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猫の関節炎(変形性関節症)の見逃しやすい痛みのサインと新しい治療|シニア猫に多い隠れた痛み

対象の目安: シニア猫(7歳〜)

ミオ食事・健康担当
・ 約12分で読めます
猫の関節炎(変形性関節症)の見逃しやすい痛みのサインと新しい治療|シニア猫に多い隠れた痛み

年をとった猫が、以前は軽々と上っていたキャットタワーをためらうようになった。段差の前で一瞬立ち止まる。そんな小さな変化の裏に、関節の痛みが隠れていることがあります。猫の変形性関節症(関節炎)は決してめずらしい病気ではなく、シニア猫にとても多い一方で、猫は痛みを隠すのが得意なため見逃されがちです。ここでは、家庭で気づきたい痛みのサインと、環境調整から月1回の注射薬という新しい治療の選択肢までを、落ち着いて整理します。

猫の変形性関節症(関節炎)とは|シニア猫に多い隠れた病気

変形性関節症(OA)は、関節の軟骨がすり減ったり関節の構造が変化したりして、痛みや動きにくさが生じる病気です。加齢とともに進むことが多く、シニア猫では珍しいものではありません。「うちの子は年のわりに元気だから」と思っていても、実は関節に負担を抱えていることは少なくないのです。

ゾエティス・ジャパンは、変形性関節症が1歳以上の猫の約74%、12歳を超える猫の90%に認められる旨を示しています。加齢とともに有病率が高くなることがうかがえます。

数字だけを見ると驚くかもしれませんが、大切なのは「高齢の猫にはよくあること」として、痛みのサインに早く気づいてあげることです。関節の変化そのものを元に戻すのは難しくても、痛みを和らげ、暮らしやすくする手立てはあります。まずは、気づきにくさの理由を知っておきましょう。

なぜ見逃されやすいのか|猫は痛みを隠す

犬では、関節が痛むと足を引きずる(跛行)ことで飼い主が気づきやすいのに対し、猫はそうした分かりやすいサインが出にくいのが特徴です。猫はもともと痛みや不調を隠す習性が強く、関節炎でもじっと痛みに耐えてしまいがちです。そのため、はっきり足を引きずるころには、かなり進んでいることもあります。

岡部獣医科病院は、猫は痛みを隠すのが非常に上手で、犬のように足を引きずる跛行が出にくいため、関節炎が見逃されやすいと説明しています。

見逃されやすいのは、痛みのサインが「病気」ではなく「年のせい」「性格が変わった」と受け取られやすいからでもあります。活発さが減ったり、触られるのを嫌がったりする変化を、単なる加齢や気まぐれと片づけてしまうと、痛みのサインを見過ごしてしまいます。

家庭で気づきたい痛みのサイン

猫の関節炎は、日常のちょっとした行動の変化として表れます。以下は、家庭で気づきやすい代表的なサインです。当てはまるものが増えてきたら、関節の痛みを疑ってみる価値があります。

場面見逃しやすいサイン
遊び・活動以前ほど遊ばなくなった、寝ている時間が増えた
上り下りキャットタワーや家具など高い場所への上り下りをためらう
毛づくろい痛む関節の周辺を舐めなくなり、特定の部位の毛並みが乱れる
トイレ縁をまたぐのがつらく、排泄を失敗しやすくなる
接し方触られるのを嫌がる、怒りっぽく攻撃的になる

岡部獣医科病院は、見逃されやすいサインとして、以前ほど遊ばず寝る時間が増える、高い場所への上り下りをためらう、痛む関節の周辺を舐めなくなり特定の部位の毛並みが乱れる、トイレの縁をまたぐのがつらく排泄を失敗しやすくなる、触られるのを嫌がり怒りっぽく攻撃的になる、といった変化を挙げています。

こうしたサインは、認知機能の変化や他の病気と重なって見えることもあります。夜鳴きや徘徊など高齢猫特有の変化が気になるときは

もあわせて確認し、気になる点はまとめて動物病院で相談すると整理しやすくなります。

13歳になった愛猫が、大好きだった棚の上に上らなくなりました。年のせいかと思っていましたが、よく見ると腰のあたりの毛がぼさついていて。動物病院で相談したら関節の痛みを指摘され、はっとしました。

家庭でできる環境調整

関節に痛みを抱えた猫にとって、段差の上り下りやまたぐ動作は大きな負担です。治療と並行して、家の中を「がんばらなくても動ける」環境に整えてあげることが、暮らしやすさを大きく左右します。

  1. 1

    段差にステップやスロープを置く

    ソファやベッド、お気に入りの窓辺など、ジャンプが必要な場所には低いステップやスロープを設置し、少しずつ上り下りできるようにします。
  2. 2

    トイレを縁の低いものに変える

    縁が高いトイレはまたぐのがつらく、失敗の原因になります。入り口の低いタイプに替えると排泄の負担が減ります。
  3. 3

    床の滑りを抑える

    フローリングは踏ん張りがきかず関節に負担がかかります。カーペットやマットを敷いて滑りにくくします。
  4. 4

    温かく休める寝床を用意する

    冷えは体をこわばらせます。暖かく、出入りしやすい低めの寝床を、静かな場所に整えてあげましょう。

岡部獣医科病院は、環境調整として、ジャンプが必要な場所にステップやスロープを設置すること、トイレは縁の低いものに変えることを挙げています。

ステップやスロープは、猫の体格や高さに合ったものを選ぶことが大切です。選び方のポイントは

で具体的に紹介しています。あわせて、体重が増えると関節への負担も大きくなるため、日々の健康管理も見直しておきたいところです。シニア期の暮らし全般の整え方は

あわせて読みたい

シニア猫(7歳〜)の老化サインと健康管理、家庭でできる見守りと環境調整

も参考になります。

関節にやさしい住まいのチェックリスト

  • よく上る場所にステップやスロープを置いているか
  • トイレは縁が低く、またぎやすいものか
  • 床が滑らないようマットやカーペットを敷いているか
  • 寝床が暖かく、出入りしやすい高さになっているか
  • 水やごはん、トイレへの動線に無理な段差がないか
  • 体重が増えすぎていないか、健康管理を見直しているか

動物病院での診断と治療の選択肢

家庭のサインで「もしかして」と思ったら、動物病院で診てもらいましょう。診察では、歩き方や関節の状態の確認、必要に応じた画像検査などから総合的に判断されます。治療は、痛みを和らげて生活の質を保つことが中心になります。

痛みを抑える薬には、大きく分けて従来の消炎鎮痛薬(NSAIDs)と、近年登場した抗NGF(神経成長因子)抗体という選択肢があります。それぞれ特徴が異なります。

項目消炎鎮痛薬(NSAIDs)抗NGF抗体(ソレンシア)
仕組み炎症や痛みをおさえるNGFと結合し疼痛シグナルの伝達を妨げる
使い方内服など1ヵ月に1回の皮下投与
留意点長期使用で腎臓や消化器に負担がかかる懸念肝臓・腎臓・消化器への負担を抑えた設計

ゾエティス・ジャパンは、ソレンシアを2023年2月20日に販売開始した猫の変形性関節症治療薬とし、NGF(神経成長因子)に結合する抗NGFモノクローナル抗体製剤で、NGFが関与する疼痛シグナルの伝達を妨げて変形性関節症に伴う疼痛を緩和するとしています。投与は1ヵ月に1回の皮下投与で、肝臓・腎臓・消化器への負担を最小限に抑え、慢性腎臓病(CKD)の症例にも使いやすいとしています。

岡部獣医科病院は、ソレンシアは1回の皮下注射で約1ヶ月間効果が持続し、腎臓や肝臓への負担が少ないとする一方、NSAIDs(消炎鎮痛薬)は長期使用で腎臓や消化器に負担がかかる懸念があると説明しています。

腎臓が弱りやすいシニア猫にとって、臓器への負担を抑えつつ月1回の投与で続けられる選択肢が増えたことは、治療を続けやすくする助けになります。ただし、どの治療が向いているかは、猫の年齢や持病、痛みの程度によって変わります。使うかどうか、どの薬を選ぶかは、必ず動物病院で猫の状態を診てもらったうえで相談して決めてください。

メモ

関節炎の治療は「痛みをゼロにする」よりも、痛みを和らげて猫が快適に動ける状態を保つことが目標になります。家庭での環境調整と、動物病院での治療を組み合わせて支えていく視点が大切です。

自己判断で市販薬や人用の痛み止めを与えない

猫が痛そうにしていると、「手元の薬で少しでも楽にしてあげたい」と思うかもしれません。しかし、人用の解熱鎮痛薬や市販の痛み止めを自己判断で猫に与えるのは絶対に避けてください。猫は人や犬と体のつくりが異なり、人には安全な薬でも猫では重い中毒を起こすことがあります。

危険

人用の解熱鎮痛薬・消炎鎮痛薬を自己判断で猫に与えないでください。少量でも命にかかわる中毒を起こすことがあります。痛みを和らげたいときは、必ず動物病院で猫に使える薬を処方してもらってください。

同じ理由で、以前に処方された薬の残りや、他の猫用に出された薬を勝手に使うのも避けましょう。猫の関節炎の痛み止めは、体重や腎臓・肝臓の状態をふまえて選ばれるものです。気になるサインがあれば市販薬でしのごうとせず、動物病院につなぐことが、結果として猫を守ることになります。定期的な健康診断は、こうした変化を早めに拾ううえでも役立ちます。健診の考え方は

も参考にしてください。

うちの猫は足を引きずっていないので、関節炎ではないですよね?
足を引きずらないからといって関節炎がないとは言い切れません。猫は痛みを隠すのが上手で、犬のような跛行が出にくいのが特徴です。ジャンプをためらう、高い場所に上らなくなる、毛づくろいが減って毛並みが乱れる、トイレを失敗する、怒りっぽくなるといった変化も痛みのサインのことがあります。気になる変化があれば動物病院で相談してください。
関節炎は加齢によるものだから、様子を見るしかないのでしょうか?
様子を見るだけにする必要はありません。関節の変化そのものを元に戻すのは難しくても、痛みを和らげて動きやすくする手立てはあります。家庭では段差にステップやスロープを置く、縁の低いトイレにする、床を滑りにくくするなどの環境調整ができ、動物病院では痛みを抑える治療も相談できます。
月1回の注射薬(抗NGF抗体)はどんな猫にも使えますか?
抗NGF抗体(ソレンシア)は肝臓・腎臓・消化器への負担を抑えた設計で、慢性腎臓病の症例にも使いやすいとされていますが、どの猫に向くかは年齢や持病、痛みの程度によって変わります。使うかどうかは自己判断せず、動物病院で猫の状態を診てもらったうえで相談して決めてください。
痛そうなので、家にある人用の痛み止めを少しだけ飲ませてもよいですか?
絶対にやめてください。人用の解熱鎮痛薬や市販の痛み止めは、少量でも猫に重い中毒を起こすことがあります。痛みを和らげたいときは、必ず動物病院で猫に使える薬を処方してもらってください。

まとめ

猫の変形性関節症(関節炎)は加齢とともに増える身近な病気で、高齢の猫では多くに関節の変化が認められるとされます。それでも、猫は痛みを隠すのが上手で犬のような跛行が出にくいため、見逃されやすいのが難しいところです。ジャンプをためらう、毛づくろいの変化、トイレの失敗、怒りっぽくなるといった日常の小さな変化が、痛みのサインのことがあります。家庭では、段差にステップやスロープを置く、縁の低いトイレにする、床を滑りにくくする、温かい寝床を整えるといった環境調整で暮らしを支えられます。治療には従来の消炎鎮痛薬に加え、月1回皮下注射する抗NGF抗体という腎臓に配慮した選択肢もあります。人用の痛み止めを自己判断で与えるのは厳禁です。気になるサインに気づいたら、まずはかかりつけの動物病院に相談してください。

本記事は一般的な情報提供であり、診断や治療、薬の適否を判断するものではありません。関節炎が疑われる症状や治療の選択については、かかりつけの動物病院で猫の状態を診てもらったうえでご相談ください。

出典・参考

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