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猫のマルファン症候群が初めて報告された|2026年9月コーネル大学の兄弟猫2匹の研究を飼い主目線で読む

対象の目安: 全ライフステージ

ミオ・食事・健康担当
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猫のマルファン症候群が初めて報告された|2026年9月コーネル大学の兄弟猫2匹の研究を飼い主目線で読む

「猫のマルファン症候群が初めて見つかった」というニュースが、2026年9月下旬に海外で報じられました。マルファン症候群は、人では体の結合組織が生まれつき弱くなる遺伝性の病気として知られています。それが猫で、しかも兄弟の2匹で確認されたという話です。猫と暮らしていると「うちの子の手足が長いのは大丈夫だろうか」と気になった方もいるかもしれません。先にお伝えすると、今回の報告は兄弟2匹の症例報告で、1,000匹を超える猫のデータにはこの変異が見つかっていません。一般の飼い主が過度に心配する話ではありません。この記事では、コーネル大学の発表と論文の要旨で確認できた範囲に絞って内容を整理し、遺伝性の病気や心臓・眼の異常に気づくきっかけと受診の目安につなげます。

何が発表されたのか

2026年9月22日、コーネル大学獣医学部(College of Veterinary Medicine)は、同学部とBaker Institute for Animal Healthの研究者が、飼い猫でのマルファン症候群を初めて分子レベルで特徴づけたと発表しました。論文は学術誌Scientific Reportsに掲載されています。発表では、兄弟猫のGaryとShaggyが、猫で初めて記録されたマルファン症候群の症例だと紹介されています。

研究にはコーネル大学のほか、ベルギーのゲント大学、米国のペンシルベニア大学、ニューヨークのSchwarzman Animal Medical Centerが参加し、臨床での詳しい評価と遺伝子解析を組み合わせて原因遺伝子を突き止めたとされています。論文の責任著者(senior author)であるJacquelyn Evans氏は、今回の知見が獣医師が今後似たケースに気づく助けになるかもしれない、とコメントしています。

2026年9月22日付の発表であること、兄弟猫GaryとShaggyが猫で初めて記録されたマルファン症候群の症例であること、論文がScientific Reportsに掲載されたこと、ゲント大学・ペンシルベニア大学・Schwarzman Animal Medical Centerとの共同研究であること、Evans氏のコメントについて。Cornell University College of Veterinary Medicineのニュースより。

2匹に見られた特徴

コーネル大学の発表によると、GaryとShaggyは子猫のころから手足が目立って長く、その後の検査で眼の構造の異常と大動脈の拡張が見つかりました。これらがマルファン症候群を疑うきっかけになったと説明されています。

論文の要旨では、もう少し具体的に書かれています。

所見論文の要旨での記載
眼両眼の水晶体脱臼(水晶体が本来の位置からずれる状態)
心臓・血管大動脈基部の拡張(心臓から出てすぐの大動脈の根元が広がる状態)
骨格長い四肢
組織の検査1匹の上行大動脈で、弾性線維が乱れ断裂している所見。人のマルファン症候群で見られる変化と一致

要旨では、水晶体脱臼と大動脈基部の拡張がマルファン症候群の中心的な特徴(cardinal features)だと説明されています。2匹は品種猫ではなく、要旨ではrandom-bred(特定の品種として繁殖されていない猫)の同腹の兄弟と記載されています。

なお、論文の謝辞には、1匹(Case 1)の死後の病理検査がSchwarzman Animal Medical Centerで行われたことが書かれています。その猫がいつ、どのような経過で亡くなったのか、2匹の年齢や診断後の治療、もう1匹の現在の様子については、コーネル大学の発表にも論文の要旨・謝辞にも書かれていません。

両眼の水晶体脱臼、大動脈基部の拡張、長い四肢、1匹の上行大動脈で弾性線維の乱れと断裂が見られ人のマルファン症候群の変化と一致したこと、2匹がrandom-bredの同腹の兄弟であること、謝辞にCase 1の死後病理検査の記載があることについて。Cook SRほか、Scientific Reports(2026年9月19日オンライン公開)の要旨と謝辞より。

原因はFBN1遺伝子の変異。人とはどこが違うのか

FBN1とフィブリリン1

原因として特定されたのはFBN1という遺伝子です。コーネル大学の発表によると、FBN1はフィブリリン1というタンパク質の設計図で、フィブリリン1は血管、骨、靭帯、皮膚、眼など全身の結合組織を形づくる材料のひとつです。結合組織が弱くなると、骨格、眼、血管という離れた場所に症状が出ることがあるのはこのためです。

人のマルファン症候群も同じFBN1が原因遺伝子です。難病情報センターは、人のマルファン症候群では骨格の症状(高身長、細く長い指など)、眼の症状(水晶体のずれ、強い近視など)、心臓血管の症状(動脈がこぶのようにふくらむ、裂けるなど)が起こりうると説明しています。GaryとShaggyに見られた長い手足、水晶体脱臼、大動脈の拡張は、この3つの領域にちょうど対応しています。

人は1つで発症しうる、2匹は2つ持っていた

大きな違いは、変異をいくつ持っていたかです。

人のマルファン症候群は常染色体顕性遺伝(優性遺伝)の病気で、変異が1つあれば発症しうるとされています。難病情報センターによれば、マルファン症候群の親から子どもに病気が伝わる確率は50%です。

一方、コーネル大学の発表によると、GaryとShaggyはFBN1の変異を2つ持っていました。つまり両親から1つずつ受け継いでいたことになります。発表では、変異を2つ受け継ぐことは極めてまれで、正常なフィブリリン1を作る働きを妨げうるとも説明されています。

それでも2匹が成猫まで生きられた理由

では、変異を2つ持っていたのに、なぜ2匹は成猫まで生きられたのか。発表によると、2匹の変異は遺伝子の働きを完全に止めるものではなく、遺伝子の情報が処理される過程を部分的に乱すものでした。そのため一部の正常な働きが残り、もっと重い病気になってもおかしくない変異を2つ持ちながら、成猫まで生きられたと説明されています。

論文の要旨では、この点がもう少し詳しく書かれています。全ゲノム解析で見つかった変異は、FBN1の22番目のエクソンのすぐ手前にある塩基の置き換えで、1匹の猫の遺伝子の読み取り結果を調べたところ、約73%で22番目のエクソンが読み飛ばされていました。一方で、正常な読み取りも少量つくられていたため、2匹は変異を2つ持ちながら、働きとしては変異を1つ持つ状態に近かった(functionally heterozygous)と説明されています。

メモ

ここでの「両親から1つずつ受け継いだ」は、2匹が変異を2つ持っていたことから導かれる説明です。両親の猫が検査を受けたのか、症状があったのかは、発表と論文の要旨には書かれていません。

FBN1がフィブリリン1をコードし血管・骨・靭帯・皮膚・眼などの結合組織に関わること、2匹が変異を2つ(両親から1つずつ)持っていたこと、人では1つの変異で発症しうること、2つ受け継ぐことが極めてまれであること、変異が遺伝子を完全には止めず一部の正常な働きが残り成猫まで生きられたことの説明について。Cornell University College of Veterinary Medicineのニュースより。変異の位置、約73%でのエクソン22の読み飛ばし、functionally heterozygousとの説明は、Cook SRほか、Scientific Reports(2026年)の要旨より。

一般の飼い主が過度に心配しなくてよい理由

ニュースを見て、自分の猫の手足の長さが気になった方もいるかもしれません。ですが、次の点から、今回の報告をそのまま「うちの子も」と結びつける必要はありません。

  • 今回の報告は兄弟2匹の症例です。猫でマルファン症候群がどのくらいの頻度で起きるのかを調べた研究ではありません。
  • 論文の要旨によると、2匹が持っていた変異は、1,000匹を超える猫の遺伝子データには見つかりませんでした。
  • 2匹で問題になったのは、手足の長さだけではなく、水晶体脱臼と大動脈の拡張という、検査で確かめられた所見の組み合わせです。体つきだけで判断できる病気ではありません。

人のマルファン症候群は、コーネル大学の発表ではおよそ4,000人に1人がかかる病気とされ、難病情報センターはおよそ5,000人に1人がこの病気の遺伝子の変化をもっていると説明しています。ただしこれは人の数字で、猫でどのくらい起きるのかは分かっていません。特定の品種で起きやすいかどうかも、今回の2匹がrandom-bredの猫だったこと以上の情報はなく、猫での治療方針も示されていません。

人のマルファン症候群の原因遺伝子がFBN1であること、骨格・眼・心臓血管の症状、常染色体顕性遺伝で親から子に伝わる確率が50%であること、およそ5,000人に1人がこの病気の遺伝子の変化を持つと報告されていることについて。難病情報センター「マルファン症候群/ロイス・ディーツ症候群(指定難病167)」より。人で約4,000人に1人という数字はコーネル大学のニュースより。

今回の研究が猫にとって意味すること

コーネル大学のEvans氏は、この発見を「飼い主が獣医師や遺伝の専門家と協力して、将来ほかの動物の役に立つことを学んだ好例」と表現しています。論文の謝辞にも、GaryとShaggyの飼い主が臨床と遺伝の両面から診断を求め続けたことへの感謝が記されています。

コーネル大学の発表によれば、猫でマルファン症候群が記録されたのは今回が初めてです。論文の要旨でも、人では多い病気である一方、動物で自然に起きた例の報告はまれだと書かれています。今回、子猫期からの長い手足、水晶体脱臼、大動脈基部の拡張という組み合わせと、その遺伝的な背景が記録されたことで、獣医師が似たケースに出会ったときの手がかりが1つ増えたといえます。

今回の変異を調べる猫向けの遺伝子検査が一般に受けられるかどうかについて、コーネル大学の発表と論文の要旨は触れていません。遺伝子検査で分かること・分からないことの全体像は、多発性嚢胞腎などの例を扱った

で整理しています。猫のゲノムを使った研究が人の医療とどうつながるのかという視点では、がんゲノム解析を取り上げた

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猫のがんゲノム地図が初めて完成|Science誌の493検体解析でわかった人のがんとの類似

も参考になります。

遺伝性の病気や心臓・眼の異常に気づくきっかけ

マルファン症候群そのものは極めてまれでも、今回の2匹のように「体つき」「眼」「心臓・血管」の異常が重なって見つかることは、ほかの病気でも起こりえます。家庭で気づけるきっかけと、受診の目安を整理しておきます。

動物病院で相談したい変化

  • 同じ月齢のきょうだい猫や一般的な子猫と比べて、成長の様子や体つきに気になる点がある
  • 黒目(瞳)の見え方が左右で違う、瞳の奥が白っぽく見える、目を痛がる・しょぼつかせる
  • 家具や壁にぶつかる、段差を踏み外すなど、見えにくそうな様子がある
  • 寝ているときの呼吸が以前より速い、呼吸が苦しそう
  • 遊んだあとに疲れやすくなった、元気が落ちた
  • 健康診断で心雑音や不整脈を指摘されたことがある

眼の異常は、飼い主が見た目だけで原因を判断することはできません。水晶体の位置や眼圧の異常は、動物病院での検査で確かめるものです。目やにや涙やけなど日常的な目の変化の見分け方は

にまとめています。

心臓や血管の異常も、外から見て分かるものではありません。家庭でできる確かな記録は、寝ているときの呼吸数を数えることです。測り方は

で、猫でもっとも多い心臓病である肥大型心筋症のサインは

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猫の肥大型心筋症(HCM)の見つけ方と最新の治療|安静時呼吸数で気づく・新薬の現在地

で詳しく扱っています。

注意

口を開けて呼吸している、ぐったりして動かない、急に後ろ足が立たなくなった、急に目が見えていないように見える、目を強く痛がるといった変化は、様子を見ずにすぐ動物病院に連絡してください。夜間や休日でも、救急対応の病院に相談することをためらわないでください。
保護した子猫が、きょうだいよりひょろっと手足が長くて、ニュースを見て一瞬どきっとしました。でも記事を読むと、体つきだけで決まる話ではないんですね。次のワクチンのときに、目と心臓の音も一緒に見てもらうようお願いしてみます。

子猫を迎えたら、健康診断で伝えておきたいこと

今回の2匹も、子猫のころの「手足が長い」という気づきが出発点でした。子猫を迎えたら、ワクチンの時期に合わせて健康診断を受け、気になっていることは小さなことでも伝えておくと安心です。

  1. 1

    気になる体つきや動きをメモしておく

    きょうだいと比べて成長の様子が違う、歩き方がぎこちない、目の見え方が気になるなど、受診のときに忘れないよう書き出しておきます。
  2. 2

    写真や動画を残しておく

    成長の記録として定期的に写真を撮っておくと、体つきの変化を獣医師に見せやすくなります。
  3. 3

    聴診と目の診察の結果を聞いておく

    健康診断で心雑音の有無や目の状態について説明があれば、記録しておきます。気になる所見があれば、追加の検査や専門の病院への紹介について相談します。
  4. 4

    迎えた経緯や親猫・きょうだいの情報を伝える

    ブリーダーや譲渡元から親猫やきょうだいの健康情報を聞けている場合は、それも伝えておきます。

子猫の健康診断とワクチンの流れは

で詳しく扱っています。

うちの猫は手足が長めです。マルファン症候群を心配したほうがよいですか。
手足の長さだけで心配する必要はありません。今回報告された2匹は、長い四肢に加えて両眼の水晶体脱臼と大動脈基部の拡張という検査所見がそろっていました。また、2匹が持っていた変異は1,000匹を超える猫の遺伝子データには見つかっていません。目や呼吸、元気さなどで気になる点があれば、動物病院で相談してください。
猫のマルファン症候群はどのくらいの割合で起きるのですか。
分かっていません。今回の論文は兄弟2匹の症例報告で、猫での有病率を調べた研究ではありません。人ではおよそ4,000人から5,000人に1人とされていますが、これを猫にあてはめることはできません。
特定の品種に多いのですか。
今回の資料からは分かりません。論文の要旨では、2匹はrandom-bred(特定の品種として繁殖されていない猫)の同腹の兄弟と記載されています。品種との関係について述べた記載は確認できませんでした。
治療法はありますか。
猫での治療方針は、今回の発表と論文の要旨には示されておらず、未確認です。人では大動脈の状態に応じて薬や手術による治療が行われますが、人の治療をそのまま猫にあてはめることはできません。眼や心臓の異常が見つかった場合の治療は、それぞれの状態に応じて獣医師が判断します。
この変異を調べる遺伝子検査は受けられますか。
一般に受けられる検査かどうかは、今回の発表からは分かりません。遺伝子検査について検討したい場合は、かかりつけの獣医師に相談してください。

まとめ

2026年9月、コーネル大学などの研究チームが、兄弟猫GaryとShaggyを猫で初めて分子レベルで確認されたマルファン症候群としてScientific Reportsに報告しました。2匹には子猫期からの長い手足、両眼の水晶体脱臼、大動脈基部の拡張が見られ、原因はFBN1遺伝子の変異でした。人では変異が1つでも発症しうるのに対し、2匹は変異を2つ持っていましたが、遺伝子の働きが一部残っていたため成猫まで生きられたと説明されています。

この変異は1,000匹を超える猫のデータには見つかっておらず、有病率や品種との関係、治療法は今回の資料では示されていません。一般の飼い主が過度に心配する話ではありません。ただ、「体つき」「眼」「心臓・呼吸」の変化に気づいたら記録して受診する、という基本は、どんな病気の早期発見にも役立ちます。気になることがあれば、次の健康診断を待たずにかかりつけの獣医師に相談してください。

出典・参考

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