でお待ちいただけます」といった運用を実際に行っている病院はあります。サイトに書かれていないことも多いので、電話で聞いてみる価値があります。

口コミだけで決めないほうがよい制度上の理由

口コミが役に立たないという話ではありません。待ち時間や説明の丁寧さなど、実際に行った人にしかわからない情報は確かにあります。ただ、口コミだけで判断すると見落とすことがあります。

ひとつは、獣医療には広告の制限があるという事情です。獣医療法第17条第1項は、何人も獣医師または診療施設の業務に関して、専門科名と学位・称号を除き、その技能・療法・経歴に関する事項を広告してはならないと定めています。違反には罰則もあります。つまり病院側は、自院の得意分野を自由に喧伝できる立場にありません。宣伝が控えめであることは、実力が控えめであることを意味しないのです。

獣医療法(平成4年法律第46号)第17条第1項は「何人も、獣医師(獣医師以外の往診診療者等を含む。第二号を除き、以下この条において同じ。)又は診療施設の業務に関しては、次に掲げる事項を除き、その技能、療法又は経歴に関する事項を広告してはならない。一 獣医師又は診療施設の専門科名 二 獣医師の学位又は称号」と定め、第2項で農林水産省令で定めるものは広告できるとしています。第20条第2号は第17条第1項違反を50万円以下の罰金の対象としています。e-Gov法令検索より。

この広告制限は近年見直されました。農林水産省の通知一覧によれば、獣医療法施行規則の一部を改正する省令が令和5年10月13日付けで公布され、施行は令和6年4月1日、獣医療広告ガイドラインの全部改正が令和5年11月13日付けで行われています。同省の資料は、見直しにより診療行為全般が広告可能になった一方で、「問合せ先」「通常必要とされる診療内容や費用の情報」「診療のリスクや副作用に関する解説」の併記がない診療広告は認められないこと、誇大広告と比較広告は引き続き認められないことを示しています。

さらに、獣医師の専門性についても道が開かれました。農林水産省の「獣医療広告制限見直しについて」ページは、農林水産大臣の指定する者が行う獣医師の専門性に関する認定を受けていることの広告が可能になるとし、指定された団体として公益社団法人日本獣医師会認定・専門獣医師協議会を挙げています(同ページの更新日は令和8年5月25日)。

農林水産省「獣医療広告制限見直しについて」(更新日:令和8年5月25日)は、令和4年度から5年度にかけて獣医療広告制限の見直しを行ったとし、「農林水産大臣の指定する者が行う獣医師の専門性に関する認定を受けていることの広告が可能になります」として、農林水産大臣の指定する者を「公益社団法人日本獣医師会認定・専門獣医師協議会」としています。農林水産省より。

農林水産省「法律規則」ページの「獣医療広告の制限」欄には、「獣医療法施行規則の一部を改正する省令の公布について(令和5年10月13日付け5消安第4052号)※施行は令和6年4月1日となります。」「獣医療に関する広告の制限及びその適正化のための監視指導に関する指針(獣医療広告ガイドライン)の全部改正について(令和5年11月13日付け5消安第4053号)」「獣医療法施行規則第二十四条第一項第二号の規定に基づき、同号の農林水産大臣の指定する者(令和6年7月24日農林水産省告示第1450号)」が掲載されています。農林水産省より。

農林水産省 消費・安全局畜水産安全管理課「獣医療広告制限の見直しについて」(令和5年12月)は、見直しにより診療内容について「診療行為全般(愛玩動物看護師がいることも可)」が広告可能となる一方、「通常必要となる診療内容や費用の情報、診療のリスクや副作用に関する解説、問合せ先の併記がない診療広告」および「誇大広告、比較広告」は認められないとしています。また獣医師に関する事項として「獣医師の役職履歴、専門性(大臣指定団体による)」が追加されたことを示しています。農林水産省より。

注意

裏を返すと、「日本一」「他院より優れた」といった比較優良広告や、実際の提供内容より誇大な表現は認められていません。そうした表現が前面に出ている場合は、内容そのものを慎重に確かめてください。逆に、費用やリスクまで併記して丁寧に説明しているサイトは、この見直し後のルールに沿って情報提供しようとしている可能性があります。

診療費は病院ごとに違う。これは制度上そうなっている

「A病院とB病院で金額が全然違う」という体験は珍しくありません。これは制度上そうなるようになっています。

日本獣医師会は、獣医師の診療料金について、独占禁止法により獣医師団体が基準料金を決めたり獣医師同士が協定して料金を設定したりすることが禁じられており、現行法のもとでは獣医師は各自が料金を設定して競争できる体制を維持しなければならないため、動物病院によって料金に格差があるのはやむを得ない、と説明しています。

公益社団法人日本獣医師会の「小動物診療料金」ページは「獣医師の診療料金は、独占禁止法により、獣医師団体(獣医師会等)が基準料金を決めたり、獣医師同士が協定して料金を設定したりすることが禁じられています。」「現行法のもとでは獣医師は各自が料金を設定し、競争できる体制を維持しなければならない」「動物病院によって料金に格差があるのはやむを得ない」と説明しています。また調査結果の見方について「本調査結果では、診療項目を細かく分けて示してあります。このため、飼い主の方が実際に支払う診療料金は、それぞれの項目の金額を全て合算した金額になりますのでご注意ください。」と注記しています。日本獣医師会より。

同ページには「家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査」の結果が公開されています。掲載されているうち最も新しいものは令和3年度に実施された調査で、全国1,096名の小動物臨床獣医師から得られた回答をもとに集計されたものです(ほかに平成27年度、平成11年度の調査結果も掲載されています)。実際の金額を見たい場合はこのPDFを確認できますが、日本獣医師会自身が注意しているとおり、調査は診療項目を細かく分けて示しているため、飼い主が実際に支払う金額は各項目の合算になります。「初診料がこの金額だから合計もこのくらい」とはならない点に注意してください。

ヒント

費用について聞くのは失礼ではありません。むしろ、検査や処置の前に「今日はいくらくらいになりますか」「この検査をすると追加でどのくらいかかりますか」と確認しておくほうが、あとで治療方針を悩まずに済みます。見直し後の広告ルールでも、診療内容の広告には費用やリスクの情報提供が求められています。説明を求めることは想定されている行為です。

治療費の備えという観点では、保険の考え方を整理した

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診るのは獣医師だけではない。愛玩動物看護師という手がかり

病院での体験を左右するのは、獣医師だけではありません。受付での声のかけ方、キャリーの運び方、保定のときの手つき。猫が最初に接するのは、多くの場合スタッフです。

この分野は制度としても整備が進んでいます。環境省の資料によれば、愛玩動物看護師は令和元年6月に国家資格化されました。業務は獣医師の指示の下に行われる愛玩動物の診療の補助、愛玩動物の世話その他の看護、愛玩動物の愛護・適正な飼養に係る助言等で、対象動物は犬・猫・愛玩鳥(政令で定める種)です。診療の補助は獣医師を除けば愛玩動物看護師の独占業務とされ、名称独占でもあるため、資格を持たない人が愛玩動物看護師またはこれに紛らわしい名称を使うことは禁止されています。同資料は、愛玩動物看護師名簿の登録者数を令和8年2月2日時点で26,754人としています。制度を所管する農林水産省のページによれば、愛玩動物看護師法が施行されたのは令和4年5月1日で、国家試験は継続して実施されています(第5回国家試験は令和9年2月14日に予定)。まだ新しい資格であり、有資格者の数はこれから増えていく段階です。

環境省 自然環境局総務課 動物愛護管理室の資料「愛玩動物看護師制度について」(2026年2月13日)は、愛玩動物看護師が令和元年6月に国家資格化されたこと、業務が「獣医師の指示の下に行われる愛玩動物の診療の補助」「愛玩動物の世話その他の看護」「愛玩動物の愛護・適正な飼養に係る助言等」であり診療の補助が独占業務(獣医師を除く)であること、対象動物が犬・猫・愛玩鳥(政令で定める種)であること、名称独占であることを示しています。また同資料は愛玩動物看護師名簿登録者数を26,754人(令和8年2月2日時点)としています。環境省より。

農林水産省「愛玩動物看護師」ページ(更新日:令和8年6月22日/消費・安全局畜水産安全管理課)は「令和4年5月1日に愛玩動物看護師法が施行されました。」と記載し、第5回愛玩動物看護師国家試験の予備試験を令和8年10月4日、国家試験を令和9年2月14日に実施するとしています。農林水産省より。

飼い主の立場では、有資格者が何人いるかを数える必要はありません。見るべきは、猫を扱う場面での実際の動きです。キャリーを持ち上げるときに底を支えているか、猫に近づくときに正面から覗き込んでいないか、待合で不安そうな猫にタオルを掛ける提案が出てくるか。iCatCareの基本(ブロンズ)基準が、獣医師だけでなく動物看護師にも年間3時間以上の猫専門の卒後教育を求め、受付スタッフにも猫についての知識を深める努力を求めているのは、まさにこの部分が診療体験を決めるからです。

一次診療と二次診療の役割分担を知っておく

かかりつけに求めるべきなのは「何でも自院で完結できること」ではありません。むしろ、自院でできることとできないことの線引きが明確で、必要なときに適切な施設へつないでくれることのほうが重要です。

腫瘍、神経、循環器、眼科、整形外科などの領域では、専門的な設備や経験を持つ二次診療施設が紹介制で診療を行っています。CTやMRIのような機器は、多くの一般診療施設にはありません。先に触れた農林水産省の統計でも、小動物・その他のエックス線装置の届出数は診療施設数の79.8%にとどまります。これは装置ベースの数字なので、実際にレントゲンを備えている施設の割合はさらに低い可能性があり、そこから先の高度な画像診断となれば、対応できる施設はいっそう限られます。

だからこそ、初診のときに「専門的な治療が必要になったとき、紹介していただけますか」と聞いておく価値があります。紹介先の心当たりがあるか、紹介の判断はどんなときに行うか。この質問に具体的に答えられる病院は、自院の限界を把握しているということでもあります。

メモ

二次診療施設は原則として紹介制です。飼い主が直接申し込める枠を設けている施設もありますが、多くは、かかりつけからの診療情報提供書と検査データがあって初めて診療が始まります。この意味でも、かかりつけとの関係を平時から作っておくことが、いざというときの選択肢を広げます。

東京大学大学院農学生命科学研究科附属動物医療センターの「ご紹介の流れ」ページは「当センターは二次診療施設のため、かかりつけの動物病院からの予約診療のみ行なっております」とし、飼い主からの直接の連絡では予約の案内ができないこと、紹介元の獣医師が所定の紹介状フォーマットに記入して来院日の前日までに提出する運用であることを示しています。東京大学附属動物医療センターより。

初診・見学で確認したいこと

かかりつけ候補を見に行くときのチェックリスト

  • 待合室で猫と犬の動線・視線が分かれているか。分けられない場合、キャリーを床から離して置ける台や、カバーの貸し出しなどの工夫があるか
  • 受付から診察までの待ち時間の目安と、混雑する曜日・時間帯を聞けるか
  • 診察のときの猫の扱い方。無理に引き出さずキャリーの上ぶたを外して診る、力づくの保定やスクラッフィングをしないなど、落ち着かせる工夫があるか
  • 診療時間と休診日。休診日にあたったときの案内(他院の紹介、電話対応の可否)があるか
  • 夜間・救急のときにどこへ行けばよいかを、平時に案内してもらえるか
  • 院内でできる検査の範囲(血液検査、レントゲン、超音波、尿検査など)と、外注になる検査の目安日数
  • 二次診療施設や専門科への紹介実績があるか。紹介が必要と判断する基準を説明してくれるか
  • 説明が専門用語のままにならず、選択肢と、それぞれの利点・欠点・費用まで示されるか
  • 検査結果や画像を見せながら説明してくれるか。結果の写しをもらえるか
  • 会計の前に費用の見通しを伝えてくれるか。高額になりそうなときに事前相談があるか
  • 猫の体重・食事量・飲水量・排泄など、家庭での記録を持参したときに受け止めてくれるか
  • 愛玩動物看護師など、猫に慣れたスタッフがいるか(受付や保定の場面での動きを見る)

このうち特に効いてくるのが、最後の「家庭での記録を受け止めてくれるか」です。猫は病院で本来の様子を見せません。家での飲水量や排泄回数、体重の推移といった情報は、飼い主にしか集められないデータです。それをきちんと診療の材料にしてくれる病院は、猫の診療に慣れている可能性が高いと考えられます。

最初にかかった病院は家から近くて便利でしたが、待合室でいつも犬に吠えられて、うちの子は診察前からパニックでした。近所のもう1軒に変えてみたら、猫用の待合の仕切りがあって、診察もキャリーの上ぶたを外したまま進めてくれて。同じ検査でも、終わったあとの猫の消耗が明らかに違いました。距離は少し延びましたが、通うのが怖くなくなったのが一番の変化です。

決めたあとが本番。かかりつけを機能させる3つの習慣

病院を決めただけでは、かかりつけは機能しません。診察室で使える形の情報を、飼い主が持ち込めるかどうかで、同じ病院でも得られるものが変わります。

  • 体重を月1回はかる。市販の体重計に乗せたキャリーごと量って、あとでキャリーの重さを引く方法で構いません。猫の体重の1割は、人でいえば5kg以上に相当する変化です。数字で追わないと、見た目ではまず気づけません。
  • 飲水量・食事量・排尿の回数と塊の大きさ・排便の回数をメモする。毎日でなくても、1週間だけでも記録があると、獣医師は「いつからか」を推定できます。スマートフォンのメモアプリでも、カレンダーへの書き込みでも十分です。
  • 気になる様子は動画で撮る。歩き方、呼吸の様子、けいれん、変な鳴き方。病院では出ない症状ほど、動画が決定的な情報になります。撮影日時が残るので、経過も追えます。

そして受診のときは、症状を「いつから」「どのくらいの頻度で」「どんなときに」の順に伝えると、限られた診察時間が有効に使えます。逆に、聞きたいことは事前に3つくらいに絞ってメモしておくと、聞き忘れが減ります。診察室では猫のことで頭がいっぱいになり、あとから「あれを聞けばよかった」となりがちです。

ヒント

健康診断のとき、検査結果の写しをもらえるか聞いてみてください。多くの病院は快く渡してくれます。年ごとにファイルしておくと、数年後に「この値は昔から高めだった」と分かることがあります。転院や夜間救急でもそのまま使えます。

記録は誰のものか。転院とセカンドオピニオン

かかりつけを変えるとき、あるいは別の意見を聞きたいとき、いちばん気になるのが記録の扱いです。ここは法令を正確に押さえておく価値があります。

獣医師法第21条第1項は、獣医師は診療をした場合には診療に関する事項を診療簿に遅滞なく記載しなければならないと定め、第2項は診療簿を3年以上で農林水産省令で定める期間保存しなければならないとしています。その省令である獣医師法施行規則第11条の2は、牛・水牛・しか・めん羊・山羊は8年間、その他の動物は3年間としています。つまり犬猫の診療簿の保存期間は3年間です。

また施行規則第11条は、診療簿に少なくとも記載すべき事項として、診療の年月日、診療した動物の種類・性・年齢・名号・頭羽数・特徴、所有者または管理者の氏名等および住所、病名および主要症状、りん告(飼い主からの申告)、治療方法(処方および処置)を挙げています。

獣医師法(昭和24年法律第186号)第21条第1項は「獣医師は、診療をした場合には、診療に関する事項を診療簿に、検案をした場合には、検案に関する事項を検案簿に、遅滞なく記載しなければならない。」、第2項は「獣医師は、前項の診療簿及び検案簿を三年以上で農林水産省令で定める期間保存しなければならない。」と定めています。なお第19条第1項は「診療を業務とする獣医師は、診療を求められたときは、正当な理由がなければ、これを拒んではならない。」と定めています。e-Gov法令検索より。

獣医師法施行規則(昭和24年農林省令第93号)第11条は、診療簿に少なくとも「診療の年月日」「診療した動物の種類、性、年齢(不明のときは推定年齢)、名号、頭羽数及び特徴」「診療した動物の所有者又は管理者の氏名又は名称及び住所」「病名及び主要症状」「りん告」「治療方法(処方及び処置)」を記載しなければならないとしています。第11条の2は「法第二十一条第二項の農林水産省令で定める期間は、牛、水牛、しか、めん羊及び山羊の診療簿及び検案簿にあつては八年間、その他の動物の診療簿及び検案簿にあつては三年間とする。」と定めています。e-Gov法令検索より。

ここから飼い主が読み取るべき実務的な含意は2つあります。

1つは、記録には期限があるということです。数年通院が途切れると、当時の診療簿が保存期間を過ぎている可能性があります。だから、検査結果や説明資料は自分の手元にも保管しておいたほうが確実です。血液検査の結果票、レントゲンやエコーの画像データ、処方内容のメモ。これらを1冊のファイルにまとめておくと、転院時にも夜間救急でも役に立ちます。

もう1つは、記録の作成義務は獣医師にあるということです。診療簿そのものは病院が備えるもので、飼い主に交付されるものではありません。転院やセカンドオピニオンで情報を引き継ぎたいときは、診療情報提供書(紹介状)の作成や検査データの写しの提供をお願いする、というのが現実的な流れになります。

注意

セカンドオピニオンは、かかりつけを否定する行為ではありません。ある動物病院の解説は、セカンドオピニオンは「かかりつけ医の診療を否定するものではなく、より良い治療を探すための前向きな手段」であるとし、血液検査や尿検査、レントゲン・超音波検査のデータ、現在の治療内容をまとめておくこと、紹介状の発行をお願いできる場合は遠慮せず相談することをすすめています。黙って別の病院に行くと、同じ検査を最初からやり直すことになり、猫の負担と費用が二重にかかります。

おおした動物病院の解説記事は、セカンドオピニオンについて「血液検査や尿検査、レントゲン・超音波検査のデータ、現在の治療内容などをまとめておくと」新しい獣医師が状況を把握しやすいとし、「かかりつけ医に紹介状の発行をお願いできる場合は、遠慮せず相談」すること、セカンドオピニオンは「かかりつけ医の診療を否定するものではなく、より良い治療を探すための前向きな手段」であることを説明しています。おおした動物病院より。

なお、転院そのものが必要な場面もあります。引っ越し、獣医師との相性、専門的な治療が必要になったときなど。相性が合わないと感じたときに我慢して通い続けるより、記録を持って別の病院に移るほうが、結果として猫のためになることは十分あります。

夜間・救急は「平時に決めておく」もの

かかりつけ選びと同じくらい重要なのが、かかりつけが閉まっている時間帯の備えです。

杉並区獣医師会の「救急の備え」は、小さい頃からかかっている病院ではペットの性格、ワクチンや予防接種の状況、これまでの病気の有無、使用中の薬などがよくわかっていると述べたうえで、夜間救急動物病院の電話番号と住所を事前に確認しておくことをすすめています。さらに、ペットの体重、予防歴、病気の治療歴、使用中の薬などを記録した手帳を作っておくと役に立つとしています。

杉並区獣医師会の「救急の備え〜いざという時に慌てないために〜」は、かかりつけ病院の利点として「小さい頃からかかっている病院では、ペットの性格、ワクチンや予防接種の状況、今までかかった病気の有無のことや、使用中の薬のことなど、よくわかっていますので」と述べています。また「かかりつけ動物病院が休診の日や夜間などに診察をしてもらえる病院を探しておきましょう。」「かかりつけ動物病院によっては時間外でも状況に応じて対応することができる場合や、診療内容を共有できるような提携病院がある場合もあるので、一度相談してみるとよいでしょう。」「事前に電話番号と住所を確認しておくと安心です」とし、「ペットの体重、予防歴、病気の治療歴、使用中の薬などを記録した手帳を作っておく」ことをすすめています。杉並区獣医師会より。

具体策としておすすめしたいのが、紙で貼っておくことです。スマートフォンのメモは、慌てているときほど見つかりません。

冷蔵庫やキャリーの内側に貼っておく情報

  • かかりつけ動物病院の名称・電話番号・住所・診療時間・休診日
  • かかりつけが休みのときの二番目の病院の連絡先
  • 夜間・救急対応の動物病院の連絡先と住所(受け入れに事前の電話連絡が必要かどうかも書いておく)
  • 猫の名前・生年月(または推定年齢)・性別・避妊去勢の有無・体重
  • ワクチンの接種時期、既往歴、現在の投薬内容(薬の名前と量)
  • マイクロチップの番号
  • 家族以外の人が猫を病院へ連れて行く可能性があるなら、その人にも場所を伝えておく

夜間救急に電話するときは、いつから、どんな症状が、どのくらいの頻度で起きているかを先に整理しておくと伝わりやすくなります。そして、夜間救急はあくまで応急の場です。翌日以降にかかりつけへ情報を引き継ぎ、必要な検査や治療につなげる流れになるため、夜間救急でもらった書類や説明のメモは必ず保管してください。

家を空けられない、猫を運べないといった事情があるときの選択肢については

で制度面から整理しています。

猫の状況によって、見るべき点は変わる

同じ「よい病院」でも、猫の状況によって重視すべき点は変わります。

猫の状況特に確認したいこと
子猫を迎えたばかりワクチンや駆虫のスケジュールを一緒に組み立ててくれるか。去勢・避妊の時期の考え方を説明してくれるか。初めての飼い主の質問に付き合ってくれるか
元気な成猫年1回の健康診断の内容と費用。平常時の数値を記録として残してくれるか。体重の推移をグラフなどで見せてくれるか
シニア猫半年ごとの診察に対応できる予約体制。腎臓・甲状腺・血圧・関節など、シニアで増える項目を診られるか。通院負担を減らす提案があるか
持病があり通院が続く検査の頻度と費用の見通しを事前に共有してくれるか。薬の変更時に説明があるか。急変時の連絡方法が決まっているか
多頭飼い複数頭を同時に診てもらえるか(同日予約の可否)。感染症が出たときの他の子への対応を相談できるか。個体ごとに記録が分かれているか
猫がとにかく病院を嫌がる待ち時間を短くする工夫(車で待機、時間指定など)があるか。必要に応じて事前の抗不安薬などを相談できるか

シニア猫については、先に触れたとおり国際的なガイドラインが少なくとも6か月ごとの診察を推奨しています。半年に1回のペースで通うのなら、予約の取りやすさと移動距離は、思っている以上に重要な選択基準になります。加齢に伴う健康管理の考え方は

にまとめています。

多頭飼いの家庭では、記録が個体ごとにきちんと分かれているかも確認しておきたいところです。同じ家の猫でも、体重も既往も薬の量も違います。受付で「〇〇さんちの猫」ではなく、猫の名前で呼ばれるかどうかは、ひとつの目安になります。

かかりつけは1軒に決めるべきですか。複数持つのはよくないですか。
1軒に絞る必要はありません。むしろ、かかりつけの休診日や夜間をカバーする2軒目を決めておくことは、杉並区獣医師会も事前の備えとしてすすめている内容です(同会は、かかりつけが休診の日や夜間などに診察をしてもらえる病院を探しておき、電話番号と住所を事前に確認しておくよう案内しています)。ただし、検査や投薬が並行して進むと情報が分断されるリスクがあるため、どちらか一方を主たるかかりつけと位置づけ、他院にかかったときは結果をかかりつけへ伝えて記録を一本化するのが現実的です。
キャットフレンドリー認定のある病院を選べば間違いないですか。
認定は、猫のための環境や手技、スタッフ教育について第三者の基準を満たしていることを示すもので、選ぶうえで有力な手がかりになります。iCatCareのCFCは基本(ブロンズ)・シルバー・ゴールドの3段階で、審査はiCatCare本部が行い、資格継続には3年ごとの更新が必要とされています。ただし認定は任意の取り組みであり、取得していない病院の診療水準が低いという意味ではありません。認定の有無に加えて、通いやすさ、説明の分かりやすさ、費用の透明さ、紹介体制といった要素を総合して判断してください。
診療費が高いと感じたとき、そういうものだと諦めるしかないですか。
料金の設定は病院ごとに異なりますが、内訳の説明を求めることはできます。日本獣医師会も、実際に支払う金額は診療項目の合算になるとしたうえで、具体的にどのような診療を受けたのか(受けるのか)を主治医に確認するよう案内しています。検査や処置の前に見通しを確認し、複数の選択肢がある場合はそれぞれの費用と目的を聞いてください。金額そのものより、何にいくらかかったのかが分からないまま進むことのほうが問題です。
セカンドオピニオンに行くと、かかりつけに悪く思われませんか。
セカンドオピニオンは、かかりつけの診療を否定するものではなく、より良い治療を探すための手段だと説明する動物病院は少なくありません。むしろ黙って別の病院に行くほうが、検査のやり直しで猫の負担と費用が二重になります。かかりつけに相談して紹介状(診療情報提供書)や検査データの写しを用意してもらえないか聞いてみてください。二次診療施設のなかにはセカンドオピニオン専用の診察枠を設けているところもあります。
以前の病院のカルテを、新しい病院に移してもらえますか。
診療簿は獣医師法第21条により獣医師が記載・保存するもので、飼い主に原本が交付されるものではありません。実務上は、転院先に必要な情報を伝えるため、前の病院に診療情報提供書(紹介状)の作成や検査データの写しの提供をお願いする形になります。なお犬猫の診療簿の保存期間は獣医師法施行規則で3年間とされているため、通院が長く途切れると当時の記録が残っていない可能性があります。検査結果は自分でも保管しておくと確実です。
病院のサイトに「専門医」と書いてあれば信頼していいですか。
獣医療法第17条は、獣医師や診療施設の技能・療法・経歴に関する広告を原則として制限しています。令和6年4月1日施行の改正により、農林水産大臣の指定する者が行う獣医師の専門性に関する認定を受けていることは広告できるようになりました。農林水産省が指定する者として公益社団法人日本獣医師会認定・専門獣医師協議会が挙げられています。どの団体のどのような認定を指しているのか分からない表記であれば、遠慮なく病院に尋ねて構いません。なお比較優良広告や誇大広告は引き続き認められていません。
引っ越しで病院を変えることになりました。何を持って行けばよいですか。
直近の血液検査・尿検査の結果票、レントゲンやエコーの画像データ(CD-RやUSBで渡してもらえることがあります)、現在の処方内容が分かるもの(薬の袋や説明書)、ワクチン接種証明、体重の推移のメモ。可能であれば前の病院に紹介状をお願いしてください。あわせて、いつごろ何の病気をしたか、どの薬が合わなかったかを箇条書きにしておくと、初診の説明がぐっと楽になります。

まとめ

かかりつけ選びは、猫の一生に関わる意思決定のなかでも、比較的コントロールしやすい部分です。フードや遊び方と違って、一度決めてしまえば毎日悩む必要がありません。そのかわり、決めるタイミングを間違えると取り返しがつきにくい。だから、元気なうちに動くことに意味があります。

判断材料は揃っています。iCatCareのキャット・フレンドリー・クリニック認定は、待合室の分離から診察時間の長さ、保定の方法、スタッフの継続教育まで、外からは見えにくい体制を第三者の基準で可視化してくれます。日本獣医師会と各地の獣医師会は地域の病院を探す入口を用意しています。診療費が病院ごとに違うのは制度上の必然で、だからこそ費用の説明を求めるのは正当な行為です。診療記録には保存期間があり、自分でも控えを持っておく実益があります。

そして、かかりつけを1軒決めたら、必ずもう1つ決めてください。かかりつけが閉まっているときにどこへ行くか。その連絡先を紙に書いて冷蔵庫に貼ること。それが、この記事のなかでいちばん短時間でできて、いちばん効く備えです。

猫は不調を隠します。隠しきれなくなってから現れる変化を、平常時を知っている誰かと一緒に見つけられる状態。それがかかりつけを持つということの、いちばんの中身だと思います。気になる様子があるときは、様子を見すぎず、まずはそのかかりつけに電話をしてみてください。

出典・参考

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