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2匹目を迎える前に知っておきたい|多頭飼いの猫はストレス性の不調が多い?2026年デンマーク調査(猫1,714匹)の読み解き

対象の目安: 全ライフステージ

ソラ編集長 / 住環境・多頭飼い担当
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2匹目を迎える前に知っておきたい|多頭飼いの猫はストレス性の不調が多い?2026年デンマーク調査(猫1,714匹)の読み解き

「1匹だと留守番がさみしそうだから、2匹目を迎えてあげたい」。わが家も2匹目を迎える前、まったく同じことを考えていました。猫のためだと思っていたその判断に、2026年に公表されたデンマークの調査は少し立ち止まる材料をくれます。飼い主の代表サンプルにもとづく猫1,714匹の分析で、多頭世帯の猫は単独飼育の猫より、膀胱炎などストレスに関連する不調や、粗相・スプレーのリスクが高かったのです。ただし、この研究は「多頭飼いはやめましょう」と言っているわけではありません。何が猫を苦しくさせ、何がそれを和らげていたのかまで踏み込んで読むと、2匹目を迎える前の判断材料と、すでに多頭で暮らす家の見直しポイントがはっきり見えてきます。

デンマークの代表サンプル調査が調べたこと

研究のタイトルは「The social competences of companion cats – A representative study of the welfare of cats in single versus multi-cat households」。直訳すれば「飼い猫の社会的能力 - 単独飼育と多頭飼育の猫の福祉に関する代表サンプル調査」です。著者はAyoe Hoff氏、Irena Czycholl氏、Thomas Bøker Lund氏、Daniel Mills氏、James Serpell氏、Peter Sandøe氏の6名で、Applied Animal Behaviour Science誌の302巻(2026年9月号)に論文番号107040として掲載されています(DOI: 10.1016/j.applanim.2026.107040)。2026年5月にオンラインで公開されました。

要旨によれば、研究チームはデンマークの猫の飼い主の横断的な代表サンプルを対象に、(1)世帯内の猫の数が猫の福祉とどの程度関係するか、(2)屋外アクセスや福祉に関わる資源(トイレ、給餌場所、水、休息場所、隠れ場所など)といった飼育要因がどう関係するか、(3)それらの要因の重要性が単独飼育と多頭飼育で変わるか、を調べています。福祉の指標は、4つの健康問題と11の行動指標の有無です。分析には二変量のカイ二乗検定と多変量回帰分析が使われました。

Hoff A, Czycholl I, Lund TB, Mills D, Serpell J, Sandøe P「The social competences of companion cats – A representative study of the welfare of cats in single versus multi-cat households」Applied Animal Behaviour Science 302巻、論文番号107040(2026年)。要旨に、デンマークの猫の飼い主の横断的な代表サンプルを対象とし、猫の福祉を4つの健康問題と11の行動指標の有病率で測ったこと、屋外アクセスや福祉に関連する資源(トイレ、給餌場所、水、休息・隠れ場所など)を要因として含めたこと、二変量のカイ二乗分析と多変量回帰分析を用いたことが述べられています。

英国獣医師会のVet Record誌は2026年7月31日号の「他誌のハイライト」でこの研究を取り上げ、対象がデンマークの飼い猫1,714匹の飼い主へのオンライン調査だったこと、世帯内の猫の数、猫の年齢・品種・性別、健康と行動、屋外アクセスの程度、トイレ・爪とぎ・給餌場所などの資源へのアクセスを尋ね、飼い主が猫の性格をセマンティック尺度で評価したことを紹介しています。

項目内容
対象デンマークの飼い主の代表サンプル、猫1,714匹
世帯構成単独飼育51%、2匹39%、3匹以上9%
年齢の偏りシニア猫は単独飼育が多く、多頭世帯には子猫・若い猫が多い
福祉の指標4つの健康問題と11の行動指標(攻撃、過剰グルーミング、粗相、スプレーなど)
主な説明変数猫の数、屋外アクセス、資源の有無、年齢・品種・性別、飼い主が評価した性格

Psychology Today(Zazie Todd氏、2026年7月4日)は、この研究がデンマークの飼い主の代表サンプル調査であること、福祉の悪化を同居ペットへの攻撃の増加・過剰グルーミング・粗相・スプレーなど複数の側面で評価したこと、猫の51%が単独飼育で残りが2匹(39%)または3匹以上(9%)の世帯にいたこと、シニア猫は単独飼育が多く多頭世帯には子猫や若い猫が多かったことを紹介しています。

結果1 - 猫の数が増えるほど、ストレス関連の不調と粗相・スプレーが増える

いちばん見出しになった結果がこれです。要旨は、同居する猫の数が増えるほど、健康問題・粗相(house soiling)・スプレーのリスクが高くなる関連があった、と述べています。Vet Recordのまとめでは、単独飼育の世帯と比べて多頭世帯は、ストレス関連の健康問題(膀胱炎、下痢、便秘)とマーキング行動(粗相、スプレー)のリスクが高かった(P<0.05)、と具体的に書かれています。

Psychology Todayが注目しているのは、研究チームが「2匹の世帯」と「3匹以上の世帯」を分けて分析した点です。膀胱炎のリスクは、1匹または2匹の世帯と比べて3匹以上の世帯で高くなっていました。2匹目までと3匹目からで、猫の体に出るサインの出方が変わる可能性がある、ということです。

Vet Record 199巻3号(2026年7月31日)「Selected highlights from other journals」は、単独飼育世帯と比較して多頭世帯はストレス関連の健康問題(膀胱炎、下痢、便秘)とマーキング行動(粗相、スプレー)のリスクが高く(P<0.05)、制限のない屋外アクセスがこれらの負の福祉結果を有意に減らしたこと、性格の影響として不活発な猫は多頭世帯で、神経質な猫は単独飼育でより多くの問題を抱えたこと、調査がデンマークの飼い猫1,714匹の飼い主へのオンライン調査だったことを述べています。

膀胱炎・下痢・便秘が「ストレス関連」とひとまとめにされているのは、猫ではこれらがストレスで悪化しやすい不調として知られているからです。International Cat Careも、多頭世帯で猫同士に緊張が生じたり主要な資源が足りなかったりすると、猫は互いを避けるか自然な行動を抑え込んで衝突を回避し、適応できなければ慢性的なストレスに陥って、尿スプレー・特発性膀胱炎・過剰グルーミングなどの問題につながりうると説明しています。膀胱炎そのものの症状や受診の目安は、こちらで詳しく扱っています。

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結果2 - 自由な屋外アクセスがリスクを下げていた。ただし、そのまま日本には持ち込めない

2つめの結果は、少し扱いに注意が必要です。要旨は、制限のない屋外アクセス(unrestricted outdoor access)が多くの負の福祉結果のリスク低下と関連していたこと、そしてその関連は単独飼育の猫より多頭世帯の猫で大きかったことを報告しています。Psychology Todayは、屋外アクセスが多頭世帯で「猫の数が多いことの影響を打ち消しているように見える」とし、考えられる説明として「外に出られれば他の猫から離れて過ごす時間が取れ、それがストレスを減らすのではないか」という見方を挙げています。

ここで日本の飼い主が気をつけたいのは、この結果を「多頭飼いなら外に出したほうがいい」と読まないことです。理由は3つあります。

1つめは、研究自体が屋外の危険を否定していないことです。Psychology Todayも、屋外アクセスの利点は交通事故・捕食・他の猫との闘争といったリスク増と釣り合わせて考える必要があるとし、屋外アクセスは放し飼いを意味しなくてよく、脱走できないパティオや囲い付きの庭が「猫を守る点での最適点かもしれない」と書いています。2つめは文化差です。同記事は、デンマークを含む欧州の猫は北米の猫より屋外アクセスを持つことが多いと注記しています。3つめは、日本の公的な方針です。環境省の「住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン」は「猫は室内で飼うのが基本です」と明記し、屋外には危険がいっぱいで地域住民にふん尿で迷惑をかけることもあるとしたうえで、上下運動のできる場所やリラックスできる場所を用意するなど心理的・肉体的なストレスを与えないように配慮すれば室内で飼うことは可能だ、と述べています。

環境省「住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン」に、「猫は室内で飼うのが基本です」「屋外には危険がいっぱいです」「地域住民にふん尿で迷惑をかけることもあり、トラブルの元になりかねません」「上下運動のできる場所やリラックスできる場所を用意するなど、心理的、肉体的なストレスを与えないように配慮すれば室内で飼うことは可能です」「猫は屋内で飼うようにしましょう。環境を整えれば、猫は屋内だけで心身ともに健康に過ごすことができます」と記載されていることについて。環境省より。

では、この結果をどう使うか。わたしは「屋外アクセスが多頭世帯の猫に何を与えていたのか」を分解して読むのが実際的だと考えています。外に出られる猫が得ていたのは、おそらく次の4つです。同居猫と物理的に距離を取れる「空間」、追い詰められたときの「逃げ場」、いつ・どこで過ごすかを自分で決められる「選択肢」、そして狩り・探索・においの情報という「刺激」。この4つは、外に出さなくても室内で用意できます。後半で具体策に落とします。

メモ

「多頭飼いなら外に出したほうがいい」という読み方は、この研究の結果からも日本の方針からも支持されません。屋外アクセスが担っていた機能を室内で再現すること、それがこの記事の結論です。外に出していた猫を室内飼いに切り替える手順は、

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結果3 - 性格との組み合わせで、苦しくなる猫が変わる

3つめの結果は、多頭飼いを考えるうえでいちばん実用的かもしれません。要旨によれば、飼い主が「無関心」「遊ばない」「不活発」「神経質」「控えめ」「臆病」と評価した猫は、全体として福祉が損なわれている可能性が高かったのですが、その現れ方が世帯構成で分かれました。

飼い主が評価した性格単独飼育多頭飼育
無関心・遊ばない・不活発-同じ性格の単独飼育の猫より福祉が損なわれやすい
神経質・控えめ・臆病同じ性格の多頭飼育の猫より福祉が損なわれやすい-
遊び好き・活発・好奇心旺盛-福祉上の懸念が少ないことと関連(Psychology Todayの紹介)

つまり、同じ「大人しい猫」でも中身が違います。機序までは研究に書かれていないので、ここからはわたしの解釈です。誰にも興味を示さず動かない猫は、他の猫がいる環境で資源の取り合いや接触を避けきれず苦しくなりやすいのかもしれません。一方、人の気配にもびくびくする臆病な猫は、1匹だと不安の受け皿が足りない可能性があります。Psychology Todayは、こうした性格は必ずしも固定されたものではなく、猫がストレスを感じている状態を反映しているのかもしれない、と補足しています。

上席著者のSandøe氏は同記事に対して、「飼い猫は人間と同じように、社会的スキルの程度が個体ごとに違う。同種とうまくやれる猫もいれば、難しい猫もいる。しかし種として見れば、人間や犬とは違って、猫は単独性の、少なくとも義務的に社会的ではない動物だ。飼い主がそれを忘れたり無視したりすると、大切な猫の福祉を危うくする」と述べ、続けて「特に室内飼いの猫がいる場合、2匹目を迎える前によく考えるべきだ。善意によるこの行動が、少なくともどちらか1匹の猫に問題を引き起こす結果になりかねない」とコメントしています。

注意

性格の結果は「臆病な猫には友達を作ってあげよう」という結論にはなりません。神経質な猫にとって、知らない猫が突然家に来ることは大きなストレス源にもなります。Psychology Todayは臆病な猫への対応として、選択肢を与える・怖がるものから守る・隠れ場所を増やしそれを尊重する・カウンターコンディショニングで慣らす、といった方法を挙げています。まずは今の環境でできることからです。

オランダの別調査も同じ方向を示している

同じ2026年、同じApplied Animal Behaviour Science誌の302巻に、オランダの飼い主462人を対象にした別の調査も掲載されました(Bouma氏ら、論文番号107058、DOI: 10.1016/j.applanim.2026.107058)。過去12か月に猫が31種類の行動を示したかを尋ね、屋外アクセスの程度と世帯内の猫の数との関連を調べたものです。

要旨によれば、複数の猫を飼う飼い主は、尿や便による粗相、家の中でのスプレー、皮膚の損傷を伴わない過剰グルーミング、恐怖(飼い主・来客・家電に対する)を有意に多く報告していました。逆に、飼い主や来客への攻撃は1匹だけを飼う飼い主のほうが多く報告しています。また多頭世帯の飼い主の25%超が、抱き上げさせない・同居猫を追いかける・トイレの外で排尿する、と答えています。屋外アクセスについては、便による粗相と観葉植物などの異食は屋外アクセスのない猫の飼い主が最も多く報告し、家の中でのスプレーは制限のない屋外アクセスを持つ猫の飼い主が最も多く報告した、という結果でした。

Bouma EMC, van Hagen MAE, Reijgwart ML, Dijkstra A「Owner reported (problem) behaviours of cats: Associations with outdoor access and number of cats in the household」Applied Animal Behaviour Science 302巻、論文番号107058(2026年)。要旨に、オランダの飼い主462人に過去12か月の31行動の有無を尋ねたこと、複数の猫の飼い主は尿・便による粗相、屋内でのスプレー、損傷を伴わない過剰グルーミング、恐怖を有意に多く報告し、飼い主や来客への攻撃は1匹飼いの飼い主に多かったこと、多頭世帯の飼い主の25%超が抱き上げさせない・同居猫を追いかける・トイレ外での排尿を報告したこと、便の粗相と異食は屋外アクセスのない猫で、屋内でのスプレーは制限のない屋外アクセスを持つ猫で最も多く報告されたことが述べられています。

デンマークとオランダ、方法も指標も違う2つの調査が「多頭世帯では粗相やスプレーが多く報告される」という点で重なったことは、偶然の産物ではなさそうだと考える根拠になります。同時にオランダの調査では、制限のない屋外アクセスを持つ猫のほうがスプレーは多く報告されており、「外に出せばマーキングが消える」という単純な話でもないことがわかります。

この研究の限界と、読み方の注意

ここまでの結果を受け取るときに、押さえておきたい限界が4つあります。

  1. 相関研究であり、因果は示していない。Psychology Todayも「この研究は相関研究なので因果関係を証明していない」と明記しています。多頭世帯で不調が多いことの一部は、たとえば「猫を多く飼う家庭の住環境や飼い方」など、別の要因を介している可能性があります。
  2. 飼い主の自己申告にもとづく。健康問題も行動も性格も、飼い主の報告と評価です。多頭世帯の飼い主は猫同士の関係に目が向きやすく、粗相やスプレーに気づきやすいという報告バイアスも考えられます。
  3. デンマークの調査である。住宅の広さ、屋外アクセスの普及度、猫の飼い方の文化が日本と異なります。世帯構成の割合や屋外アクセスの効果を日本にそのまま当てはめることはできません。
  4. 「多頭飼い全体が悪い」とは言っていない。Vet Recordのまとめは、この研究が「頭数だけで福祉が決まるわけではなく、飼育要因と個々の猫の性格も大きく影響する」ことを示したとし、新しい猫を迎える前に社会的な相性を評価することを推奨する、と結んでいます。

つまり、この研究が支持するのは「多頭飼いをやめる」ではなく「迎える前に相性と環境を評価し、迎えた後は資源と逃げ場を惜しまない」という姿勢です。ここから先は、それを室内で実行する話になります。

「外」が担っていたものを室内で用意する - 5本柱と資源の数

FelineVMA(旧AAFP)は2025年のポジションステートメントで、室内のみの生活環境が引き起こす苦痛(distress、個体が対処しきれない状態)に続いて生じる行動上の障害や医学的疾患があるとし、健康な猫の環境の5本柱(five pillars of a healthy feline environment)で猫それぞれの環境ニーズを満たすことが、苦痛と、行動障害・ストレス関連疾患の発生を最小限にすると述べています。同ステートメントは、2匹以上の猫がいる世帯ではこのニーズを満たすために追加の作業が必要になることも、飼い主に伝えるべき点として挙げています。5本柱の中身は、安全な場所、分散した複数の主要資源、遊びと捕食行動の機会、前向きで一貫した人との関わり、嗅覚を尊重した環境です(詳しい説明は前掲の室内飼い切り替えの記事にまとめています)。

FelineVMA(旧AAFP)の2025年ポジションステートメント「Meeting the Physical and Emotional Needs of Indoor Cats」に、猫に見られるいくつかの行動障害と医学的疾患が室内のみの生活環境によって引き起こされる苦痛(個体が対処できない状態)に続発すること、健康な猫の環境の5本柱によって猫それぞれの必須の環境ニーズを満たすことが苦痛と行動障害・ストレス関連疾患の発生を最小限にすること、2匹以上の猫がいる世帯でこれらのニーズを満たすには追加の作業が必要であることを飼い主に教育する機会があること、が記載されていることについて。FelineVMAより。

これを「屋外が担っていた4つの機能」に対応させると、次のようになります。

屋外が与えていたもの室内での置き換え具体的な目安
空間(同居猫と距離を取れる)資源の分散配置、複数の部屋を使う資源は「猫の数+1」を別々の場所に。トイレをひとつの場所にまとめない
逃げ場(追い詰められない)縦の空間と隠れ家高い休息場所には出入口を2つ。箱・キャリー・カバー付きベッドなどの私的な場所を邪魔しない
選択肢(いつ・どこで・誰と)給餌・給水・トイレ・寝床の複数拠点食事は同じ場所に並べない。水は食事から離れた複数箇所に
刺激(狩り・探索・におい)遊び・フードパズル・窓辺・爪とぎ遊びは1匹ずつ別に。爪とぎは休息場所や出入口の近くに複数

「猫の数+1」は、International Cat Careが多頭世帯の資源の目安として挙げている「1匹につき1つ、プラス1つ余分を、別々の場所に」という定式です。同団体は例として、社会的グループを作っていない3匹の家では、フード・水・爪とぎ・ベッド・高い場所・おもちゃ・トイレのすべてを4つずつ、家じゅうの別々の場所に置くことを挙げ、トイレをひとつの場所にまとめると猫はそれを1つの資源とみなして使用をためらい、互いに邪魔しやすくなるとしています。高い休息場所には、他の猫に閉じ込められないよう可能なら出入口を2つ確保すること、猫は互いから、そして人からも「タイムアウト」を必要とするので暗く暖かい私的な場所を用意し、使っているときは邪魔しないこと、遊びは猫にとって単独の余暇であり不安な猫は自信のある猫の前では遊ばないので1匹ずつ別に遊ぶこと、も挙げられています。

International Cat Care「Multi-cat households」(2025年9月26日更新)に、多頭世帯がうまくいく3つの要素が猫同士の相性・資源の量とアクセス・地域の猫の密度であること、資源の数の目安として「1匹につき1つ、プラス1つ余分を、別々の場所に」という定式が広く使われ、3匹の家なら各資源を4つずつ別々の場所に置くこと、トイレを1か所にまとめないこと、高い場所には可能なら出入口を2つ設けること、猫は互いから・人からもタイムアウトを必要とし私的な場所を邪魔しないこと、遊びは1匹ずつ別に行うこと、密度の高い地域では多頭飼いを避けるか2匹までに抑えることが述べられています。同ページには、緊張や資源不足で猫が適応できないと慢性的なストレスとなり尿スプレー・特発性膀胱炎・過剰グルーミングにつながりうることも記載されています。

日本語の資料としては、環境省のパンフレット「猫に快適な室内環境」が同じ要素を並べています。上下運動ができる場所、外が見える場所、かくれ場所、爪とぎ、猫の数+1個が理想とされるトイレ、安全な猫用のおもちゃ。家の中を見回すときのチェック項目として使えます。

環境省パンフレット「宣誓!無責任飼い主0(ゼロ)宣言!!」の「猫に快適な室内環境」に、上下運動ができる場所・外が見える場所・かくれ場所・爪とぎ・トイレ(猫の数+1個が理想)・安全な猫用のおもちゃが挙げられていることについて。環境省より。

ヒント

わが家で効いたのは「部屋を分ける」より「動線を分ける」ことでした。キャットステップで壁づたいに上を通れる道を作ると、床で顔を合わせずに部屋を移動できます。上下動線の作り方は

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2匹目を迎える前に確認したいこと

デンマークの研究とVet Recordの推奨(迎える前に社会的な相性を評価する)、International Cat Careの3要素(相性・資源・密度)を、迎える前の自問に落とすと次のようになります。

2匹目を迎える前のチェック

  • いま暮らしている猫は「遊び好き・活発・好奇心旺盛」か。無関心で遊ばず不活発なタイプなら、多頭で福祉が悪化しやすいとされる側にいる
  • いまの猫はすでに膀胱炎・下痢・便秘を繰り返していないか。ストレス関連の不調がある状態で頭数を増やすのは負荷を重ねることになる
  • 資源を「猫の数+1」にできるか。トイレ3つ、食事・水・寝床・爪とぎ・高い場所をそれぞれ別の場所に置けるだけの間取りか
  • 顔を合わせずに部屋を移動できる縦の動線や、追い詰められない隠れ家を用意できるか
  • 迎える猫の来歴はわかるか。子猫期に他の猫と過ごしていたか、以前の家で猫と同居できていたか
  • 隔離部屋を数週間確保できるか。段階的な顔合わせに時間をかける余裕があるか
  • うまくいかなかったときの選択肢(生活空間を分ける、里親を探す)を家族で共有しているか
  • 迎える動機が『猫がさみしそう』なら、それは本当に猫の要求か。遊び・関わりの時間を増やすことで解消する退屈ではないか

Sandøe氏のコメントを「多頭飼いは不可能」と読む必要はありません。デンマークの調査でも半数近くの猫は他の猫と暮らしており、遊び好きで活発な猫は多頭世帯で福祉上の懸念が少ないことと関連していました。大切なのは、迎える前に「うちの猫はどちらのタイプか」「資源と逃げ場を本当に用意できるか」を、猫の側に立って点検することです。顔合わせの段階的な手順は、こちらに詳しくまとめています。

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すでに多頭で不調サインがある家庭の見直しと、受診の目安

デンマークの研究で多頭世帯に多かった不調は、膀胱炎・下痢・便秘・粗相・スプレーでした。もし今、多頭で暮らしていてこのどれかが出ているなら、「性格の問題」や「わざと」ではなく、環境の点検から始めるのが研究の示す順番です。

  1. 1

    まず動物病院で体の原因を除外する

    粗相やスプレーの背景には膀胱炎や結石などの病気が隠れていることがあります。トイレの回数が増えた、排尿時に鳴く、尿が少量ずつしか出ない、血尿がある、下痢や便秘が続くといったサインがあれば、行動の対策より先に受診してください。受診時に「猫は何匹いるか」「トイレはいくつ・どこにあるか」も伝えると、診察の助けになります。
  2. 2

    猫同士の「静かな緊張」を観察する

    FelineVMAの2024年ガイドラインは、猫同士の緊張(intercat tension)はよくあることだが、ほとんどのサインが微妙なため認識されないことが多い、2匹の世帯でも起こりうる、と述べています。じっと見つめる、通路やトイレの前を占める、片方が部屋を出ていく、いつも同じ猫が先に食べる。International Cat Careがすすめるように、誰がどの部屋をいつ使うかを家の間取り図にメモしてみると、資源が「共有を強いられている場所」が見えてきます。
  3. 3

    資源を「猫の数+1」にし、場所を分ける

    トイレ・食事・水・寝床・爪とぎ・高い場所を、頭数+1を目安に別々の場所へ増やします。特にトイレは、まとめ置きをやめて別の部屋や階に分散させるだけで、粗相が落ち着くことがあります。
  4. 4

    逃げ場と縦の動線を足す

    追い詰められない出入口が2つある高い場所、カバー付きベッドや箱などの私的な場所を、それぞれの猫が使える位置に用意します。使っている猫を呼び出したり撫でに行ったりしないことも、逃げ場を「逃げ場」として機能させる条件です。
  5. 5

    1匹ずつ遊び、食事の場を分ける

    遊びは1匹ずつ別の場所で。食事は同じ場所に器を並べず、視線が遮られる配置か、床とテーブルなど高さを変えて与えます。おやつ探しやフードパズルは、屋外の探索が担っていた刺激の代わりになります。
  6. 6

    改善しなければ専門家につなぐ

    環境を整えても威嚇・追いかけ・スプレーが続く場合は、かかりつけの動物病院を通じて行動診療の専門家に相談する道があります。関係がこじれた場合の再導入の手順は、下の関連記事で扱っています。

FelineVMA(旧AAFP)「2024 AAFP Intercat Tension Guidelines」の紹介ページで、共同議長のIlona Rodan氏が、猫同士の緊張や衝突はよくあるがほとんどのサインが微妙なため認識されないことが多いこと、2匹の世帯でも起こりうること、新しい猫を迎えるときに最も頻繁に起こることを述べており、ガイドラインが健康な猫の環境の5本柱を2匹以上の世帯向けに修正した枠組みを提供していること、多頭世帯プロファイルの質問票や新しい猫の導入手順を含むことが記載されていることについて。FelineVMAより。

危険

尿がまったく出ない、トイレで排尿姿勢のまま出ない、何度もトイレに入るのに少量しか出ない、排尿時に鳴く、ぐったりしている。こうした様子があるときは尿道閉塞など緊急性の高い状態の可能性があり、とくにオス猫では短時間で命に関わることがあります。多頭飼いの環境見直しより先に、すぐ動物病院を受診してください。

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2匹目を迎えて半年ほどで、先住猫がトイレの外でおしっこをするようになりました。病院では膀胱炎と診断され、先生に「トイレはいくつ?」と聞かれて2つと答えたら、3つにして別の部屋に置くこと、寝床も分けることをすすめられました。治療とあわせて配置を変えたら、数週間で粗相は止まりました。あのとき「わざとやっている」と思わなくてよかったと思います。
飼い主

よくある質問

この研究は「多頭飼いは猫にとって悪い」と言っているのですか
そうではありません。要旨は、同居する猫の数が増えるほど健康問題・粗相・スプレーのリスクが高くなる関連があったと述べる一方で、屋外アクセスや資源、性格といった要因も同時に福祉と関連していたことを示しています。Vet Recordのまとめも、頭数だけで福祉が決まるわけではなく飼育要因と個々の猫の性格が大きく影響するとし、新しい猫を迎える前に社会的な相性を評価することを推奨しています。相関研究なので因果も示していません。「やめる」ではなく「迎える前に評価し、迎えたら資源と逃げ場を惜しまない」が妥当な読み方です。
多頭飼いなら外に出したほうが猫は幸せ、ということですか
そうは読めません。研究で屋外アクセスとリスク低下の関連が見られたのは事実ですが、Psychology Todayも屋外の利点は交通事故・捕食・他の猫との闘争のリスク増と釣り合わせる必要があるとし、脱走できないパティオや囲い付きの庭を選択肢に挙げています。日本では環境省が「猫は室内で飼うのが基本」としており、環境を整えれば室内だけで心身ともに健康に過ごせると明記しています。屋外が与えていた空間・逃げ場・選択肢・刺激を、資源の分散・縦の空間・隠れ家・遊びで室内に用意することが現実的な対応です。
うちは2匹で仲良く見えます。それでも何かしたほうがいいですか
見た目の仲の良さと、猫が感じているストレスは別のことがあります。FelineVMAの2024年ガイドラインは、猫同士の緊張はほとんどのサインが微妙で認識されないことが多く、2匹の世帯でも起こりうるとしています。トイレや寝床の前で片方が待つ、いつも同じ猫が先に食べる、一方が部屋を出ていく、といった静かなサインを観察し、資源が猫の数+1で別々の場所にあるかを一度点検してみてください。膀胱炎や粗相が出ていないなら、点検で済むことも多いはずです。
3匹目を迎えるときに気をつけることは
デンマークの研究では、膀胱炎のリスクが1〜2匹の世帯と比べて3匹以上の世帯で高くなっていました。頭数が増えるほど資源と空間の要求も増えるので、3匹目からは「猫の数+1」を本当に別々の場所に置けるか、間取りの面から現実的に見積もることをおすすめします。International Cat Careは、猫の密度が高い地域では多頭飼いを避けるか2匹までに抑えることも選択肢として挙げています。すでにいる猫の性格(不活発・無関心なタイプが混じっていないか)と健康状態(ストレス関連の不調がないか)も、迎える前に確認したい点です。
多頭飼いの猫が膀胱炎を繰り返しています。頭数を減らすべきですか
当サイトで個別の判断はできませんので、まずはかかりつけの動物病院で治療と原因の評価を受けてください。そのうえで、環境面ではトイレ・水・寝床・高い場所を頭数+1にして別々の場所に置く、逃げ場を用意する、食事と遊びを1匹ずつ分ける、といった見直しから始めるのが、研究や各団体の資料が示す順番です。International Cat Careは、多頭世帯で猫が適応できない場合の慢性的なストレスが特発性膀胱炎につながりうるとしています。環境を整えても改善しないときは、生活空間を分ける、行動診療の専門家に相談するといった選択肢を獣医師と一緒に検討してください。

まとめ

2026年に公表されたデンマークの代表サンプル調査(猫1,714匹)は、同居する猫の数が増えるほど、膀胱炎・下痢・便秘といったストレス関連の健康問題と、粗相・スプレーのリスクが高くなる関連を示しました。膀胱炎は3匹以上の世帯で目立ち、制限のない屋外アクセスはそのリスクを下げていて、その効果は多頭世帯で大きかった。そして、不活発で無関心な猫は多頭で、神経質で臆病な猫は単独で福祉が悪化しやすい。相関研究なので因果は示していませんが、オランダの462人の飼い主調査も「多頭世帯では粗相やスプレーが多く報告される」という点で重なっています。

日本の飼い主にとっての結論は、外に出すことではありません。環境省が室内飼いを基本としている以上、屋外が多頭世帯の猫に与えていた「空間・逃げ場・選択肢・刺激」を、資源の「猫の数+1」と分散配置、出入口が2つある高い場所、邪魔されない隠れ家、1匹ずつの遊びと食事で室内に用意することです。2匹目を迎える前なら、いまの猫の性格と健康状態、そして間取りと時間の余裕を、猫の側に立って点検してください。すでに多頭で不調が出ているなら、体の原因を動物病院で除外したうえで、静かな緊張のサインを観察し、資源から見直してください。

Sandøe氏の「2匹目を迎える前によく考えるべきだ」という言葉は、多頭飼いを否定する言葉ではなく、迎えるならその猫たちの福祉に責任を持てる準備をしよう、という呼びかけだと受け取っています。わが家の2匹も、トイレを3つにして寝床を分けるまでは、いま思えば静かな緊張の中にいました。準備の順番を間違えなければ、多頭飼いは猫にとっても人にとっても穏やかな暮らしになりえます。

本記事は研究の一般的な紹介と環境づくりの情報提供であり、診断や治療、個々の猫に適した飼育方法を判断するものではありません。膀胱炎・下痢・便秘・粗相・スプレーなどの症状がある場合は、かかりつけの動物病院で猫の状態を診てもらったうえでご相談ください。

出典・参考

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しつけ・問題行動

多頭飼いの猫が喧嘩する・仲が悪い原因と対策|じゃれ合いとの見分け方と仕切り直し

一緒に暮らす猫同士が喧嘩する、仲が悪いと悩む飼い主さんへ。じゃれ合いと本気の喧嘩の見分け方、資源競合や縄張り・転嫁性攻撃といった原因、資源を頭数プラス1に整える工夫、こじれたときの再導入の手順、やってはいけない対応を獣医療情報をもとに整理しました。

住環境・お留守番

外に出していた猫を完全室内飼いに切り替える|2026年の調査が示した「思ったより簡単」と移行の実務

2026年8月、飼い主87名を対象にした調査で「完全室内飼いへの移行は予想より簡単だった」と3分の2以上が答えたことが報じられました。日本で室内飼いがすすめられている根拠、切り替えの手順、鳴く時期の乗り切り方、うまくいかないサインまで出典つきで整理します。