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猫の遺伝性疾患と遺伝子検査|多発性嚢胞腎・骨軟骨異形成の最新研究でわかったこと

対象の目安: 全ライフステージ

ミオ食事・健康担当
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猫の遺伝性疾患と遺伝子検査|多発性嚢胞腎・骨軟骨異形成の最新研究でわかったこと

「うちの子は純血種だけれど、生まれつきの病気は大丈夫だろうか」。そんな心配を、口に出さないまま抱えている方は少なくないと思います。人と同じように、猫にも生まれ持った遺伝子が関わる病気があります。ただ、2026年に国内で相次いで公表された大規模な解析からは、少し希望の持てる変化も見えてきました。遺伝子検査が広まったことで、病気に関わる遺伝子変異を持つ猫の割合が実際に減ってきている、というデータです。この記事では、その研究をきっかけに、猫の遺伝性疾患と遺伝子検査を飼い主目線で整理します。

2026年に相次いだ国内の大規模解析

まず、話題の出発点になった発表を見ていきます。いずれも麻布大学とアニコムグループ各社の共同研究で、日本国内で暮らす猫の遺伝子検査データやペット保険データを大規模に解析したものです。日本で実際に飼われている猫の集団で何が起きているかを数字で示した点に意味があります。

多発性嚢胞腎に関わるPKD1変異は14猫種全体で42.6%減少

2026年7月7日に公表された研究では、14猫種61,968頭の遺伝子検査データを使って、多発性嚢胞腎(PKD)の主な原因とされるPKD1遺伝子変異の頻度が調べられました。子猫への本格的な遺伝子検査が普及する前後を比べたところ、14猫種全体でこの変異を持つ猫の割合が42.6%減少していたと報告されています。品種別では、ペルシャで38.8%の減少、スコティッシュ・フォールドで49.5%の減少(2019年の3.2%から2022年には1.6%)が確認され、ラガマフィンでも有意な低下がみられました。

同時に注目されたのが、近親交配が増えていなかった点です。変異を持つ個体を繁殖から外していくと血縁が濃くなるのではないか、という懸念がありました。しかしスコティッシュ・フォールドとペルシャの解析では、2019年と2022年の比較で集団全体の遺伝的構造に大きな変化はなく、近親交配の程度を示す指標にも有意な上昇は確認されなかったとされています。発表では、遺伝的多様性にも配慮しながら繁殖計画に検査を活用することで、疾患リスクの低減と動物福祉の向上を両立できる可能性が示された、とまとめられています。

一方で、ブリティッシュ・ショートヘア、ミヌエット、マンチカンなど一部の品種では減少が確認されず、ラグドール、メイン・クーン、ベンガル、ロシアンブルーではこの研究データ中に従来型のPKD1変異を持つ猫が確認されなかったとも報告されています。品種によって状況はかなり違う、というのが実像のようです。

14猫種61,968頭のデータでPKD1変異を持つ猫の割合が全体で42.6%減少したこと、ペルシャ38.8%減・スコティッシュ・フォールド49.5%減(2019年3.2%から2022年1.6%)、近親交配の程度に有意な上昇がなかったこと、ブリティッシュ・ショートヘア・ミヌエット・マンチカンなど一部品種では減少が確認されなかったこと、PKD1変異は1コピー持つだけで発症する優性(顕性)遺伝でネコのPKD症例の大部分(約80%)がこの変異によるとされること、嚢胞性腎疾患が確認された猫の9頭中7頭(77.8%)がPKD1変異を持っていたことについて。麻布大学プレスリリース(2026年7月7日、『BMC Genomics』掲載)より。

骨軟骨異形成に関わるTRPV4変異は「重症リスクが高い型」が減少

2026年6月8日の発表は、スコティッシュ・フォールドの折れ耳と骨軟骨異形成症の両方に関わることが報告されているTRPV4遺伝子c.1024G>T変異についてのものです。2017年から2024年に生まれた14品種8,610頭を解析した結果、スコティッシュ・フォールドでこの変異を2つ持つホモ接合個体の割合が、2017年の14.2%から2024年には1.9%へと統計的に有意に低下していました。変異を1つ持つヘテロ接合個体は39.3%から51.5%、野生型は46.4%から46.6%で、こちらは有意な経年変化は認められなかったとされています。

ホモ接合個体では重度の臨床症状が認められることが多く、動物福祉の観点からホモ接合個体が生まれる可能性のある交配を避けることが重要とされてきました。今回の減少はTRPV4変異を対象とした検査が使えるようになった時期と一致しており、検査の普及や繁殖管理への活用が影響している可能性がある、と発表では述べられています。また、この変異はアメリカン・カール、ノルウェージャン・フォレスト・キャット、マンチカン、ミヌエットでも検出されており、交雑の歴史が疑われる品種では検査の実施を検討することが重要と示唆されています。

14品種8,610頭の解析でスコティッシュ・フォールドのTRPV4 c.1024G>T変異ホモ接合個体が14.2%から1.9%へ有意に低下したこと、ヘテロ接合と野生型には有意な変化がなかったこと、ホモ接合個体では重度の臨床症状が多く該当する交配を避けることが重要とされること、他品種でも変異が検出されたことについて。麻布大学プレスリリース(2026年6月8日、『Animal Genetics』掲載)より。

メモ

ホモ接合とは同じ変異を2つ(両親の双方から)受け継いだ状態、ヘテロ接合とは1つだけ持つ状態です。同じ変異でも、いくつ持っているかで体への影響の出方が変わることがあります。TRPV4変異の場合、ヘテロ接合では基本的に折れ耳の形質が現れるとされますが(後述のとおり例外も報告されています)、臨床症状の程度には個体差があるとされています。

猫の遺伝性疾患を、代表的な3つで理解する

そもそもどんな病気なのかを押さえておきましょう。いずれも「その猫種だから必ず発症する」という話ではありません。

多発性嚢胞腎(PKD) — 腎臓に嚢胞が増えていく

岩手大学附属動物病院の解説によると、多発性嚢胞腎はゆっくりと進行する不可逆的な遺伝性の腎臓の病気で、ペルシャやその血縁にあたる猫に多くみられます。近年はアメリカン・ショートヘアやスコティッシュ・フォールド、雑種でも存在することが分かっており、日本国内では罹患率の調査が始まったばかりとしつつ、猫1000頭に1頭の割合で持つと推測されています。腎臓に小さな嚢胞(液体の入った袋)が数を増やしながら大きくなり、正常な腎組織に取って代わることで腎機能が低下していきます。

臨床症状は慢性腎不全の猫と似ていて、疲れやすい、食欲の低下、多飲多尿、体重減少、ときどきの嘔吐などが挙げられています。多発性嚢胞腎によって腎不全となった猫では、たいてい3歳から10歳の間に症状が見つかるとされ、進行がゆるやかなため症状を示さない猫もいるといいます。

多発性嚢胞腎がゆっくり進行する不可逆的な遺伝性の腎疾患であること、ペルシャや血縁品種のほか雑種でも確認されること、国内では1000頭に1頭と推測されること、多発性嚢胞腎によって腎不全となった猫では3歳から10歳の間に症状が見つかることが多いこと、超音波検査は10か月齢以降で約95%の確率で正確に診断でき、遺伝子診断は頬粘膜や血液で何歳でも受けられること(離乳前の子猫では血液を用いるとされること)について。岩手大学附属動物病院より。

前述の2026年7月7日の麻布大学らの解析では、保険データと遺伝子検査データを紐づけた群(33,576頭)において、嚢胞性腎疾患が確認された猫の9頭中7頭(77.8%)が従来から知られているPKD1変異を持っていた一方、その変異を持たないのに嚢胞性腎疾患が見つかった猫もいたと報告されています。また、これとは別に、10年以上継続した保険契約データを持つ12,589頭のうち、PKDまたは腎嚢胞に関連する診断が確認されたのは21頭で、初めて請求が確認された年齢の中央値は5歳でした。

腎臓の病気そのものの管理や早期発見については、

で慢性腎臓病の視点からまとめています。

骨軟骨異形成症 — 折れ耳と同じ遺伝子が関わる

骨軟骨異形成症は、軟骨や骨の発達に異常が生じる遺伝性の病気です。多くの場合は四肢に瘤のようなものが見られ、痛みや跛行(足を引きずる歩き方)の症状が出るかどうかは個体によってまちまちだとされています。

多くの場合は四肢に瘤のようなものが見られること、痛みや跛行の症状が出るかどうかはまちまちであることについて。アニコム損害保険「みんなのどうぶつ病気大百科 軟骨異形成症候群 <猫>」より。

麻布大学の解説によると、TRPV4遺伝子は細胞内外のカルシウムの流れを調整することで軟骨細胞が刺激に応答するしくみに関わり、猫では耳や関節などの軟骨の発達に関与しています。つまり、耳の形と関節の軟骨は同じ遺伝子でつながっているわけです。関節のトラブルは歩き方や動きの変化として現れることがあるため、痛みのサインを知っておくと役に立ちます。詳しくは

も参考にしてください。

肥大型心筋症(HCM) — 猫でもっとも多い心臓病

肥大型心筋症は、心筋が異常に厚くなることで心不全や血栓症、突然死を引き起こす重篤な病気で、猫でもっとも多い心臓病とされています。メイン・クーンやラグドール、スフィンクスといった一部の純血品種では、心筋の発達に関わる遺伝子の特定の変異を持つ場合に罹患リスクが高くなることが分かっています。

日本での研究では、メイン・クーンのみが持つと考えられていたMYBPC3 p.A31P変異を、日本で多く飼育されているスコティッシュ・フォールドとマンチカンも持っていることが明らかになりました。各品種およそ100頭を対象にした検査では、どちらの品種でも50頭に1頭以上の頻度で存在していたと報告されています。猫専門病院Tokyo Cat Specialistsの解説では、日本猫や他の品種でも発症することがあり、診断には超音波検査がもっとも有用で、初期は無症状か食欲不振・活動量の低下といった目立たない変化にとどまることが多いとされています。

HCMが猫でもっとも多い心臓病であること、メイン・クーン・ラグドール・スフィンクスで特徴的な変異が知られていたこと、MYBPC3 p.A31P変異がスコティッシュ・フォールドとマンチカンでも確認され両品種で50頭に1頭以上の頻度だったこと、HCMは主に心エコー図検査で診断され根本的な治療法は確立されていないことについて。アニコム損害保険ニュースリリース(日本獣医生命科学大学・麻布大学との共同研究)より。

肥大型心筋症が猫でもっともよく見られる心臓病であること、メイン・クーンやラグドールで発生率が高いが日本猫や他の猫種でもみられること、診断には超音波検査がもっとも有用性が高いこと、初期は無症状か食欲不振・活動量の低下といった一般的な症状にとどまること、遺伝子検査で変異があっても必ず発症するわけではなく変異がなくても発症することがあることについて。猫専門病院Tokyo Cat Specialists「猫の肥大型心筋症のアウトライン」より。

遺伝子検査でわかること・わからないこと

ここが、いちばん誤解されやすい部分です。遺伝子検査は「あらかじめ決められた特定の変異を、その猫が持っているかどうか」を調べる検査で、病気そのものを見ているわけではありません。

Tokyo Cat Specialistsの解説では、HCMの遺伝子検査について「この検査で遺伝子変異があったからといって必ず発症するわけでもなく、一方で変異がなくても発症する事はある」と明記されています。同じ変異を持つ兄弟猫でも、一方は発症し他方は発症しないことがある、という浸透率の問題です。一方、多発性嚢胞腎のPKD1変異のように、1コピー持つだけで発症する優性(顕性)遺伝とされ、猫のPKD症例の大部分(約80%)がこの変異によるとされるものもあります。病気ごとに変異と発症の結びつきの強さが違うため、ひとくくりにしないことが大切です。

調べ方分かること分からないこと
遺伝子検査検査項目に含まれる特定の変異を持つか(ホモ/ヘテロ/野生型)いま病気が起きているか、いつ発症するか、項目外の要因
超音波(腹部)検査腎臓に嚢胞があるか、腎臓の形や大きさの変化嚢胞の原因が遺伝性かどうか(確定には遺伝子診断が必要)
心エコー検査心筋の厚み、心房の広がり、血流の状態将来発症するかどうか
血液・尿検査腎機能の低下など全身の状態病気の原因が遺伝性かどうか

岩手大学附属動物病院の解説では、PKDの超音波検査は10か月齢以降なら約95%の確率で正確に診断できるとされ、遺伝子診断は月齢を問わず頬粘膜または血液で受けられるとされています(ただし離乳前の子猫では、母猫の遺伝子がミルクに混じるため、頬粘膜ではなく血液を用いるとされています)。遺伝子検査と画像検査は競合するものではなく、役割が違うと捉えるのが正確です。

注意

検査結果の解釈は専門的です。「変異あり」と出てもすぐに発症するとは限りませんし、「変異なし」でも定期健診をやめてよい理由にはなりません。結果だけを見て食事や薬を自己判断で変えることは避け、必ずかかりつけの獣医師に相談してください。気になる症状があるときは、検査より先に受診が優先です。

見た目だけでは分からないこともある

2026年6月1日に公表されたもう一つの研究は、外見で判断することの難しさを示すものでした。スコティッシュ・フォールド114頭を解析した結果、TRPV4変異のヘテロ接合体55頭のうち7頭(12.7%)で、子猫のときは折れ耳だったのに成長に伴って外見上は立ち耳様に変化する現象が確認されました。研究ではこうした個体を「隠れ折れ耳(cryptic fold)」と呼んでいます。正面写真が得られた14頭の解析では耳介サイズが野生型の立ち耳群より有意に小さいという結果も出ていますが、その差は大きくなく、外見のみで正確に判別することは難しいとされています。

スコティッシュ・フォールド114頭の解析でTRPV4変異ヘテロ接合体55頭のうち7頭(12.7%)が成長に伴い外見上は立ち耳様に変化したこと(隠れ折れ耳)、耳介が野生型より有意に小さかったが外見のみでの判別は難しいこと、遺伝子検査で確認することが重要とされることについて。麻布大学プレスリリース(2026年6月1日、『Animal Genetics』掲載)より。

「うちの子は立ち耳だから関係ない」と決めつけられないケースがある、ということです。過度に心配する必要はありませんが、歩き方や関節の様子に気になる変化があれば、外見の印象で判断せず動物病院で診てもらう姿勢が役に立ちます。

猫を迎えるときに確認したいこと

動物愛護管理法では、動物を販売する第一種動物取扱業者が、購入者に対して現在の状態を直接見せたうえで、適正飼養に必要な18項目を対面で説明することが求められています。その18項目には「親及び同腹子に係る遺伝性疾患の発生状況(哺乳類に属する動物に限り、かつ、関係者からの聴取り等によっても知ることが困難であるものを除く。)」が含まれています。聞きにくいことではなく説明されるべき項目なのだと知っておくと、質問がしやすくなります。

  1. 1

    親・同腹子の遺伝性疾患の発生状況を聞く

    法律上の説明項目です。「調べていない」という回答であっても、その事実自体が判断材料になります。
  2. 2

    遺伝子検査を受けているかを確認する

    親猫・子猫のどちらで検査したのか、どの項目(PKD1、TRPV4、MYBPC3など)を調べたのか、結果の書面はあるかを聞きます。検査項目に入っていない病気は分かりません。
  3. 3

    病歴・ワクチン接種状況も一緒に確認する

    これも18項目です。生年月日(推定含む)や繁殖を行った者の氏名・登録番号なども説明対象です。
  4. 4

    迎えたあと早めに健康診断を受ける

    書面の情報と実際の体の状態は別です。落ち着いたら健診を受け、その猫種で気をつけたい点をかかりつけに聞いておきます。

動物の販売時に対面説明が必要な18項目に「親及び同腹子に係る遺伝性疾患の発生状況」が含まれること、病歴・ワクチン接種状況、生年月日(推定含む)、繁殖を行った者の氏名・登録番号なども説明項目であることについて。環境省「動物の愛護と適切な管理」より。

子猫を迎えるときの準備全般は

にまとめています。

迎えるとき・迎えたあとに確認したいこと

  • 親や同腹子に遺伝性疾患の発生があったかを対面で説明してもらった
  • 遺伝子検査の有無と、調べた項目・結果の書面を確認した
  • 検査項目に含まれない病気があることを理解している
  • 迎えたあと早めに健康診断を受ける予定を立てた
  • 気になる症状が出たときの相談先(かかりつけ)を決めてある

すでに一緒に暮らしている猫にできること

すでに家族になっている猫の場合、遺伝子は変えられません。それでもできることはあります。

一つは、定期健診を続けることです。多発性嚢胞腎によって腎不全となった猫で症状が見つかるのは3歳から10歳の間が多く、肥大型心筋症も初期は目立たない変化にとどまります。年1回、シニア期には年2回といった健診のリズムを保つことが、いちばん現実的な備えです。腎臓であれば血液・尿検査と超音波、心臓であれば心エコーがそれぞれの役割を持ちます。

もう一つは、日々の変化に気づくことです。水を飲む量や尿の量が増えた、体重が少しずつ減っている、食欲が落ちた、以前より疲れやすい、呼吸が速い、高い場所に上がらなくなった。こうした変化は、遺伝性かどうかにかかわらず受診のきっかけになります。慌てて検査を探すより、「いつもと違う」を記録して動物病院に伝えるほうが役に立つ場面が多いはずです。

遺伝子検査を受けること自体も選択肢の一つですが、結果の意味を一人で抱えると不安だけが残ることがあります。受ける前に「何を知りたくて受けるのか」「結果が出たらどうするのか」をかかりつけと話しておくと、検査が前向きな道具になります。

ヒント

検査の結果は繁殖の判断には大きな意味を持ちますが、すでに避妊・去勢をして家庭で暮らす猫にとっては「今後どこを重点的に見ていくか」の手がかりという位置づけになります。結果に一喜一憂するより、健診の内容や頻度の相談に使うほうが実用的です。

数字の受け止め方 — 誰かを責めるためのデータではない

こうした研究を読むと、「この猫種は危ない」「繁殖する側が悪い」という結論に飛びつきたくなるかもしれません。けれど今回の一連の発表が示しているのは、むしろ逆の流れです。遺伝子検査が使えるようになり、それを繁殖の判断に取り入れる動きが広がった時期と重なるかたちで、実際に変異を持つ猫の割合が下がってきた。しかも、この期間に近親交配の程度の明確な増加は認められなかったと報告されています。同時に、減少が確認されなかった品種や、従来型の変異では説明できない症例もあり、分かっていないことも多く残されています。

飼い主にできるのは誰かを責めることではなく、迎えるときに必要な情報を確認し、迎えたあとは健診と日々の観察を続けることです。それが結果として、次の世代の猫たちの健康にもつながっていきます。

スコティッシュ・フォールドの子を迎えるとき、正直「聞いたら失礼かな」と思って遺伝性疾患のことを聞けませんでした。あとから説明義務の項目に入っていると知って、次はちゃんと聞こうと思いました。今は年1回の健診で関節も見てもらっています。
飼い主

よくある質問

遺伝子検査を受ければ、病気になるかどうか分かりますか
分かりません。遺伝子検査は検査項目に含まれる特定の変異を持っているかを調べるもので、発症の有無や時期を確定するものではありません。参照した猫専門病院の解説でも、変異があっても必ず発症するわけではなく、変異がなくても発症することがあると説明されています。多発性嚢胞腎のPKD1変異のように発症との結びつきが強いものもありますが、病気ごとに事情が異なります。判断は必ずかかりつけの獣医師と相談してください。
雑種(ミックス)なら遺伝性疾患は関係ありませんか
そうとは限りません。岩手大学附属動物病院の解説では、多発性嚢胞腎はペルシャやその血縁の猫に多いものの、アメリカン・ショートヘアやスコティッシュ・フォールド、雑種でも存在することが分かっているとされています。純血種かどうかにかかわらず、定期健診と日々の観察を続けることが基本です。
検査で『変異あり』と言われました。どうすればよいですか
まずかかりつけの動物病院に結果を持って相談してください。変異があることと発症することは同じではありません。病気の種類に応じて、どの検査をどのくらいの頻度で行うか、どんなサインに注意するかを一緒に決めていくのが現実的です。自己判断で食事や薬を変えることは避けてください。
折れ耳ではないスコティッシュ・フォールドなら心配はいりませんか
外見だけでは判断できない場合があります。麻布大学の研究では、TRPV4変異のヘテロ接合体55頭のうち7頭(12.7%)で、子猫のときは折れ耳でも成長に伴い外見上は立ち耳様に変化する現象が確認されました。過度に心配する必要はありませんが、歩き方や関節に気になる変化があれば動物病院で相談してください。

まとめ

2026年に公表された国内の大規模解析は、猫の遺伝性疾患をめぐる状況が確かに動いていることを示しました。多発性嚢胞腎に関わるPKD1変異は14猫種全体で42.6%減少し、骨軟骨異形成に関わるTRPV4変異のホモ接合個体はスコティッシュ・フォールドで14.2%から1.9%へ低下。しかも、変異頻度の低下が確認されたスコティッシュ・フォールドとペルシャでは、近親交配の程度に明確な増加は認められなかったと報告されています。

一方で、遺伝子検査は万能ではありません。調べられるのは特定の変異だけで、変異があっても発症しないことがあり、なくても発症することがあります。超音波検査や心エコーといった臨床の検査と役割を分け合うものだと理解しておくことが、過度な安心にも過度な不安にも傾かないコツです。

これから猫を迎える方は、親や同腹子の遺伝性疾患の発生状況が対面説明の18項目に含まれていることを覚えておいてください。すでに一緒に暮らしている方は、定期健診と「いつもと違う」への気づきが、いちばん確かな備えになります。気になることがあれば、検索の海に潜る前に、かかりつけの動物病院に話してみてください。

出典・参考

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