猫の鳴き声AI翻訳アプリは当たる?MeowTalkなど最新事情としぐさ観察との併用法

「うちの子、いま何て鳴いた?」——スマホに向かって猫の鳴き声を聞かせるだけで気持ちを翻訳してくれるというAIアプリが、ここ数年たびたび話題になっています。代表格は米国発の「MeowTalk(にゃんトーク)」で、公開から2000万回超ダウンロードされ、10億件以上の鳴き声を分析してきたといいます。とはいえ「AIが猫語を完全に理解した」と言えるのかというと、開発元自身が示す数字にも幅があり、研究者の受け止め方も一様ではありません。話題性だけで鵜呑みにせず、できることとできないことを整理してみましょう。
AIはどうやって鳴き声を「翻訳」しているのか
MeowTalkは、米ワシントン州ベルビューのソフトウェア企業アクベロンのセルゲイ・ドレイジン氏らが開発したアプリです。録音した鳴き声をスペクトログラム(周波数と時間を可視化したもの)に変換し、画像認識に近い手法で「ごはんがほしい」「イライラしている」といった意図のカテゴリーに振り分けます。ユーザーが翻訳結果に対して合っている・違うをフィードバックすることで、その猫専用のモデルとして精度を上げていく仕組みになっています。
開発元が公表する精度は、実際どのくらいなのか
ここがいちばん気になるところですが、公表されている数字には幅があります。素の状態(そのアプリを使い始めたばかりで学習が進んでいない状態)では正答率は7割程度にとどまり、2021年に行われた検証では特定の条件下で9割程度の精度が報告された、という段階的な説明がされています。
開発者による主張では平均70%程度の正確性とされる一方、2021年の独立した検証では特定の条件下で90%の精度が報告されたと紹介されています。出典:Innovatopia
2021年の研究で、餌やり・ブラッシング・見知らぬ環境という3つの場面における猫の意図分類について90%の精度を達成したと紹介されています。出典:ナショナル ジオグラフィック日本版
一方で、海外メディアでは猫の鳴き声を40種類に細分類し95%以上の精度をうたう新しい研究プロジェクトも報じられています。ただし、こうした新しい取り組みは発表されたばかりで、独立した第三者による追試や検証がどこまで進んでいるかは記事の時点でははっきりしません。数字の大きさだけを見て「もう猫語は完全に解読された」と受け取るのは早計で、どの条件・どのサンプルで測った精度なのかを意識しておく必要があります。
従来のアプリが9〜11程度の意図分類で約90%の精度だったのに対し、猫の鳴き声を40種類に細分類し95%以上の精度で翻訳できるとする新しい研究プロジェクトが報じられています。出典:ナゾロジー
メモ
国内で配信されている猫語翻訳アプリとして、鳴き声を録音して翻訳するタイプのほか、ボタン操作で猫語風の音声を再生するタイプなど7つのアプリが紹介されています。出典:アプリブ
研究者はどう見ているか
専門家の受け止め方は割れています。フランス・パリ・ナンテール大学で猫の行動を研究するシャーロット・ドゥ・ムゾン氏は、こうしたアプリの精度を全面的に信頼しているわけではないとしながらも、飼い主が猫によく注意を向けるきっかけになる点は利点として認めています。また、米ミシガン州オークランド大学の心理学者ジェニファー・ボンク氏は、猫が人に向けて発する鳴き声そのものは、猫同士の複雑なコミュニケーションに比べるとそれほど複雑ではないと指摘しています。
海外の別の報道でも、直接翻訳できるという主張そのものに懐疑的な専門家がいる一方、機械学習の活用が猫のコミュニケーション研究を前進させる手段になりうると評価する研究者もおり、評価は一枚岩ではありません。
できること・苦手なこと
ここまでの内容を踏まえると、AI翻訳アプリの立ち位置が見えてきます。
- できること: 鳴き声のパターンをある程度カテゴリー分けし、「今はこういう意図かもしれない」というヒントを示す。使い続けてフィードバックすることで、その猫の癖に合わせた精度改善が期待できる。
- 苦手なこと: 鳴き声だけでは、そのとき猫が置かれている状況(食後かどうか、来客中か、トイレの様子など)までは読み取れない。個体差が大きく、同じ「ニャー」でも猫によって意味合いが違うことがある。「痛い」といった体調に関わる意図表示が出ても、それをそのまま診断のように受け取るのは危険。
注意
しぐさ観察と組み合わせてこそ本領を発揮する
鳴き声だけで気持ちのすべてがわかるわけではない、というのがここまでの内容の結論です。猫は鳴き声のほかにも、しっぽの角度や動かし方、耳の向き、目の開き具合、ひげの動き、スリスリやふみふみといった体全体のしぐさで気持ちを伝えています。AI翻訳アプリが示す「意図」を、その場の猫の姿勢や表情と照らし合わせることで、はじめて実感を持って気持ちを推測できるようになります。
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たとえば、アプリが「イライラしている」と表示したときに、しっぽを左右に速く大きく振っている、耳が後ろに倒れているといったサインが重なっていれば、機嫌が良くないという見立てはより信頼できそうです。逆にアプリの表示と実際のしぐさが食い違うときは、その猫の個体差や、まだ学習が浅いタイミングである可能性も考えて、結果を過信しすぎないようにしましょう。
夜中に繰り返し鳴くようなケースでは、翻訳アプリの一言だけで判断せず、年齢や状況ごとの原因を確認しておくと安心です。
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AI翻訳アプリを使うときのコツ
AI翻訳アプリと上手につきあうコツ
- 最初の数回の結果を鵜呑みにせず、フィードバック機能があれば継続して育てるつもりで使う
- 鳴き声だけでなく、そのときのしっぽ・耳・目・姿勢もあわせて観察する
- 「痛い」「体調不良」を示唆する表示が出たときこそ、アプリではなく実際の様子(食欲・元気・排せつ)を確認する
- 同じ猫でも状況によって鳴き方は変わるため、1回の結果だけで性格や気持ちを決めつけない
- エンタメとして家族で楽しむくらいの距離感を保ち、しつけや医療判断の根拠にはしない
AI翻訳アプリの精度はどのくらい信頼できますか?
アプリが『痛い』と表示したら、病気を疑うべきですか?
AI翻訳と、しっぽや耳を見る方法はどちらを信じればいいですか?
まとめ
猫の鳴き声を分析するAI翻訳アプリは、機械学習で音声パターンを意図のカテゴリーに振り分ける技術で、開発元が公表する精度には7割から9割超まで幅があり、専門家の評価も一様ではありません。「もう猫の気持ちが完全にわかる」と言い切るのは早く、あくまで観察を助ける補助ツールとして受け止めるのが現実的です。アプリの表示をきっかけに、しっぽ・耳・目・しぐさといった昔ながらの手がかりにもあらためて目を向けてみると、愛猫の気持ちにより近づけるはずです。
出典・参考
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