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猫との引っ越し完全ガイド|1か月前の準備から当日の脱走対策、新居での慣らし方まで

対象の目安: 全ライフステージ

ソラ編集長 / 住環境・多頭飼い担当
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猫との引っ越し完全ガイド|1か月前の準備から当日の脱走対策、新居での慣らし方まで

人にとっての引っ越しは「住所が変わること」ですが、猫にとっては「世界がまるごと入れ替わること」です。長い時間をかけて自分のにおいを行き渡らせ、安全だと確認してきた縄張りが、ある日突然なくなってしまう。だから猫は引っ越しで大きなストレスを受けますし、当日は脱走という命に関わる事故も起こりやすくなります。この記事では、1か月前の準備から当日の動線、移動手段ごとの注意、新居での慣らし方、引っ越し後の不調と受診の目安、そして忘れやすいマイクロチップの住所変更までを時系列でまとめます。体調の判断や投薬は自己判断せず、必ず動物病院に相談してください。

なぜ猫にとって引っ越しは大ごとなのか

International Cat Care(英国の猫専門団体)は、猫は縄張り性(territorial)の動物であり、そのために自分の住環境と強い結びつきを持つようになる、だから引っ越しは猫にとって非常にストレスの大きい出来事になりうる、と説明しています。そのうえで、事前に計画を立てておくことが移行をできるだけスムーズにし、猫が不安を感じるリスクを減らすとしています。

猫が縄張り性の動物で住環境と強く結びつくこと、引っ越しが大きなストレスになりうること、事前の計画が不安のリスクを減らすことについて。International Cat Care「Moving house with your cat」より。

猫が壁の角や家具のふち、飼い主の脚に頬や顎をこすりつけるのは、単なる甘えではありません。頬まわりから出るにおい(フェイシャルフェロモンと呼ばれます)を付けて、「ここは知っている場所、安全な場所」という印を上書きし続けている行動だと考えられています。猫にとっての家とは、間取りや家具ではなく、この「においの地図」そのものです。

引っ越しは、その地図を一晩で消してしまいます。しかも新居には、前の住人や施工のにおい、聞いたことのない生活音、見たことのない景色があります。猫が最初の数日、押し入れやベッド下から出てこないのは、臆病だからではなく、未知の縄張りで身を守るというきわめて合理的な行動です。ここを理解しておくと、「早く慣れさせよう」と引っ張り出す対応がいかに逆効果かが見えてきます。

ヒント

対策の基本は、においの連続性を残すことです。洗っていない寝床やブランケット、使い込んだ爪とぎ、いつもの食器は、引っ越しを機に新調したくなりますが、少なくとも新居に慣れるまでは古いままを使いましょう。「きれいな新品」は、猫にとっては「知らないもの」でしかありません。

1か月前まで — 健康診断・キャリー慣らし・新居の下見

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    健康診断を受け、既往歴と検査データをもらう

    引っ越し後は、しばらく通院しにくくなります。動きやすいうちに健康診断を済ませ、持病がある場合は移動の可否や薬の残量を相談しておきましょう。遠方へ移る場合は、これまでの検査結果やワクチン接種歴、処方内容の写しをもらっておくと、転居先の動物病院での引き継ぎがスムーズです。診療情報の提供方法は病院によって異なるので、早めに申し出ておくと安心です。
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    キャリーを「怖い箱」から「安全な箱」に変える

    移動でいちばん効くのがこれです。キャリーを普段から部屋に出しっぱなしにし、扉を開けたまま毛布を敷いて、中でおやつを食べられるようにします。病院に行くときだけ出てくる箱だと、当日に入れるだけでひと苦労になります。慣らし方の詳細は

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    新居を下見して危険箇所をチェックする

    可能なら内見時か引き渡し時に、猫目線で見ておきます。網戸の建て付けとロックの有無、ベランダや窓のすき間、洗濯機や食洗機の裏の配管スペース、システムキッチンの引き出し裏、床下収納、換気口、階段の吹き抜けなど、猫が入り込める・落ちられる場所は事前に把握しておきましょう。慣れない家では、猫は思いがけない隙間に潜り込みます。
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    賃貸ならペット飼育の条件を必ず書面で確認する

    「ペット可」でも、頭数の上限、犬のみ可、共用部は必ずキャリーに入れる、敷金の追加、退去時の原状回復の負担範囲などの条件が付いていることがよくあります。口頭の確認だけで進めず、賃貸借契約書とペット飼育に関する特約・細則の条文を自分の目で読み、あいまいな点は入居前に管理会社へ書面で確認しておきましょう。あとから「聞いていない」となると、退去費用や最悪の場合は契約解除の話に発展します。
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    引っ越し業者に猫がいることを伝える

    見積もり時に、猫がいること、当日は1部屋に隔離すること、その部屋は最後に運び出してほしいことを伝えておきます。ペットの輸送そのものを引き受けるかどうかは業者によって扱いが違うので、任せる予定があるならこの時点で確認しておきましょう。

1週間前 — 荷造りは「猫のいない部屋」から

段ボールが積み上がっていく光景そのものが、猫にはストレスになります。とはいえ、荷造りを直前にまとめてやるほうがダメージは大きくなります。おすすめは、1週間から2週間かけて「猫がふだん過ごさない部屋」から少しずつ詰めていくやり方です。変化を小刻みにすると、猫は毎日少しずつ確認しながら受け入れていけます。

そのうえで、いつものごはん皿、水入れ、トイレ、寝床、爪とぎ、お気に入りのおもちゃは、最後の最後まで残します。この6つは猫の生活インフラで、先に片づけてしまうと猫の1日が成立しなくなります。荷造りに使うガムテープの音や、ふいに倒れる箱に驚く子もいるので、猫が寝ている時間帯の作業は避けましょう。

1週間前までにやっておくこと

  • 猫がいない部屋から順に荷造りを始めた
  • 食器・水入れ・トイレ・寝床・爪とぎ・おもちゃは最後まで残すと決めた
  • 当日「猫の部屋」にする1部屋を決めた(できれば新居でも同じ役割の部屋)
  • フード・猫砂・常備薬を、引っ越し後1週間分は手元に確保した
  • 動物病院の診察券・ワクチン証明・検査データをまとめた
  • 預け先に頼むなら予約を済ませた(ワクチン証明の要否も確認)

フードや猫砂の銘柄は、引っ越しの前後で変えないのが鉄則です。環境が変わるうえに食事まで変わると、食欲不振や下痢の原因が切り分けられなくなります。買い置きは1週間分ほど手元に残し、トラック便に載せないでおきましょう。

前日と当日 — 「猫の部屋」を作る

International Cat Careは、引っ越し当日の進め方として、運送車が到着する前に猫を1部屋(寝室が適していることが多い)に閉じ込め、ドアと窓を閉めたままにして脱走を防ぐこと、その部屋にキャリー・ベッド・ブランケット・食器・水入れ・爪とぎ・トイレといった使い慣れたものを置いて安心材料にすること、そしてドアに張り紙をして作業スタッフや家族に「この扉は閉めたまま」と伝えることを勧めています。

当日は猫を1部屋に隔離しドアと窓を閉めること、使い慣れた物品を置くこと、ドアに張り紙をすること、他の部屋が空になってから最後にその部屋を運び出すことについて。同上。

そして、他の部屋がすべて空になってから、最後にこの部屋の荷物を運び出します。最後の家具を運び出す前に猫をキャリーへ入れ、薄手のブランケットでキャリーを覆って車内(後部座席や後席の足元)に安全に固定します。運送トラックの荷台や車のトランクで運ぶことは避けるように、とも明記されています。

つまり「猫は最初に運ぶのか、最後に運ぶのか」の答えは、旧居では最後、新居では最初です。旧居では最後まで安全な部屋を確保し、新居では猫の部屋の荷物を最初に降ろして環境を整えてから猫を入れる。この順序が、猫が無防備な状態で放り出される時間をいちばん短くします。

注意

引っ越し当日にもっとも起きやすい事故は脱走です。作業中は玄関も窓も開けっぱなしになり、人の出入りが続きます。パニックになった猫は、ふだんは絶対に通らない場所からでも出ていきます。隔離部屋のドアには「猫がいます。開けないでください」と大きく張り紙をし、家族の誰か1人を「扉係」に決めて、開閉のたびに猫の位置を確認してください。ハーネスをつけているから大丈夫、という考え方は危険です。パニック時の猫はハーネスからでも抜けます。

隔離部屋を確保できない間取りや、作業の動線上どうしても人が入る場合は、猫を安全な場所へ一時避難させる選択肢があります。かかりつけの動物病院に日中だけ預かってもらう、ペットホテルを利用する、信頼できる友人・親族の家に預ける、といった方法です。とくに音や人に敏感な子、脱走歴のある子は、最初から預けてしまったほうが猫にも人にも負担が少なくなります。預け先の選び方や比較は

にまとめています。

浴室やトイレなど、荷物がなく窓を閉め切れる小さな空間を「当日の避難所」にする方法も現実的です。その場合は必ず猫トイレと水を一緒に入れ、洗濯機の裏や浴槽のふたなど潜り込める場所をふさぎ、浴槽の残り湯は必ず抜いておきましょう。ドアは「外から開けない」ことが目的なので、鍵のない浴室では養生テープと張り紙で開けられないようにし、作業スタッフにも口頭で伝えておきます。ただし閉め切った浴室は短時間で高温多湿になります。換気扇や空調は止めず、暑い季節は浴室を避けてエアコンの効く部屋を使い、いずれにしても数時間放置せずこまめに様子を見てください。

移動手段別の注意

手段押さえたい点
自家用車キャリーは後席の足元かシートベルトで固定する。トランクや助手席の上に置かない。エアコンで車内温度を保ち、休憩でも猫を車に残さない。長距離では2〜3時間ごとに様子を確認し、安全な屋内でのみキャリーを開ける
新幹線・電車手回り品きっぷが必要。全身が入るケースに入れ、顔を出さない状態にする
飛行機猫は貨物室での預かりが基本。暗く、騒音や温度変化があり、健康状態によっては預かりを断られることもある
業者・ペット輸送ペットの輸送を扱うかは業者ごとに異なる。動物の取り扱いに関する登録の有無や、当日の温度管理・休憩の方針を事前に確認する

自家用車での移動は、途中で止められる自由度が最大の利点です。ただし夏場は、エアコンを切った車内の温度が短時間で上がります。International Cat Careも、暑い日の移動では車内の換気をよくし、休憩で車を離れるときに猫を暑い車内に残さないよう注意を促しています。また、長距離なら途中で水やトイレを使う機会を作ってもよいが、多くの猫は興味を示さないこと、もし止まるなら猫が脱走できない安全な場所を選ぶことも記されています。

新幹線や在来線については、JR東日本の案内で、小動物は全身が入るペット用ケース・リュックなどに入れ、顔を出さないようにする必要があり、ケースはタテ・ヨコ・高さの合計が120cm以内、ケースと動物を合わせた重さが10kg以内、手回り品料金は1個につき290円と説明されています。きっぷは駅の有人改札で購入します。

手回り品きっぷの料金290円、ケースのサイズ(合計120cm以内)と重さ(動物と合わせて10kg以内)、顔を出さないこと、有人改札での購入について。JR東日本 JREメディアより。

ケースの形にも条件があります。JR東海の手回り品の案内では、ペットは全身が入るケースに入れること、抱いたままやバッグに入れた状態では利用できないこと、そして布状で形態が固定しないもの(ドッグスリング等)については全身が入っていても利用できないことが明記されています。取り扱いは鉄道会社ごとに定められているので、乗車する会社の案内を事前に確認しておきましょう。

ペットは全身が入るケースに入れること、抱いたままやバッグに入れた状態では利用できないこと、布状で形態が固定しないもの(ドッグスリング等)は全身が入っていても利用できないことについて。JR東海「手回り品」より。

飛行機は、猫にとっていちばん負荷の大きい移動です。ANAの国内線の案内では、哺乳類は預け入れのみで機内持ち込みはできず、貨物室内は飛行中に照明が消えて暗室となること、エンジン音や機械操作音・風切り音などが聞こえること、空調で管理はされているが外気温の影響を受け、特に夏場は高温になることも考えられると説明されています。さらに、日常生活とは大きく異なる輸送環境がペットの健康状態にさまざまな影響を与え、衰弱もしくは死傷することがあるとも明記されています。預かりの条件として、生後4か月未満でないこと、妊娠していないこと、心臓疾患・呼吸器疾患がないこと、鎮静剤を使用していないことが挙げられており、食欲がなく元気がない、呼吸が荒い、過度に緊張して震えているといった状態では、預かりを断られる可能性があるとされています。

哺乳類は預け入れのみで機内持ち込み不可であること、貨物室の照明・騒音・温度に関する記載、輸送環境が健康に影響し衰弱もしくは死傷することがあるという記載、預かり条件(生後4か月未満不可・妊娠中不可・心臓疾患/呼吸器疾患不可・鎮静剤使用不可)、5月1日から10月31日の夏季期間に短頭犬種の預かりを中止していることについて。ANA「ペットをお連れのお客様(国内線)」より。

なお同社は、毎年5月1日から10月31日の夏季期間について、高温に弱く熱中症や呼吸困難を起こす恐れがあるとして「短頭犬種」の預かりを中止しています。これは犬種を対象とした制限で、猫の品種は挙げられていません。ただしペルシャやエキゾチックショートヘアのような鼻の短い猫も呼吸の負担がかかりやすいと一般に言われており、扱いは航空会社や時期によって変わります。搭乗を検討する段階で、必ず利用する航空会社に猫の品種と健康状態を伝えて確認し、あわせてかかりつけの獣医師にも相談してください。人用の酔い止めや睡眠導入剤、鎮静作用をうたうサプリメントを自己判断で与えることは絶対にやめましょう。猫に安全とは限らず、中毒を起こす成分もあります。

新居での慣らし方 — 1部屋から、段階的に

新居に着いたら、まず猫の部屋になる1部屋を先に整えます。International Cat Careは、寝室の家具を最初に運び入れられるよう積み込み、猫を入れる前に(できれば数時間前に)合成フェロモンの拡散器を床に近いコンセントに設置しておくこと、部屋が整ってからベッド・ブランケット・食器・水入れ・爪とぎ・トイレとともに猫を入れてドアを閉めること、可能なら家族の誰かがしばらく部屋に付き添うこと、そして食べ物を出してみることを勧めています。

新居では猫の部屋を先に整えること、合成フェロモン拡散器を事前に設置すること、使い慣れた物品とともに猫を入れること、家族が付き添うこと、ストレスのサインがあるときは1部屋ずつ探索させること、新しい環境に慣れるまで少なくとも2〜3週間は屋外に出さないこと、完全室内飼いの猫には特別な配慮が必要で慣れるまで時間がかかることがあるが使い慣れた家具が助けになること、少量頻回の食事と以前のルーティンの維持について。同上。

引っ越し作業が完了したら、猫は家のほかの場所を調べ始められます。ただしストレスのサインが見えるときは、探索を1部屋ずつに区切ることが推奨されています。また、新しい環境に慣れるまで少なくとも2〜3週間は猫を屋外に出さないことも勧められています。これは屋外に出る飼い方が一般的な英国での推奨なので、完全室内飼いが基本の日本では「引っ越し後2〜3週間はまだ環境に慣れきっていない不安定な時期」という目安として受け取っておくとよいでしょう。家の中の行動範囲を2〜3週間1部屋に制限する、という意味ではありません。同団体は、完全室内飼いの猫については新しい環境が不安の種になりやすいため特別な配慮が必要で、慣れるまでもう少し時間がかかることもあるが、使い慣れた家具があれば助けになる、とも述べています。

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    ドアを閉めた1部屋からスタートする

    部屋の隅や家具の裏に、身を隠せる場所を必ず作ります。使い慣れた寝床、キャリー(扉を開けたまま)、段ボール箱のどれかがあると、猫は自分で安全地帯を選べます。隠れているのは正常な反応なので、無理に引っ張り出さないでください。
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    トイレと食事の場所を最初に決める

    猫は「排泄する場所がわからない」状態を強いストレスに感じます。到着当日のうちに、トイレは静かで行き止まりにならない場所へ、食器と水はトイレから離れた場所へ置きます。前の家と同じ砂・同じトイレ・同じ食器をそのまま使うのが最重要です。
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    においを新居に移す

    前の家で使っていた爪とぎやブランケットをそのまま置き、猫が自分で頬をこすりつけるのを待ちます。清潔な布で猫の頬のあたりをやさしくなで、そのにおいのついた布を部屋の角や家具の脚に軽くこすりつける、という方法が紹介されることもあります。嫌がる子には無理にしません。
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    かまいすぎない

    心配のあまり、頻繁に声をかけたり抱き上げたりしたくなりますが、探索の邪魔になります。同じ部屋で静かに座って本を読む、といった「そばにいるだけ」の付き添いがちょうどよい距離感です。猫のほうから寄ってきたら、短く応じて離れます。
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    数日かけて範囲を広げる

    食欲が戻り、隠れ場所から出て歩き回るようになったら、隣の部屋のドアを開けてみます。一気に全開放せず、1部屋ずつ。広げた先にも隠れ場所と、できれば水を用意します。緊張が強く出たら、前の段階へ戻して構いません。
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    生活のリズムはできるだけ変えない

    食事の時間、遊びの時間、就寝時間を旧居と同じに保ちます。1日10分でも猫じゃらしで集中して遊ぶ時間を作ると、緊張がほぐれて食欲も戻りやすくなります。食事は少量を何回かに分けて出すやり方が勧められています。

新居では、脱走対策を「入居初日に」終わらせておくのが理想です。慣れない家では猫の行動が読めず、玄関や窓の位置関係も家族が把握しきれていません。網戸ロック、玄関前の柵、ベランダのすき間ふさぎなど、具体的な手当ては

にまとめています。

1匹目のときは、着いてすぐ家じゅうを見せたほうが早く慣れると思って全部屋を開けてしまい、洗面台の下の配管スペースに入り込んで丸2日出てきませんでした。2匹目の引っ越しでは寝室だけを先に整えて、古い爪とぎとトイレをそのまま置いたところ、その日の夜にはごはんを食べて、3日目には自分から廊下に出てきました。順番だけでこんなに違うのかと驚きました。

引っ越し後に出やすい不調と、受診の目安

環境の変化による一時的な変化と、動物病院に行くべき状態は分けて考える必要があります。目安として整理します。

出やすい変化様子対応の目安
食べないごはんを残す、まったく口をつけない24時間以上まったく食べないなら受診を検討。子猫やシニア、持病がある子はもっと早く
尿が出ない何度もトイレに行くのに出ない、トイレで鳴く、陰部をしきりに舐める様子見をせず、その日のうちに受診。とくにオス猫は緊急
下痢・軟便便がゆるい、回数が増える成猫で元気と食欲があれば1〜2日様子を見る。子猫・シニア・持病のある猫や、嘔吐を伴う場合は早めに受診。血が混じる、繰り返す、ぐったりするなら時間帯を問わず受診
過剰グルーミング同じ場所を舐め続け、毛が薄くなる隠れ場所と遊びの時間を増やす。皮膚炎・寄生虫・痛みなど体の原因が隠れていることもあり、脱毛や皮膚の赤みが出たら受診
夜鳴き夜間に大きな声で鳴き続ける日中の遊びと就寝前の食事で調整。長引く、シニアで急に始まったなら受診
粗相・スプレートイレ以外で排泄する、立って壁に尿を吹きかけるトイレの数と場所を見直す。排尿トラブルが隠れていることもあるので長引くなら受診

食欲については、オダガワ動物病院の解説で、成猫は24時間以上食べない場合に注意が必要で、48時間以上食事をとらない状態はかなり危険とされています。生後2〜3か月の子猫は半日(12時間程度)食べないだけでも低血糖を起こすリスクがあるとされ、7歳以上の猫は丸1日(24時間)食べないなら受診を検討、持病がある場合は半日でも受診を検討するようすすめられています。食事をとらず、かつ水も飲まない状態が12〜24時間続いている場合は、年齢に関わらずすぐに受診すべきとされています。背景にあるのが肝リピドーシス(脂肪肝)で、とくに太っている猫は2〜3日食べないだけで発症するリスクがあると説明されています。「引っ越しのストレスだから、そのうち食べるだろう」と待つ判断がいちばん危ないところです。

成猫は24時間以上食べない場合に注意、48時間以上でかなり危険とされること、生後2〜3か月の子猫は半日(12時間程度)でも低血糖のリスクがあること、7歳以上は丸1日で受診検討・持病があれば半日でも受診検討とされること、食べず水も飲まない状態が12〜24時間続く場合は年齢に関わらずすぐ受診、太っている猫は2〜3日食べないだけで肝リピドーシスを発症するリスクがあることについて。オダガワ動物病院「猫の食欲不振」より。

注意

何度もトイレに行くのに尿が出ない、トイレで苦しそうに鳴く、といった様子は緊急です。姉ヶ崎どうぶつ病院の解説では、尿道閉塞は尿道栓子などが尿道に詰まって尿が正常に出なくなる病気で、とくにオスはメスより尿道が細いため発生しやすいとされています。完全に詰まってしまうと急性腎障害や尿毒症に発展して一刻を争う事態となり、急速に全身の状態が悪化して、最終的に発作や不整脈を起こして命を落とす危険性もあると説明されています。また、しらい動物病院は、尿が出ないからといって飼い主が腹部を圧迫して排尿させようとすることは絶対にやってはいけない、炎症を起こして拡張し弱っている膀胱はその程度の圧力でも破裂するリスクがある、と強く注意を促しています。自分でどうにかしようとせず、夜間や休日でも、救急対応の動物病院を探して連絡してください。

尿道閉塞が尿道栓子などの詰まりで起こること、オスは尿道が細く発生しやすいこと、完全に詰まると急性腎障害や尿毒症に発展して一刻を争う事態になること、発作や不整脈を起こして命を落とす危険性もあることについて。姉ヶ崎どうぶつ病院「猫の尿道閉塞について」より。

尿が出ないときに腹部を圧迫して排尿させようとしてはいけないこと、炎症を起こして拡張した膀胱はその程度の圧力でも破裂するリスクがあることについて。しらい動物病院「猫のおしっこが出ない!観察ポイントや応急処置の紹介」より。

不安が強く出る子では、動物病院で相談したうえで対処法を検討する道もあります。合成フェロモン製剤のような環境面の補助から、必要に応じた薬まで選択肢がありますが、どれを使うかは猫の年齢・持病・体重によって変わります。市販のサプリメントであっても、持病のある猫では獣医師に確認してから使いましょう。人用の薬を分け与えることは、絶対にしないでください。留守番中の不安が強い場合の考え方は

も参考になります。

引っ越し後の手続き — マイクロチップ・動物病院・保険

引っ越しの慌ただしさで後回しになりやすいのが、住所に関する手続きです。とくにマイクロチップは、住所が古いままだと「入れている意味がない」状態になります。

引っ越し後に済ませる手続き

  • マイクロチップの登録事項変更届出(環境省に登録済みなら変更日から30日以内)
  • 新しいかかりつけ動物病院を探し、既往歴・検査データを引き継ぐ
  • ペット保険の住所変更(契約者情報の変更手続き)
  • 夜間・救急対応の動物病院の連絡先を調べて冷蔵庫などに貼る
  • 迷子札の住所・電話番号を新しいものに作り直す
  • 近所の動物病院・保護団体に、万一のときの相談先として目星をつける

まず前提として、大阪市の案内では、令和4年6月1日以降に犬猫等販売業者(ブリーダーやペットショップ)が犬猫を取得した場合はマイクロチップの装着と環境大臣の登録が義務づけられた一方、現在犬や猫を飼っている一般の所有者については装着は義務ではなく、装着に努める努力義務と説明されています。届出の話は、すでにマイクロチップを装着して環境省(指定登録機関)の登録を受けている犬猫についてのものだと理解しておいてください。

そのうえで、環境省に登録済みのマイクロチップの登録内容に変更が生じた場合は、変更日から30日以内に指定登録機関へ届け出る必要があります。飼い主自身は変わらず住所や電話番号などの登録事項だけが変わるケースは「登録事項の変更届出」にあたり、環境大臣指定登録機関(公益社団法人日本獣医師会)の登録サイトで、オンラインまたは紙で手続きできます。この変更届出には手数料がかかりません。所有者そのものが変わる「所有者変更登録」とは別の手続きで、そちらは手数料が必要です。制度全体の整理は

にまとめています。

注意したいのは、2022年6月の制度開始より前からAIPO(日本獣医師会が運用してきた民間データベース)などに登録していて、環境省データベースへの移行登録をしていない場合です。この場合は環境省の登録とは別管理のままなので、環境省側の30日以内の届出ではなく、登録している民間データベース側へ変更手続きをすることになります。大阪市も、民間の登録団体に登録済みで環境省のデータベースへの登録を希望する場合は、指定登録機関で登録・変更登録・届出の手続きができると案内しています。自分の猫がどちらに登録されているかわからないときは、登録証明書やハガキの発行元を確認するか、装着した動物病院に問い合わせてから手続きしましょう。

「所有者自身は変わらず、住所や電話番号等の登録事項が変わる場合」が登録事項の変更届出にあたること、この手続きに手数料がかからないこと、所有者変更登録とは別の手続きであることについて。犬と猫のマイクロチップ情報登録(環境大臣指定登録機関)より。

令和4年6月1日以降に犬猫等販売業者が取得した犬猫は装着と環境大臣の登録が義務づけられた一方、現在飼っている一般の所有者には装着が義務ではなく努力義務であること、登録事項に変更が生じた場合は変更日から30日以内に指定登録機関への届出が必要であること、民間の登録団体に登録済みで環境省データベースへの登録を希望する場合も指定登録機関で手続きできることについて。大阪市「犬・猫のマイクロチップの装着等の義務化について」より。

動物病院の引き継ぎも早めに。転居先で近い病院をいくつか調べ、猫の診療に慣れているか、夜間や休日の対応はどうかを確認します。前の病院からもらった検査データやワクチン接種歴を持参すると、初診でも状況が伝わりやすくなります。持病がある猫では、薬が切れる前に受診しておきましょう。ペット保険に加入している場合は、契約者の住所変更手続きが必要です。書類の送付先が古いままだと更新の案内が届かず、気づかないうちに失効するおそれがあります。

多頭飼いの場合に気をつけたいこと

多頭飼いでは、引っ越しでいったん関係がリセットされることがあります。前の家では住み分けができていた猫同士が、新居では場所の取り合いになる。あるいは、病院やホテルに預けたあと、においが変わったことで一時的にうなり合う。どちらもよくある反応です。

International Cat Careは、多頭飼いの家庭が今より狭い物件に移ると、猫同士の緊張を招く可能性があるとし、ベッドやトイレなどの資源を十分に用意してリスクを下げるよう勧めています。実務的には、猫トイレは「頭数プラス1個」を目安に、食器・水飲み場・寝床・爪とぎ・高い場所も分散して複数用意すること、そして目線が合いにくいように配置をずらすことがポイントです。

より狭い物件に移ると猫同士の緊張を招く可能性があり、ベッドやトイレなどの資源を十分に用意してリスクを下げるよう勧められていることについて。同上。

険悪になった場合は、無理に同席させず、いったん部屋を分けて、初対面のときと同じように段階を踏み直します。においの交換から始め、ドア越し、短時間の対面と進めるやり方は

にまとめています。うなり声や取っ組み合いが続く、片方が食事やトイレに行けない、といった状態が長引くときは、環境の問題だけでなく体調の問題が隠れていることもあるので、動物病院に相談してください。

よくある質問

引っ越し当日、猫は最初に運ぶのと最後に運ぶのとどちらがいいですか
旧居では最後、新居では最初が基本です。旧居では猫を1部屋に隔離し、ほかの部屋がすべて空になってから最後にその部屋を片づけ、直前に猫をキャリーへ入れます。新居では猫の部屋にする荷物を最初に降ろして寝床・トイレ・食器を整え、そこへ猫を入れます。この順序なら、猫が何もない空間に置かれる時間を最短にできます。作業中の車内待機は、夏場は特に危険なので避けてください。
当日はハーネスをつけておけば脱走しても安心ですか
安心とは言えません。強い恐怖でパニックになった猫は、ふだんは抜けないハーネスからでも抜けることがあります。当日の基本は、ドアと窓を閉めた1部屋に隔離するか、キャリーやケージに入れておくこと、あるいは動物病院やペットホテル、友人宅へ一時的に預けることです。ハーネスはあくまで補助と考え、それだけに頼らないでください。
新居に着いてから、何日くらいで自由に歩かせていいですか
日数で決めるより、猫の様子で決めます。食欲が戻り、隠れ場所から出て自分から歩き回るようになったら、隣の部屋を1つずつ開けていきます。数日で全部屋を歩く子もいれば、2週間かかる子もいます。International Cat Careは、新居に移った猫を少なくとも2〜3週間は屋外に出さないよう勧めています(屋外に出る飼い方が一般的な英国での推奨です)。完全室内飼いが基本の日本では、「引っ越し後2〜3週間はまだ環境に慣れきっていない不安定な時期」という目安として受け取ってください。緊張が強く出たら、前の段階へ戻して構いません。
引っ越し後、ごはんを食べません。いつ受診すればいいですか
成猫で24時間以上まったく食べないなら受診を検討してください。子猫やシニア、持病のある猫、太り気味の猫はもっと早い段階で相談したほうが安全です。水も飲まない、ぐったりしている、嘔吐を繰り返す、白目や歯ぐきが黄色いといった場合は、時間帯を問わずすぐに動物病院へ。食べない状態が続くと肝臓に脂肪がたまる病気につながることがあるため、様子見を長く続けないことが大切です。
引っ越したら、マイクロチップの手続きは必要ですか
マイクロチップを装着して環境省(指定登録機関)の登録を受けている犬猫は必要です。住所や電話番号など登録した内容に変更が生じたときは、変更が生じた日から30日以内に指定登録機関へ届け出ます。飼い主が変わらず住所だけ変わる場合は「登録事項の変更届出」にあたり、手数料はかかりません。オンラインまたは紙で手続きできます。なお、装着そのものは、すでに飼っている一般の飼い主にとっては義務ではなく努力義務です。2022年6月より前からAIPOなど民間のデータベースにのみ登録している場合は環境省の登録とは別管理なので、登録先を確認して、必要な側で変更手続きをしてください。古い住所のままだと、脱走して保護されても連絡が届きません。迷子札の記載も、あわせて新しい住所・電話番号に作り直しておきましょう。

まとめ

猫にとっての家は、間取りではなく「においで作った安全地図」です。引っ越しはその地図が一度消える出来事なので、ストレスは避けられません。できるのは、変化を小刻みにして、においの連続性をできるだけ残すことです。1か月前に健康診断とキャリー慣らしと新居の下見、1週間前から猫のいない部屋の荷造り、当日は閉め切った1部屋か預け先で脱走を防ぎ、新居では1部屋から段階的に。この流れを押さえるだけで、猫の負担はかなり変わります。

そして、忘れやすい2つを最後にもう一度。ひとつは当日の脱走対策で、ハーネスに頼らず物理的に「出られない状態」を作ること。もうひとつは、環境省に登録済みのマイクロチップなら、登録住所を変更日から30日以内に更新することです(民間データベースにのみ登録している場合は、その登録先で変更手続きをします)。引っ越しの前後は脱走が起きやすい時期なので、この2つがそのまま「万一のときに帰ってこられるか」を分けます。

24時間以上食べない、尿が出ない、ぐったりしているといったサインが出たときは、引っ越しのストレスだからと様子を見ずに、動物病院に相談してください。判断に迷う不安や薬のことも、自己判断せず、かかりつけの獣医師に相談するのがいちばん確実です。新しい家が、猫にとっても安心してにおいをつけられる場所になるまで、少し気長に付き合ってあげましょう。

出典・参考

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猫グッズ・おもちゃ

猫のキャリーバッグ(キャリーケース)の選び方|ハード・ソフト・リュックを中立比較

通院や災害避難、引っ越しで欠かせない猫のキャリーバッグを、ハードタイプ・ソフト2WAY・リュック型・上開き/両開きといったタイプ別に中立比較します。サイズや耐荷重・通気・洗いやすさ・車内固定・普段からの慣らし方、防災の備えとしての考え方まで整理しました。

住環境・お留守番

猫のマイクロチップはどこまで義務?2026年の現状と飼い主がやる登録・変更手続き

猫のマイクロチップは「販売業者は装着・登録が義務、すでに飼っている一般の飼い主は努力義務」という線引きが現状です。購入した猫を迎えたら30日以内の変更登録が義務、住所などの変更も30日以内、手数料はオンライン400円・郵送1400円、指定登録機関は日本獣医師会。迷子や災害・脱走時の身元確認に役立つ意義や、首輪・迷子札との併用、装着は動物病院で、といった制度と手続きの実務を環境省の情報をもとに整理します。