ニャレッジ
健康・病気・ケア

猫の「咳」「くしゃみ」「逆くしゃみ」「吐きそうな動作」の見分け方|姿勢・音・動画の撮り方と受診の目安

対象の目安: 全ライフステージ

ミオ食事・健康担当
・ 約58分で読めます
猫の「咳」「くしゃみ」「逆くしゃみ」「吐きそうな動作」の見分け方|姿勢・音・動画の撮り方と受診の目安

猫が「ケッ、ケッ」と体を低くして何かを吐こうとしている。数秒で終わって、何も出ない。飼い主としては「毛玉が詰まっているのかな」と思うところですが、動物病院でその様子を動画で見せると「これは咳ですね」と言われることがあります。実際、日本臨床獣医学フォーラム(JBVP)の解説にも、咳と吐く動作を間違えることはよくある、とはっきり書かれています。

咳、くしゃみ、逆くしゃみ、吐く前の動作。この4つは、猫の体の中で起きていることがまったく違うのに、飼い主から見た「絵面」がよく似ています。そして、どれだと思って伝えるかによって、動物病院での話の進み方が変わります。この記事では、この4つを姿勢・音・体の動く向き・そのあと何が出るか、という手がかりで切り分ける方法を整理します。あわせて、いちばん確実な伝え方である「動画を撮ってかかりつけに見せる」ためのコツ、緊急性が高くて様子を見てはいけないサイン、そして家庭でできる環境の見直しまでまとめました。

まず全体像:4つの動作を1枚の表にする

細かい話に入る前に、見分けの骨格をまとめます。あとで一つずつ掘り下げるので、まずは「何を見ればいいのか」の枠組みだけつかんでください。

くしゃみ逆くしゃみ吐く動作(嘔吐)
息の向き吐く(呼気)吐く(呼気)吸う(吸気)吐き出す(消化管)
開くことが多い開くことが多い閉じていることが多い大きく開く
姿勢体を低くし首を前に伸ばす顔を前に突き出す・下げる立ち止まって首を伸ばす前後に体を伸ばし、頭を下げる
動く場所胸・お腹(腹部を使う)鼻・顔まわり胸(吸い込む動き)お腹が波打つ
「カッカッ」「ケホケホ」「クシュン」「プシュッ」「ズーズー」「グーグー」「ゲェッ」「ウッ、ウッ」
出るものふつう何も出ない(最後に飲み込むことがある)鼻水・しぶき何も出ない毛玉・食べ物・液体
長さ数秒〜数十秒、繰り返す一瞬〜数回数秒〜2分以内で自然におさまる前兆から数十秒

この表の中でいちばん効くのが「息の向き」と「口」です。名古屋みなみ動物病院・どうぶつ呼吸器クリニックの解説では、逆くしゃみを他と見分けるポイントとして「吸気時である」「口を閉じている」の2点が挙げられ、これに対して咳やくしゃみは「息を吐く仕草であり、多くの場合、開口しています」と説明されています。呼吸器を専門にする臨床の現場でも、まずここで分けているわけです。

逆くしゃみが「突然『ズーズー』、『グーグー』という音を鳴らしながら行われる機械受容性の吸引反射」であること、通常は数十秒〜2分以内におさまりその後は何事もなかったようにすること、逆くしゃみを見分けるポイントが「吸気時である」「口を閉じている」ことであり、咳やくしゃみは息を吐く仕草で多くの場合開口していること、病的と考える目安として1日3回以上の頻度や中高齢になってから生じ始めることが挙げられていること、背景疾患として咽頭炎・異物・鼻炎・腫瘍・短頭種気道症候群などが挙げられていることについて。名古屋みなみ動物病院・どうぶつ呼吸器クリニックより。

ヒント

その場で全部を判断しようとしなくて大丈夫です。実務的には「動画に撮る」がいちばん強い手です。あとから何度でも見返せますし、獣医師に見てもらえば一発で分かります。撮り方はこの記事の後半にまとめました。

咳:体を低くして、首を前に伸ばす

見た目と音

猫の咳は、犬の咳とも人の咳ともかなり印象が違います。VCA Animal Hospitalsの解説では「猫は咳をするが、他の動物ほど頻繁ではない。しばしば『毛玉を吐いている』と誤解されるが、毛玉は出てこない」と書かれ、咳をするときの姿勢について「猫は体を低くかがめ、首を伸ばす」と説明されています。

同じ姿勢の描写は、コーネル大学猫健康センターの猫喘息の解説にも出てきます。発作の最中、多くの猫は体を地面に近づけるようにかがめ、首を前に伸ばす特徴的な姿勢をとる、とされています。名古屋みなみ動物病院の解説でも「咳時には姿勢を低くし、首を伸ばすようにします」と同じ形が挙げられ、さらに「発作性咳(何かに関連するわけではなく、突然のタイミングで咳を生じる)であることが多く」「症状は一見『咳』とは見えず、嘔吐だと認識されていることも多いように感じます」と述べられています。

猫も咳をするが他の動物ほど頻繁ではないこと、「毛玉を吐いている」と誤解されやすいが毛玉は出てこないこと、咳をするとき猫は体を低くかがめて首を伸ばすこと、激しい咳の発作は最後にえずき(retching)で終わり胆汁などの胃の内容物を出すことがあること、猫の咳はふつう下部気道に影響する炎症性の問題(とくに何らかの気管支炎)のサインであること、原因としてウイルス感染・細菌感染・寄生虫(とくにフィラリア)・アレルギー・気道内の異物・胸部の腫瘍が挙げられること、検査として胸部X線・血液検査・フィラリア検査・気道の培養・内視鏡・心臓超音波が行われうること、咳が数日以上続く・痰を伴う・繰り返す・呼吸困難を伴う・体重減少や具合の悪さを伴う場合は獣医師に連絡すべきことについて。VCA Animal Hospitalsより。

つまり、「吐きそうにしているのに何も出ない」と見えている動作のうち、かなりの割合が実は咳だということです。しかもややこしいことに、VCAは「激しい咳の発作は、最後にえずき(retching)で終わることがあり、猫は胆汁などの胃の内容物を出すことがある」とも書いています。咳のあとに実際に吐いてしまう猫もいるわけで、そうなると飼い主からは「吐いた」としか見えません。

メモ

見分けの決め手は「お腹の使い方と首の向き」です。咳では、体を低くしたまま、お腹を使って空気を押し出します。前肢を踏ん張り、首だけが前に伸びる形になります。一方の嘔吐では、体を前後に伸ばし、お腹が波打つように大きく動いてから、頭を下げて中身を出します。動画があれば、この差は思ったよりはっきり見えます。

咳の背景にあるもの

猫の咳が厄介なのは、原因の多くが「見えない場所」にあることです。VCAは「猫の咳はふつう、下部気道に影響する炎症性の問題、とくに何らかの気管支炎のサインである」としています。

日本では、一般社団法人犬・猫の呼吸器臨床研究会が、猫の気管支疾患(Feline Bronchial Disease: FBD)/猫喘息(Feline Asthma: FA)を「繰り返す発作性咳、喘鳴、呼吸困難などを呈する、猫の慢性末梢気道病変の総称」と定義しています。同会の解説では、これらの症状は気管支平滑筋の収縮による気道壁の肥厚、過度の分泌物、細胞浸潤などによって引き起こされるとされ、気道炎症には好酸球または好中球が関与するとしています。そのうえで、発作性咳を主徴とする好酸球性のものを猫喘息と定義し、好中球性のものは慢性咳または発作性喘鳴を主徴とする慢性気管支炎や閉塞性細気管支炎などが含まれると考えられるが、現段階では明確な病態は分かっていない、と書かれています。

猫の気管支疾患(Feline Bronchial Disease: FBD)/猫喘息(Feline Asthma: FA)が「繰り返す発作性咳、喘鳴、呼吸困難などを呈する、猫の慢性末梢気道病変の総称」と定義されていること、これらの症状が気管支平滑筋収縮による気道壁の肥厚・過度の分泌物・細胞浸潤などにより引き起こされること、FBDの気道炎症には好酸球または好中球が関与すること、発作性咳を主徴とする好酸球性のものをFAと定義すること、好中球性のものは慢性咳または発作性喘鳴を主徴とし慢性気管支炎や閉塞性細気管支炎などが含まれると考えられるが現段階では明確な病態は分かっていないことについて。一般社団法人犬・猫の呼吸器臨床研究会より。

どのくらいの猫に起きているのかは、資料によって示され方が違います。コーネル大学猫健康センターの「Feline Asthma: What You Need To Know」は「喘息は肺の下部気道の病気で、猫の1〜5%に影響する」とし、猫が喘息から真に「治る」ことはないと説明しています。一方、同センターの別の記事「Feline Asthma: A Risky Business for Many Cats」では、米国の家庭にいる約8000万頭の猫のうちおよそ1%、約80万頭が急性または慢性の喘息を抱えているとされ、この病気は「猫でもっとも多く診断される呼吸器疾患」だが治癒はしないと述べられています。数字に幅があるのは、対象集団や定義の取り方が違うためと考えられます。いずれにしても「めったにない病気ではない」ことは共通しています。

喘息が肺の下部気道の病気で猫の1〜5%に影響すること、猫が喘息から真に「治る」ことはないものの呼吸の努力を注意深く観察し必要なときに薬で介入することで何年も快適に暮らす手助けができること、多くの臨床家・研究者が猫喘息を吸入アレルゲンへのアレルギー反応によるものと考えていること、症状として呼吸困難・喘鳴・速い呼吸・咳やえずき・開口呼吸・嘔吐が現れうること、発作中に多くの猫が体を地面に近づけてかがめ首を前に伸ばす特徴的な姿勢をとること、診断の平均年齢が4〜5歳であること、単一の確定検査はなくX線・CT・気管支鏡などが用いられること、通常はコルチコステロイドが処方され気管支拡張薬が併用されることがあることについて。Cornell Feline Health Centerより。

米国の家庭にいる約8000万頭の猫のうちおよそ1%(約80万頭)が急性または慢性の喘息を抱えているとされること、この状態が「猫でもっとも多く診断される呼吸器疾患」であり治癒はしないとされていること、発作の典型として「猫は休んでいて何もしていないか、遊んでいて突然止まる。呼吸が速くなり、口を開けて空気を取り込もうとし始める」と描写されていること、重症度が軽度・中等度・重度・生命を脅かす段階に分けられ、最重症では気管支収縮により致死的な呼吸困難と酸素不足が生じ唇や鼻など通常はピンク色の組織が青くなること、初期の呼吸困難のサインを見逃すと急速に重症段階へ進行しうること、疑われるアレルゲンにタバコの煙・ほこりの多い猫砂・家庭用洗浄剤やエアゾールスプレーの蒸気・花粉・カビ・ダニ・暖炉やろうそくの煙が含まれること、診断が除外的に進められ聴診・血液検査(好酸球)・X線・糞便検査などが用いられることについて。Cornell Feline Health Centerより。

咳の原因は喘息や気管支炎だけではありません。VCAは、猫の咳の原因としてウイルス感染、細菌感染、寄生虫(とくにフィラリア)、アレルギー、気道内の異物、胸部の腫瘍を挙げています。名古屋みなみ動物病院の解説でも、猫喘息、慢性気管支炎、細気管支炎、猫のブロンコレア、猫の上部気道感染症、喉頭炎、気管支・肺の腫瘍、気管支拡張症、下気道感染症、気道異物などが列挙されています。

フィラリアは、屋内飼育でも意識しておきたい原因です。コーネル大学猫健康センターは、猫のフィラリア感染でもっとも多い臨床徴候として「断続的な嘔吐(食べ物だけでなく血を吐くこともある)、下痢、速く苦しい呼吸、咳やえずき」を挙げ、これらは猫喘息や他の気管支の病気と混同されうるとしています。また、名前に反して猫では主に肺が侵されることから、獣医学ではこの肺病変をHARD(heartworm associated respiratory disease、フィラリア関連呼吸器疾患)と呼ぶと説明されています。

猫のフィラリア感染でもっとも多い臨床徴候として断続的な嘔吐(食べ物のほか血を吐くこともある)、下痢、速く苦しい呼吸、咳やえずきが挙げられ、食欲低下・元気消失・体重減少も見られること、これらの呼吸器徴候が猫喘息や他の気管支疾患と混同されうること、猫では心臓だけでなく主に肺が侵されるため獣医学では「HARD(heartworm associated respiratory disease)」という用語が使われること、セラメクチン・ミルベマイシン・イベルメクチンなどの予防薬をすべての猫に投与することが推奨されていることについて。Cornell Feline Health Centerより。

フィラリア予防の考え方は

にまとめています。「うちは完全室内飼いだから」で切り捨てず、かかりつけと相談しておくテーマです。

うちの子は月に何度か「毛玉を出そうとしてるのに出ない」ことがあって、毛玉ケアのおやつを増やしていました。半年くらいそのままにしていて、健康診断のついでに動画を見せたら「これは咳です」と言われて、レントゲンを撮ることになりました。もっと早く見せればよかったです。

くしゃみ:鼻から外へ、勢いよく

見た目と音

くしゃみは、4つのなかではいちばん分かりやすい動作です。鼻から外へ、勢いよく息が出ます。顔を前に突き出す、または下げる姿勢になり、しぶきや鼻水が飛ぶこともあります。咳と違って体を低くかがめる必要がなく、動作も一瞬で終わります。

問題は「どれくらいで心配すべきか」のほうです。ほこりを吸った、匂いの強いものが近くにあった、といった一過性のくしゃみは珍しくありません。判断の材料になるのは、頻度(1日に何回か)、期間(何日続いているか)、そして鼻水の有無と性状です。

猫風邪(上部気道感染症)

もっとも多い背景は、いわゆる猫風邪です。International Cat Careは、猫の上部気道感染症(URI)の90%超が、猫ヘルペスウイルス(FHV、FHV-1)と猫カリシウイルス(FCV)のいずれか、または両方の感染によると考えられている、としています。典型的な症状はくしゃみ、鼻汁、目やに、目の充血とまばたきの増加、元気消失、食欲低下、発熱です。

同資料によると、FHV感染は比較的重くなりやすく、顕著な結膜炎や角膜の潰瘍を起こすことが多く、強い咽頭炎から食欲低下につながることや、気管の炎症と咳を引き起こすこともあるとされています。FCV感染は比較的軽いことが多い一方、舌(ときに口蓋や唇)の潰瘍や咽頭炎を起こすことが多く、子猫では一過性の関節炎(いわゆる跛行症候群)や、ごく幼い子猫では重いウイルス性肺炎の原因になりうるとされています。

猫の上部気道感染症(URI)の90%超が猫ヘルペスウイルス(FHVまたはFHV-1)と猫カリシウイルス(FCV)のいずれかまたは両方の感染によると考えられていること、一部にはボルデテラ・ブロンキセプチカやクラミジア・フェリスが関与する例があること、典型的な症状がくしゃみ・鼻汁・目やに・目の充血とまばたきの増加・元気消失・食欲低下・発熱であること、FHV感染はより重くなりやすく結膜炎や角膜潰瘍・強い咽頭炎・気管の炎症と咳を起こしうること、FCV感染は比較的軽いが舌の潰瘍や咽頭炎を起こしやすく子猫では一過性の関節炎や重いウイルス性肺炎の原因になりうること、リスクが高い猫として多頭・集団飼育の猫、未接種の猫、子猫、高齢や免疫抑制状態の猫、ストレス下の猫が挙げられること、ウイルスが衣類や食器などの物を介しても伝播し環境中でFHVは最大2日・FCVは最大10日生存しうること、回復後も多くが「キャリア」になること、一部の猫では鼻の中に永続的な損傷が残り慢性鼻炎になりうること、治療は快適さを保つことが中心で重症例には抗ウイルス薬が有用な場合があること、鼻づまりが強い場合に蒸気吸入やネブライザーが用いられること、嗅覚が落ちるため温めた香りの強い食べ物が有効なことについて。International Cat Careより。

猫風邪そのものの経過とケア、ワクチンとの関係は

で詳しく扱っています。ここでは「くしゃみの原因としてまず考えるもの」という位置づけにとどめます。

長引くくしゃみ・鼻水で考えられること

International Cat Careの「慢性上部気道疾患」の解説は、鼻や鼻咽頭に長期にわたって続く症状(慢性の鼻汁)について、原因を整理しています。代表的なものとして挙げられているのは次のとおりです。

  • ウイルス感染後(ポストウイルス)または特発性の鼻炎。FHVなどの感染で鼻の粘膜や鼻甲介の骨が傷つき、そこに二次的な細菌感染が繰り返し起きるもので、猫の慢性鼻炎のもっとも多い原因のひとつと考えられている
  • 真菌感染。猫でもっとも多い鼻の真菌感染はクリプトコッカス(Cryptococcus neoformans / Cryptococcus gattii)によるもので、環境中の菌を吸い込むことで感染する。アスペルギルスなどが原因になることもある
  • 炎症性ポリープ。中耳やエウスタキオ管から発生した大きなポリープが鼻咽頭内で成長し、呼吸を妨げることがある
  • 腫瘍。鼻腔に影響するもっとも多い2つはリンパ腫と腺癌
  • 異物。猫でもっとも多い鼻腔内異物は草の葉や種(ノギ)などの植物性のもので、吸い込むほか、それを食べた猫が吐いたときに鼻に入り込むこともある
  • アレルギー性鼻炎(まれ)、歯の病気(重度の歯周病が歯根に及んで膿瘍を作り鼻腔に影響することがある)、顔の骨格による問題(極端な短頭のペルシャなど)、鼻咽頭狭窄、外傷

主な症状として、鼻汁(透明な液体、濃い粘液、ときに血が混じる)、くしゃみ、呼吸困難、鼻や鼻咽頭の通りが悪くなることによる「いびきのような雑音のある呼吸」、とくに食事のときのえずきやのどを詰まらせるような音、顔の形の変化(鼻の腫れなど)、元気や食欲の低下、目や耳からの分泌物が挙げられています。

慢性上部気道疾患(慢性鼻汁)が猫では比較的よくある問題であり多くの原因がありうること、もっとも多い形のひとつが慢性鼻炎で、FHVなどの先行するウイルス感染が鼻の粘膜や鼻甲介の骨を傷つけ二次的な細菌感染につながると考えられていること、主な症状として鼻汁(透明・濃い粘液・ときに血が混じる)、くしゃみ、呼吸困難、鼻や鼻咽頭の閉塞による雑音のある呼吸(stertorous breathing)、とくに食事時のえずきやのどを詰まらせる音、顔の形の変化、元気や食欲の低下、目や耳からの分泌物が挙げられていること、原因としてポストウイルス性・特発性鼻炎、真菌感染(クリプトコッカス、アスペルギルス等)、炎症性ポリープ、腫瘍(リンパ腫・腺癌)、異物(草の葉や種などの植物性のものが最多で、食べた猫が吐いたときに鼻に入り込むこともある)、アレルギー性鼻炎、歯の病気、顔の骨格、鼻咽頭狭窄、外傷が挙げられていること、検査として血液・尿検査、X線、CT、鼻鏡検査、生検が行われうること、慢性鼻炎は治癒ではなくコントロールが目標になること、ネブライザーによる加湿が有効なこと、人間用の点鼻薬(鼻づまり薬)は猫に毒性がありうるため避けるべきことについて。International Cat Careより。

歯の問題がくしゃみにつながるという話は、飼い主にとって意外に感じるところだと思います。上顎の奥歯の根は鼻腔と近い位置にあるため、重い歯周病が鼻の症状として表面化することがあります。口の中のケアについては

もあわせてご覧ください。

注意

鼻汁が片側だけから出ている、血が混じる、顔の形が変わってきた、片側の鼻の通りだけが悪い。こうした「左右差のある」変化は、異物や腫瘤性の病変を考える手がかりになることがあります。自己判断で様子を見ず、動物病院で相談してください。

逆くしゃみ:鼻から強く吸い込む発作

どんな動作か

逆くしゃみは、名前のとおり「くしゃみの逆」です。息を吐くのではなく、勢いよく吸い込みます。獣医学的にはinspiratory paroxysmal respiration(吸気性発作性呼吸)と呼ばれます。Zoetis Petcareの解説では、発作中の動物は「ふつう立ち止まって頭と首を伸ばし、吸い込みながら大きな鼻息のような音を立てる」とされ、発作は「数秒から1分ほど」続くと説明されています。

名古屋みなみ動物病院の解説では、逆くしゃみを「突然『ズーズー』、『グーグー』という音を鳴らしながら行われる機械受容性の吸引反射」と表現し、通常は数十秒から2分以内におさまり、その後はけろっとして何事もなかったようにする、としています。茶屋ヶ坂動物病院の解説でも、「空気を勢いよく吸い込む発作的な呼吸のことで、鼻や喉から『フガフガ』『ズーズー』といった音が出るのが特徴」「通常のくしゃみが空気を外へ勢いよく出す動作であるのに対し、逆くしゃみは鼻から空気を連続して吸い込むような呼吸になる」と説明されています。

逆くしゃみがinspiratory paroxysmal respiration(吸気性発作性呼吸)として知られる状態の一般的な呼び名であること、通常のくしゃみが外へ息を出すのに対し逆くしゃみでは空気が鼻へ急速に吸い込まれること、発作中の動物はふつう立ち止まって頭と首を伸ばし吸い込みながら大きな鼻息のような音を立てること、発作が数秒から1分ほど続くこと、犬では非常によく見られ猫にも起こりうること、呼吸が速い・咳(とくに湿った音のもの)・歯ぐきが青みがかる・脱力・虚脱がある場合は獣医師に連絡すべきこと、長引く場合や頻繁な場合は受診が必要であること、発作の様子を撮った動画を獣医師に提供することが非常に有用であり、どこで起きたか・直前に何があったかの情報もあわせて伝えるとよいことについて。Zoetis Petcareより。

猫ではどのくらい起きるか

Zoetis Petcareは、逆くしゃみを「犬では非常によく見られるが、猫にも起こりうる」と位置づけています。小型犬やテリア、短頭種でとくに多いとされ、猫での話題として語られる機会が少ないのはこのためです。「うちの猫が変な呼吸をしている」と調べると犬の情報ばかり出てくる、という状況が起きやすいのは、そもそもの頻度の差が背景にあります。

だからこそ、猫で繰り返すときは一度きちんと見てもらう価値があります。名古屋みなみ動物病院の解説では、病的な逆くしゃみを考える目安として「1日3回以上の頻度」「中高齢になってから生じ始める」の2点が挙げられています。若いころから月に数回、数十秒で終わる程度なのか、最近になって毎日のように起きているのかで、意味合いは変わります。

背景にありうるもの

同解説では、逆くしゃみを生じうる疾患として咽頭炎、異物、鼻炎、腫瘍、短頭種気道症候群などが挙げられています。茶屋ヶ坂動物病院の解説では、原因として鼻や喉への刺激(ほこり、花粉、タバコの煙、芳香剤の強い香りなどが気道に入り、体が異物を排除しようとして反射的な呼吸が起こる)、アレルギー、猫風邪、異物の混入が挙げられ、空気の乾燥や急激な温度変化が刺激になることもあるとされています。

猫の逆くしゃみが「空気を勢いよく吸い込む発作的な呼吸」で鼻や喉から「フガフガ」「ズーズー」といった音が出ること、通常のくしゃみが空気を外へ出す動作であるのに対し逆くしゃみは鼻から連続して吸い込む呼吸になること、発作は数秒から数十秒ほどでおさまることが多いこと、原因として鼻や喉への刺激(ほこり・花粉・タバコの煙・芳香剤の強い香り)、アレルギー、猫風邪、異物の混入が挙げられ、空気の乾燥や急激な温度変化が刺激になることもあること、注意すべき症状として逆くしゃみが頻繁に起こる場合・呼吸が苦しそうな場合・鼻水や咳が続く場合が挙げられていること、逆くしゃみと同時に呼吸が速い・胸やお腹が大きく上下する・口を開けて呼吸しているといった状態が見られたら気道や肺のトラブルのおそれがあること、猫は本来鼻呼吸が基本で口を開けて呼吸することは少ないことについて。茶屋ヶ坂動物病院より。

構造的な原因として名前が挙がるのが、鼻咽頭ポリープです。VCA Animal Hospitalsの解説によると、これは中耳にできる良性の腫瘤で、エウスタキオ管を通って伸びたり、鼓膜を破って外耳道側へ広がったりします。若い猫に多く、1歳未満での発症例が多いとされます。症状としては、呼吸のときに出る特徴的な鼻を鳴らすような音、二次感染による鼻汁(透明または血が混じる)とくしゃみ、耳を気にする・頭を振る・頭が傾く、耳からの分泌物などが挙げられ、まれにバランスを崩したり左右の瞳孔の大きさが違ったりすることがあるとされています。治療は外科的な切除が中心ですが、「多くの場合、ポリープ全体を解剖学的に取りきることは不可能で、再発はよくある」とも書かれています。Merck Veterinary Manualの飼い主向け版でも、鼻咽頭ポリープは典型的には中耳から発生してエウスタキオ管を通って鼻咽頭に伸び、呼吸に伴う音の増加・くしゃみ・鼻汁を起こしうるとされ、ポリープと茎を完全に取り除けないと再増殖がよく起きる、と説明されています。

鼻咽頭ポリープが中耳にできる良性の腫瘤で、エウスタキオ管を通って伸びたり鼓膜を破って外耳道側へ広がったりすること、若い猫に多く1歳未満での発症例が多いこと、症状として呼吸時の特徴的な鼻を鳴らすような音、二次感染による鼻汁(透明または血が混じる)とくしゃみ、耳を気にする・頭を振る・頭が傾く、耳からの分泌物が挙げられ、まれにバランスを崩したり左右の瞳孔の大きさが異なったりすること、診断に口腔内の観察・耳の深部の観察・X線・ビデオ内視鏡・CT/MRI・生検が用いられること、治療はできるだけポリープを取り除く手術が一般的で、より広範なブラ骨切り術は再発予防に優れるが手術リスクは大きいこと、多くの場合ポリープ全体を解剖学的に取りきることは不可能で再発はよくあることについて。VCA Animal Hospitalsより。

鼻咽頭ポリープが上部気道疾患の徴候を起こしうること、典型的には中耳から発生してエウスタキオ管を通り鼻咽頭に伸びること、呼吸に伴う音の増加・くしゃみ・鼻汁を起こしうること、鼻咽頭を閉塞する大きさになった場合は外科的な摘出が推奨されること、ポリープと茎を完全に取り除けないと再増殖がよく起きることについて。Merck Veterinary Manual(飼い主向け版)より。

なお、日本の犬・猫の呼吸器臨床研究会は、鼻腔内から発生する「炎症性鼻甲介ポリープ」を鼻咽頭ポリープとは別のものとして整理しています。同会の解説では、鼻咽頭ポリープがエウスタキオ管から発生して後鼻孔・中耳を占拠するのに対し、炎症性鼻甲介ポリープは鼻腔内から発生するとされ、その発生は非常に稀であること、病理組織学的特徴や臨床徴候がヒト乳幼児の鼻腔過誤腫に類似することから鼻甲介軟骨から発生する間葉系過誤腫と考えられ、近年は「ネコ間葉系鼻腔過誤腫」と呼称すべきと提唱されていることが説明されています。名前の似た病変でも由来が違うということで、飼い主が細部まで覚える必要はありませんが、「同じように見える音でも、原因はいくつもある」という感覚を持っておくと、検査の必要性が納得しやすくなります。

猫の炎症性鼻甲介ポリープが鼻腔内から発生する良性腫瘤状病変で、鼻咽頭・後鼻孔を占拠することで上気道閉塞性疾患を引き起こすこと、その発生は非常に稀であること、鼻咽頭ポリープがエウスタキオ管から発生して後鼻孔・中耳を占拠するのに対し炎症性鼻甲介ポリープは鼻腔内から発生すること、病理組織学的特徴や臨床徴候がヒト乳幼児の鼻腔過誤腫に類似し鼻甲介軟骨から発生する間葉系過誤腫と考えられ、近年「ネコ間葉系鼻腔過誤腫」と呼称すべきと提唱されていることについて。一般社団法人犬・猫の呼吸器臨床研究会より。

注意

逆くしゃみと同時に、呼吸が速い、胸やお腹が大きく上下する、口を開けて呼吸している、といった状態が見られる場合は、気道や肺に何らかのトラブルが生じているおそれがあると茶屋ヶ坂動物病院の解説では説明されています。逆くしゃみは基本的に一過性ですが、これらを伴うときは「一過性のものだろう」と考えず、動物病院へ連絡してください。

吐く前の動作:お腹が波打ち、そのあと何かが出る

嘔吐と吐出は別のもの

ここは、日本臨床獣医学フォーラム(JBVP)の飼い主向け解説がとても明快なので、その整理に沿って見ていきます。

同解説はまず、「猫が吐いている場合、あるいは吐こうとする動作をしているようにみえる場合、それをよく観察してください」と促します。そのうえで、実際に口から何かが出た場合でも、本当の「嘔吐」である場合と「吐出」の場合があるとしています。

嘔吐では、実際に吐き出す前におなかの筋肉や横隔膜が収縮し、強力な力で胃の内容が吐き出されます。そしてゲーゲーする状態や、よだれを伴います。これに対して吐出は、何の力もなく、すっと食べたばかりのものが戻されます。猫はけろっとしていることが多く、全身的に病気に見えたり脱水が起こったりすることはまずありません。吐出は実際には胃の中まで食事が達しておらず、食道から戻ってくるものだと説明されています。ただし食道の中にしばらくとどまってから吐くこともあるため、必ずしも食後すぐとは限らないとも書かれています。

「吐きそうな動作はするが吐かない」「食べたものをすぐに吐く」「食べた後にゲーゲー吐く」が違う症状であり獣医師が正しく診断するには正しい情報を伝える必要があること、嘔吐では吐き出す前におなかの筋肉や横隔膜が収縮して強力な力で胃の内容が吐き出されゲーゲーする状態やよだれを伴うこと、吐出では何の力もなくすっと食べたばかりのものが戻され猫はけろっとしていることが多いこと、吐出は胃まで達しておらず食道から戻ってくるものだが食道内にとどまってから吐くこともあるため必ずしも食後直ちにとは限らないこと、嚥下困難では食べたものがすんなり戻され後によだれが見られることもあること、「その他咳と吐く動作をまちがえることもよくあります」「またせき込んだ後に気持ちが悪くなって本当に嘔吐がみられる場合もあるので、咳のあるなしを獣医師に伝えることも重要です」と述べられていること、毛玉を頻繁に吐くこと自体が異常でありその場合は診察を受けた方がよいこと、食べた後によく吐く・とくに毎日吐く場合も診察が必要であること、受診の目安として急で激しい嘔吐かどうか(1日に何回も嘔吐していれば水分も失われるため受診が必要)、元気と食欲がなくぐったりした様子で吐いているかという全身症状の有無、吐いたものに多くの血が混じっている場合はすぐ受診が必要であること、それまで元気で急に吐き出した場合は異物や中毒も考える必要があること、とくに紐を飲み込んだ場合は腸が引っ張られて危険な状態になりうることについて。日本臨床獣医学フォーラム(JBVP)より。

JBVPが明言している「咳との取り違え」

そしてこの解説には、この記事の主題そのものにあたる一文があります。

その他咳と吐く動作をまちがえることもよくあります。またせき込んだ後に気持ちが悪くなって本当に嘔吐がみられる場合もあるので、咳のあるなしを獣医師に伝えることも重要です。

つまり、「吐いた」という情報だけを伝えると、獣医師は消化器の方向から考え始めることになります。実は咳だった、あるいは咳のあとに吐いたのだとしたら、必要な検査はまったく変わります。飼い主が伝えるべきなのは「吐きました」ではなく、「こういう動作をしていて、そのあとこれが出ました(または何も出ませんでした)」という観察です。

毛玉を頻繁に吐くのは「ふつう」ではない

同じ解説には、もうひとつ押さえておきたい指摘があります。急いで食べて吐出や嘔吐をしたり、毛玉を吐いたりする猫があるため、猫が吐くのを見ること自体は比較的多く、飼い主も「また吐いてる」程度にしか思わないことがよくある。しかしながら、毛玉を頻繁に吐くこと自体が異常なことなので、そのような場合はぜひとも診察を受けた方がよい、というものです。食べた後によく吐く、とくに毎日吐くという場合も診察が必要とされています。

毛玉・吐き戻しそのものの整理は

にまとめています。この記事では「その動作は本当に毛玉なのか」という一歩手前の切り分けに集中します。

注意

JBVPの解説では、受診の目安として、1)急で激しい嘔吐かどうか(1日に何回も嘔吐していれば水分が失われるためそれだけで受診が必要)、2)元気と食欲がなくぐったりした様子で吐いているかという全身症状の有無、3)吐いたものに多くの血が混じっている場合はすぐに受診、が挙げられています。また、それまで元気だった猫が急に吐き出した場合は異物や中毒も考える必要があり、とくに紐を飲み込んだ場合は腸が引っ張られて危険な状態になりうると注意されています。誤飲の予防は

あわせて読みたい

猫の誤飲・誤食・中毒を防ぐ|ユリや人の食べ物・ひも状異物の危険と対応

もあわせてご覧ください。

迷ったときの3つの問い

現場で使いやすい形にまとめると、次の3つを順番に見るだけでかなり絞れます。

  1. 1

    息は出ている? 入っている?

    顔のあたりに手をかざす必要はありません。動画をスロー再生すると分かります。胸がしぼむタイミングで音が出ていれば呼気(咳・くしゃみ)、胸がふくらむタイミングで音が出ていれば吸気(逆くしゃみ)です。名古屋みなみ動物病院の解説でも、この「吸気か呼気か」が逆くしゃみを見分ける第一のポイントとされています。
  2. 2

    口は開いている? 閉じている?

    同解説では、逆くしゃみでは口を閉じているのに対し、咳やくしゃみは多くの場合開口している、とされています。動画で顔が映っていれば、ここは一目で分かります。
  3. 3

    体のどこが動いた? そのあと何が出た?

    咳は体を低くして首を前に伸ばし、お腹を使って空気を押し出しますが、ふつう何も出ません。くしゃみは鼻から外へ、しぶきや鼻水が出ます。嘔吐はお腹が波打ってから、毛玉・食べ物・液体が出ます。吐出は力まずに、すっと未消化のものが出ます。

メモ

4つがきれいに分かれないこともあります。VCAが書いているように、激しい咳の発作がえずきで終わって胃の内容が出ることもありますし、猫風邪では鼻汁が喉に落ちて咳につながることもあります。「どれかひとつに決めなければ」と思う必要はありません。見たままを記録して持っていくのがいちばん確実です。

動画の撮り方:これがいちばん強い伝え方

名古屋みなみ動物病院の解説は、猫の咳について「気になる症状があれば、その症状を動画で撮影してご相談ください」と明記しています。Zoetis Petcareも、逆くしゃみについて「発作の様子を撮った動画を獣医師に提供することは非常に有用」だとし、どこで起きたか、直前に何があったかの情報もあわせて伝えるとよいとしています。

診察室では、猫はまず症状を出してくれません。緊張して固まってしまうか、逆に興奮して呼吸が変わってしまうかのどちらかです。家で撮った20秒の動画が、その日の診察のすべてを決めることがあります。

  1. 1

    全身が入る距離で撮る

    1.5〜2メートルほど離れ、顔から尻尾までが画面に入る位置から撮ります。顔だけをアップで撮ると、いちばん大事な「体をどう使っているか」が映りません。姿勢を低くしているのか、お腹が波打っているのかは、全身が入っていないと判断できません。
  2. 2

    音を必ず入れる

    ミュートにしない、マイクを手でふさがない。これだけで情報量が変わります。乾いた「カッカッ」なのか、湿った音なのか、「ズーズー」という吸い込む音なのか。音は診断の重要な手がかりです。テレビや掃除機など、大きな生活音は止められるなら止めてください。
  3. 3

    発作の前後10秒も残す

    症状が始まってから慌ててカメラを構えると、いちばん見たい立ち上がりが撮れません。「あ、始まりそう」と思ったら回し始め、おさまってからも10秒ほど回し続けます。発作の直前に何をしていたか(寝起き、食後、遊んだあと、水を飲んだあと)、おさまったあとどうなったか(けろっとしている、ぐったりしている)が映っていると、そこも判断材料になります。
  4. 4

    横からのアングルを1本入れる

    正面からだと胸やお腹の動きが分かりにくいことがあります。可能なら横向きのアングルも撮っておくと、呼吸のときの胸郭とお腹の動き、首の伸ばし方がよく見えます。無理に猫を動かさず、飼い主のほうが移動してください。
  5. 5

    明るいところで、手ブレを抑える

    暗いとスマホのノイズ処理で細かい動きがつぶれます。カーテンを開ける、部屋の照明をつけるだけで十分です。ズームは使わず、近づける範囲で近づいて撮るほうがきれいに残ります。
  6. 6

    撮ったらすぐメモを残す

    動画のファイル名は日付しか教えてくれません。撮ったあとに、時刻・何回目か・直前の状況をメモアプリに残しておきます。次の項目のテンプレートを使うと楽です。

受診前にそろえておくと診察がスムーズになるもの

  • 症状の動画(できれば2〜3本。異なる日・異なる時間帯のもの)
  • いつから始まったか(だいたいの日付でよい)
  • 1日に何回、どんな時間帯に多いか
  • 1回の長さ(数秒か、数十秒か)
  • 直前の状況(寝起き・食後・遊んだあと・掃除のあと など)
  • 出たものの有無と内容(毛玉、食べ物、液体、泡、血が混じっていないか)
  • 鼻水・目やに・くしゃみ・いびきのような呼吸音の有無
  • 食欲・体重・元気の変化
  • 安静時の呼吸数の記録があればその値
  • 同居猫の有無と、同じ症状が出ていないか
  • 使っている猫砂・洗剤・芳香剤・アロマ・喫煙の有無など環境の情報
  • 飲んでいる薬・サプリメント・療法食があればその名称

安静時呼吸数の測り方は

にまとめています。呼吸のトラブルを疑うとき、「うちの子はふだん寝ているとき何回か」を言えるかどうかで、獣医師の受け取り方が変わります。動画とセットで持っていける、いちばん強い情報のひとつです。

ヒント

かかりつけがオンラインでの相談や動画の事前送付に対応している場合は、来院前に見てもらえることがあります。オンライン診療の位置づけと限界については

あわせて読みたい

猫のオンライン診療と往診の使いどころ|国の指針から読む「画面越しで済むこと・病院でないとできないこと」

にまとめました。制度上できることとできないことがあるので、まずはかかりつけに確認してみてください。

緊急性が高いサイン:見分けを考えている場合ではないとき

ここまでは「落ち着いて観察する」話でした。ただし、次のような状態は、原因の切り分けより先に動くべきものです。

危険

1)遊んだ直後でもないのに口を開けて呼吸している(開口呼吸・パンティング)、2)呼吸に明らかな努力が要っている(お腹を大きく使う、首を伸ばして肘を張る、うずくまって頭を下げる)、3)舌や歯ぐきが青紫色になっている(チアノーゼ)、または白っぽい、4)呼吸が明らかに速く、横になって休めない・座り込んだまま動かない、5)咳や発作が止まらない、6)ぐったりして反応が鈍い。これらが見られるときは、様子を見ずにすぐ動物病院へ連絡してください。移動は無理に抱きしめず、キャリーに入れて静かに運びます。夜間・休日にあたる可能性もあるので、通えるエリアの救急動物病院の連絡先は平時のうちに調べておくと安心です。

コーネル大学猫健康センターの呼吸困難(dyspnea)の解説は、呼吸困難は病気そのものではなく、多くの猫の健康障害に伴う重要な臨床徴候だとしたうえで、呼吸困難のある猫は呼吸が速くなり、口を開けて音を立てて荒い呼吸をすることがあり、頭を下げて体を前に伸ばす姿勢をとることがあると説明しています。そして、呼吸のトラブルが速やかに治療されなければ死亡するリスクが高いとし、動物が楽に呼吸できているかどうかに疑問があるときは、いつでもすぐに獣医師のところへ連れて行くよう促しています。

呼吸困難(dyspnea)が病気そのものではなく多くの猫の健康障害に伴う重要な臨床徴候であること、呼吸困難のある猫では呼吸が速くなり口を開けて音を立てて呼吸することがあり頭を下げて体を前方に伸ばす姿勢をとること、呼吸窮迫のもっとも多い3つの原因として喘息・心不全による肺の水分貯留・胸水が挙げられていること、呼吸のトラブルが速やかに治療されなければ死亡リスクが高いこと、呼吸が楽にできているか疑わしいときはすぐに獣医師に診せるべきであることについて。Cornell Feline Health Centerより。

猫の開口呼吸を犬と同じに扱えないことは、日本の動物病院の解説でも強調されています。光が丘動物病院グループの解説では、猫は通常、口を開けて呼吸する動物ではなく、猫の口呼吸は基本的に異常なサインと考えるとされています。安静にしていても口呼吸が続く、呼吸が速く浅い、胸やお腹を大きく動かして呼吸している、舌や歯ぐきが青紫色になっている、ぐったりしている、といった状態は緊急性が高いとされ、激しい運動や強い緊張による一時的な口呼吸であっても、繰り返す・安静にしても治まらない場合は受診が必要だと説明されています。

猫は通常口を開けて呼吸する動物ではなく猫の口呼吸は基本的に異常なサインと考えること、安静時にも口呼吸が続く・呼吸が速く浅い・胸やお腹を大きく動かして呼吸する・舌や歯ぐきが青紫色になる(チアノーゼ)・ぐったりしているといった状態は緊急性が高いこと、原因として猫風邪や鼻炎などの上気道の問題、気管支炎・猫喘息・肺炎・肺水腫などの下気道の問題、肥大型心筋症などの心臓病、熱中症や胸水が挙げられること、口呼吸を繰り返す・安静にしても治まらない場合は受診が必要であることについて。光が丘動物病院グループより。

猫喘息については、コーネル大学猫健康センターが重症度を軽度・中等度・重度・生命を脅かす段階に分けて説明しており、最重症では気管支の収縮によって致死的な呼吸困難と酸素不足が生じ、通常はピンク色の唇や鼻の組織が青くなるとしています。そして、初期の呼吸困難のサインを見逃すと、状態は急速に重症段階へ進行しうると警告しています。また、同センターの別の記事では、猫が呼吸窮迫の徴候を隠すのが非常にうまくなっていることに触れ、「少し呼吸が速い」「少し努力して呼吸している」といった微妙な変化に飼い主が気づけることの意味が語られています。

閉塞性の気道の状態(喘息・気管支炎)で気道内の筋肉のけいれん、粘液、剥離した細胞成分により肺への空気の流れが妨げられること、その引き金として細菌やウイルス、寄生虫、吸い込んだほこり・煙・カビ・花粉が挙げられること、急性の徴候として努力性呼吸、周期的な失神、唇・歯ぐき・鼻の組織が蒼白または青みがかること、不整脈、消化器症状が挙げられること、慢性の経過では繰り返す発作、進行性の食欲低下、元気消失、体重減少が見られること、猫は呼吸窮迫の徴候を隠すのが非常にうまくなっていること、飼い主は「少し呼吸が速い」「少し努力して呼吸している」といった変化に注意すべきであること、すべての猫の飼い主が呼吸窮迫の徴候を知っておくべきであることについて。Cornell Feline Health Centerより。

日本のみんなのどうぶつ病気大百科(アニコム損害保険)の解説でも、正常な猫の呼吸は1分間に20〜40回ほどで鼻呼吸が標準だとされ、口を開けて呼吸している、咳やくしゃみを繰り返す、同じ姿勢を変えない、舌の色が紫色に変色している、といった状態が異常な呼吸のサインとして挙げられています。考えられる病気として肺炎、気管支炎、喘息、腫瘍、猫伝染性腹膜炎(FIP)、クラミジア症のほか、心疾患や肺炎などの重篤な病気が潜んでいる可能性があるとされ、元気や食欲がない・普段と様子が異なる場合はすぐに動物病院を受診するよう勧められています。

正常な猫の呼吸が1分間に20〜40回ほどで鼻呼吸が標準であること、異常な呼吸のサインとして開口呼吸、咳やくしゃみの繰り返し、同じ姿勢を変えないこと、舌の色が紫色に変色することが挙げられていること、考えられる病気として肺炎・気管支炎・喘息・腫瘍・猫伝染性腹膜炎(FIP)・クラミジア症のほか心疾患などの重篤な病気が潜んでいる可能性があること、予防として呼吸数を定期的にチェックすること、粘膜の色(健康時はピンク色)を確認すること、冷たい空気や乾燥した空気が呼吸器を刺激するため温度・湿度管理が大切なこと、適切な体重管理と運動が挙げられていること、元気や食欲がなかったり普段と様子が異なる場合はすぐに動物病院を受診すべきことについて。みんなのどうぶつ病気大百科(アニコム損害保険)より。

人間の薬を自己判断で与えない

これは強調しておきたい点です。咳やくしゃみが続くと、「人の風邪薬を少しだけ」と考えたくなる場面があるかもしれません。猫では、これは非常に危険です。

International Cat Careは、慢性上部気道疾患の管理について述べたなかで、「人間用の点鼻薬(鼻づまり薬)は避けるべきである。これらは猫に毒性がありうるほか、より重い病態を招くことがある」と明記しています。市販の点鼻薬は、飼い主から見ると「猫の鼻づまりにも効きそう」に見える代表格です。ここははっきり否定されています。

解熱鎮痛薬も同様です。Pet Poison Helplineは、アセトアミノフェンについて「犬では安全域が狭く、猫ではとくに危険」だとし、消化管障害、血液の異常、肝不全といった重い結果につながりうると説明しています。あわせて、この成分が風邪薬・アレルギー薬・解熱薬など多くの市販薬に含まれているため、人間には安全な薬でも製品ラベルをよく確認するよう注意を促しています。

アセトアミノフェンが犬では安全域が狭く猫ではとくに危険であること、中毒によって消化管障害・血液の異常・肝不全が起こりうること、人間には安全な薬であっても風邪やインフルエンザの症状用、アレルギー用、解熱用など多くの市販薬にこの成分が含まれているため製品ラベルをよく確認する必要があることについて。Pet Poison Helplineより。

危険

人間用の風邪薬・解熱鎮痛薬・点鼻薬・咳止め・アレルギー薬を、獣医師の指示なく猫に与えないでください。とくにアセトアミノフェンを含む製品は猫にとって危険性が高いとされています。すでに与えてしまった、あるいは猫が誤って口にした可能性がある場合は、製品のパッケージを手元に用意したうえで、すぐに動物病院に連絡してください。夜間であっても待たないほうが安全です。

犬用に処方された薬を猫に流用することも避けてください。同じ症状に見えても、種によって代謝の仕組みが違い、体重比で単純に計算した量が安全とは限りません。手元に残っている薬を使いたくなったときは、必ずかかりつけに確認してから使います。

家庭でできる環境の見直し

診断がつくまでの間も、環境を整えることには意味があります。とくに咳が問題になる場合、コーネル大学猫健康センターの猫喘息の解説では、多くの臨床家・研究者が猫喘息を吸入アレルゲンへのアレルギー反応によるものと考えているとされています。同センターの「Feline Asthma: A Risky Business for Many Cats」では、疑われるアレルゲンとしてタバコの煙、ほこりの多い猫砂、家庭用洗浄剤やエアゾールスプレーの蒸気、樹木・雑草・草の花粉、カビ、ダニ、暖炉やろうそくの煙、一部の食物が挙げられています。

呼吸器に負担をかけにくい部屋にするための見直し

  • 粉塵の少ない猫砂に切り替える(袋を持ち上げたときに白い粉が舞うタイプは避ける)
  • 猫砂の交換や掃除は、猫が同じ部屋にいないタイミングで行う
  • 室内でタバコを吸わない。ベランダで吸っても衣類に付着した成分は室内に持ち込まれる
  • エアゾールスプレー(消臭剤・殺虫剤・ヘアスプレー)を猫のいる空間で使わない
  • 強い香りの芳香剤・アロマディフューザー・お香を猫の生活圏で使わない
  • 掃除機は排気の出方に注意し、かけている間は別室にいてもらう
  • カビ・結露を放置しない。とくに窓まわりと押し入れ
  • 空気の乾燥や急激な温度変化を避け、湿度をゆるやかに保つ
  • 定期的な体重測定と体重管理を続ける
  • ベッドやブランケットの洗濯・天日干しをルーティンにする

猫砂の粉塵は、見落とされがちなポイントです。トイレの前で猫がくしゃみをする、砂をかいたあとに咳が出る、という観察があるなら、砂の種類を変えるだけで様子が変わることがあります。選び方は

に、飛び散りを減らす工夫は

あわせて読みたい

猫砂の飛び散り・持ち出し対策グッズの選び方比較|マット・トイレ形状・砂の見直し・掃除道具を中立比較

にまとめています。

香りの強い製品と殺虫剤の扱いについては

で詳しく整理しました。空気中の粒子を減らす方向のアプローチとして空気清浄機を検討する場合は

あわせて読みたい

猫がいる家の空気清浄機・脱臭機の選び方比較|抜け毛・ニオイ・フケ対策の視点で

が参考になります。ただし、機械を入れれば解決するという話ではありません。まずは「持ち込まない・発生させない」ほうが効きます。

体重管理も、アニコム損保の解説で呼吸器を守るための項目として挙げられています。太っていると胸郭やお腹まわりに脂肪がつき、呼吸の負担が増えます。減量の進め方は

にまとめました。急激に減らすのは危険なので、必ず獣医師と相談しながら進めてください。

アレルギーが疑われる場合の生活の組み立て方は

にまとめています。猫側のアレルギーと、人が猫アレルギーである場合の両方を扱っているので、あわせてご覧ください。

メモ

環境を変えたときは、変えた日付と内容をメモしておいてください。「猫砂を変えて2週間で咳の回数が半分になった」のような情報は、診察のときに役立ちます。逆に、何も変わらなかったという情報にも同じくらい価値があります。複数のことを同時に変えると何が効いたのか分からなくなるので、できれば1つずつ試すのがおすすめです。

動物病院ではどんな検査をするのか

「動画を見せたら、そのあとどうなるのか」を知っておくと、受診のハードルが下がります。資料に挙げられている一般的な検査は次のようなものです。

VCAは、咳の検査として胸部X線、血液検査、フィラリア検査、気道の培養、内視鏡、心臓超音波が行われうるとしています。コーネル大学猫健康センターは、猫喘息について単一の確定検査は存在せず、X線、CT、気管支鏡などで肺の内部を見ること、X線では気道に沿った特徴的な明るい枝分かれ模様が見られることが多いことを説明しています。もう一方の記事では、聴診、好酸球を調べる血液検査、空気の閉じ込め(air trapping)を見るX線、肺虫を除外するための糞便検査といった、除外的に進める診断の流れが紹介されています。

くしゃみ・鼻の症状については、International Cat Careが、血液・尿検査(猫白血病ウイルスの検査を含む)、鼻・鼻咽頭・胸部などのX線、CT、麻酔下での鼻鏡検査(内視鏡)、生検を挙げています。そのうえで、慢性鼻炎ではこれらの検査が正常または非特異的な結果に終わることも多く、他の原因を除外することで診断されることが多い病気だとも書かれています。

ヒント

検査の順番や範囲は、症状・年齢・全身状態・費用の兼ね合いで変わります。「全部やらなければいけない」わけではありません。何を疑っていて、その検査で何が分かるのかは、遠慮なく聞いてよい部分です。相談しやすいかかりつけを持っておくことの価値は

あわせて読みたい

猫のかかりつけ動物病院の選び方|元気なうちに「猫を診る体制のある病院」を決めておく

にまとめました。

治療についても、断定的なイメージは持たないほうがよいです。コーネル大学猫健康センターは、猫喘息では通常コルチコステロイドが処方され、気道を広げるために気管支拡張薬が併用されることがあると説明し、猫が喘息から真に「治る」ことはないものの、呼吸の努力を注意深く観察し、咳に目を配り、必要なときに薬で介入することで、飼い主は喘息の猫が何年も快適に暮らす手助けができる、としています。International Cat Careも、慢性鼻炎については治癒ではなくコントロールが主な目標になるとしています。

長くつきあう病気だと分かると気が重くなるかもしれませんが、裏を返せば「毎日の観察がそのまま治療の質になる」ということでもあります。動画を撮って残す習慣は、そこでも生きてきます。

記録テンプレート:メモ帳にコピーして使う

最後に、実際に使える形にしておきます。スマホのメモアプリに貼り付けて、症状が出るたびに1行ずつ足していくだけです。

項目記入例
日付・時刻9/8(月) 6:40
動作の種類(自分の見立て)咳っぽい / くしゃみ / 吸い込む音 / 吐く動作
息の向き吐いていた / 吸っていた / わからない
開いていた / 閉じていた
姿勢体を低くして首を伸ばした
続いた時間約15秒
出たものなし(最後に飲み込む動作)
直前の状況起きてすぐ、トイレのあと
そのあとの様子すぐ普通に歩いてごはんを食べた
動画あり(IMG_0421)
環境メモ前日に猫砂を新しい銘柄に変更

これを2週間分ためて動画と一緒に持っていくと、診察の密度がまったく変わります。「たまに咳っぽいことをします」と口頭で伝えるのと、「この2週間で9回、うち6回は朝、1回20秒前後、何も出ていません。動画が3本あります」と伝えるのでは、獣医師が組み立てられる仮説の数が違います。

メモを取り始めてから、自分でも気づいたことがありました。うちの子の場合、掃除機をかけた日の夕方に多かったんです。それを伝えたら、環境の話から順番に整理してもらえて、納得しながら検査に進めました。

よくある質問

咳と吐く動作を、その場で確実に見分ける方法はありますか
「確実に」は難しいので、動画を撮ることをおすすめします。目安としては、咳では体を低くかがめて首を前に伸ばし、お腹を使って空気を押し出しますが、ふつう何も出ません。嘔吐ではお腹が波打つように収縮してから中身が出ます。日本臨床獣医学フォーラム(JBVP)の解説でも、咳と吐く動作を間違えることはよくあるとされ、咳のあるなしを獣医師に伝えることが重要だと書かれています。迷ったら「こう見えました」と自分の見立てを添えたうえで、動画を見てもらうのがいちばんです。
何も出ないのに吐こうとする動作が続きます。毛玉ケアのおやつを増やせばいいですか
自己判断で対処を続けるのはおすすめしません。VCA Animal Hospitalsは、猫の咳が「毛玉を吐いている」と誤解されやすいが毛玉は出てこない、と説明しています。実際には咳だった場合、毛玉ケアの製品では改善しません。またJBVPの解説では、毛玉を頻繁に吐くこと自体が異常であり、その場合は診察を受けた方がよいとされています。まず動画を撮って、かかりつけに相談してください。
逆くしゃみは放っておいても大丈夫ですか
一過性で自然におさまるものが多いとされていますが、頻度と経過を見てください。名古屋みなみ動物病院・どうぶつ呼吸器クリニックの解説では、病的と考える目安として「1日3回以上の頻度」「中高齢になってから生じ始める」の2点が挙げられています。Zoetis Petcareも、長引く場合や頻繁な場合は受診が必要だとしています。また茶屋ヶ坂動物病院の解説では、逆くしゃみと同時に呼吸が速い・胸やお腹が大きく上下する・口を開けて呼吸しているといった状態があれば、気道や肺のトラブルのおそれがあるとされています。
くしゃみが何日続いたら受診すべきですか
日数だけで線を引くより、鼻水・目やに・食欲・元気の有無をあわせて見てください。International Cat Careは、猫風邪などのサインが見られる場合や健康全般が心配な場合は獣医師に予約を取るよう勧めています。慢性上部気道疾患の解説でも、上記のような症状があるとき、あるいは体重が減っている・食べたがらないといった変化に気づいたときは、かかりつけに連絡するよう促しています。子猫、高齢猫、持病のある猫では早めの相談をおすすめします。
猫喘息はどのくらいの猫に起きているのですか
資料によって示され方が違います。コーネル大学猫健康センターの解説のひとつは、喘息が猫の1〜5%に影響するとしています。別の記事では、米国の家庭にいる約8000万頭の猫のうちおよそ1%、約80万頭が急性または慢性の喘息を抱えているとされ、猫でもっとも多く診断される呼吸器疾患だと述べられています。診断の平均年齢は4〜5歳とされ、若い成猫でも起こりうる病気です。
完全室内飼いでも、咳の原因にフィラリアはありえますか
コーネル大学猫健康センターは、猫のフィラリア感染でもっとも多い臨床徴候として速く苦しい呼吸、咳やえずきなどを挙げ、これらは猫喘息や他の気管支疾患と混同されうるとしています。また、セラメクチン、ミルベマイシン、イベルメクチンなどの予防薬を家庭内のすべての猫に投与することが推奨されるとしています。蚊は室内にも入ってきます。予防の要否と方法は、お住まいの地域の状況をふまえてかかりつけと相談してください。
動画は何秒くらい撮ればいいですか
1本20〜30秒程度あれば十分なことが多いです。大事なのは長さより中身で、発作が始まる前の10秒と、おさまったあとの10秒が入っていること、全身が映っていること、音が入っていることの3点です。Zoetis Petcareも、動画に加えて、どこで起きたか・直前に何があったかを伝えるとよいとしています。同じ日に何本も撮れなくても、日を変えて2〜3本たまれば傾向が見えてきます。
人間の風邪薬や点鼻薬を少しだけ使ってもいいですか
使わないでください。International Cat Careは、人間用の点鼻薬(鼻づまり薬)は猫に毒性がありうるほか、より重い病態を招くことがあるため避けるべきだと明記しています。Pet Poison Helplineも、アセトアミノフェンは犬では安全域が狭く猫ではとくに危険で、消化管障害・血液の異常・肝不全につながりうるとしています。すでに与えてしまった場合や誤食が疑われる場合は、製品のパッケージを用意してすぐ動物病院に連絡してください。
多頭飼いで、1匹だけくしゃみをしています。分けたほうがいいですか
猫風邪のウイルスは接触や分泌物、物を介して広がります。International Cat Careは、上部気道感染症のウイルスが、症状のある猫との直接接触、ウイルスを排出しているキャリア猫との接触、衣類や食器などの物を介した接触の3つの経路で広がるとし、環境中で猫ヘルペスウイルスは最大2日、猫カリシウイルスは最大10日生存しうるとしています。まずはかかりつけに連絡し、隔離や食器・トイレの分け方について指示を仰いでください。自己判断で長期に隔離すると、猫のストレスにつながることもあります。
動画を見せれば、来院しなくても診断してもらえますか
動画は診察の助けにはなりますが、それだけで診断が完結するものではありません。聴診、体重・体温の測定、口の中や耳の観察、必要に応じたX線や血液検査など、実際に触れて調べないと分からないことが多くあります。名古屋みなみ動物病院の解説でも、症状は同じように見えても予後が良好な疾患と要注意な疾患があるため、治療開始前にきちんと診断することが推奨されています。動画は「来院を省くもの」ではなく、「来院を実りあるものにするもの」と考えてください。

まとめ

咳、くしゃみ、逆くしゃみ、吐く動作。この4つは、飼い主から見ると驚くほど似ています。実際、日本臨床獣医学フォーラムの解説にも「咳と吐く動作をまちがえることもよくあります」と書かれており、これは飼い主の観察力の問題ではなく、そもそも見分けにくいものなのだと考えたほうがよさそうです。

それでも、手がかりはあります。息が出ているのか入っているのか。口は開いているのか閉じているのか。体のどこが動いたのか。そして、そのあと何が出たのか。この4点を意識するだけで、伝えられる情報の質は大きく変わります。咳では体を低くして首を前に伸ばし、お腹を使って空気を押し出すのに何も出ない。逆くしゃみでは口を閉じたまま「ズーズー」と吸い込み、多くは数秒から2分以内に自然におさまる(Zoetis Petcareは「数秒から1分ほど」、名古屋みなみ動物病院は「数十秒〜2分以内」としています)。嘔吐ではお腹が波打ってから、毛玉や食べ物が出る。ここを見分けられると、動物病院での話の出発点が変わります。

そして、いちばん確実な伝え方は動画です。全身が入る距離で、音を切らず、発作の前後10秒も残す。時刻と回数と直前の状況をメモに添える。それだけで、診察室では絶対に再現されない情報が、獣医師の手元に届きます。

一方で、開口呼吸、努力性の呼吸、チアノーゼ、横になれない、咳が止まらない、といったサインが出ているときは、見分けを考えている場面ではありません。コーネル大学猫健康センターも、動物が楽に呼吸できているかどうかに疑問があるときはいつでもすぐに獣医師のところへ、と促しています。人間用の薬を自己判断で与えることも避けてください。

今日から始められることは、たぶんひとつだけです。次に「あの動き」が出たら、慌ててやめさせようとせず、スマホを構えて20秒撮る。その20秒が、うちの子の呼吸を守る最初の一歩になります。

出典・参考

この記事をシェア

関連する記事

健康・病気・ケア

猫の毛玉・吐き戻し(毛球症)対策|正常な範囲と受診を考えたいサイン、家庭でできる予防

猫が毛玉を吐くのはグルーミングで飲み込んだ毛を出すためで、月に数回程度なら心配しすぎなくてよいとされます。頻回に吐く・吐こうとして出ない・食欲低下など受診を考えたい様子と、ブラッシングや食物繊維など家庭でできる予防を中立に整理しました。

健康・病気・ケア

猫の呼吸数を家で数える|安静時・睡眠時呼吸数の測り方と目安、ミリ波センサー研究でどこまで来たか

眠っている猫の呼吸を30秒数えるだけで、心臓や呼吸器の異変に早く気づける可能性があります。安静時・睡眠時呼吸数の数え方、資料ごとに30回/分と40回/分で割れる目安の読み方、当てにならない測定条件、受診を急ぐサインを整理し、非接触で数えるミリ波センサーの共同研究(2026年4月公表)も出典つきで紹介します。