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猫のがん(腫瘍)に家庭で早く気づくために|しこりの触り方と見逃しやすいサイン

対象の目安: 成猫・シニア猫

ミオ食事・健康担当
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猫のがん(腫瘍)に家庭で早く気づくために|しこりの触り方と見逃しやすいサイン

撫でていた指先が、いつもと違う感触に止まる。お腹のあたりに、小さなコリコリしたものがある気がする。そんなとき、頭のなかは一気に不安でいっぱいになります。ただ、猫の体にできるしこりは、そのすべてが腫瘍というわけではありませんし、腫瘍のすべてが悪性というわけでもありません。この記事は、猫のがんを怖がるための記事ではなく、「気づけるようにしておく」ための記事です。家庭でできる観察の手順と、動物病院に相談したいタイミングを、落ち着いて整理していきます。

まず前提|しこり=がんとは限らない

体にしこりを見つけると、どうしても最悪の可能性が浮かびます。けれど実際には、腫瘍以外の原因でしこりのように感じられるものもあります。

けんご動物クリニックは、猫のしこり・できものについて「必ずしも悪性腫瘍とは限らず、良性の脂肪腫や炎症性のしこり」も含まれるとし、腫瘍以外の例としてケンカによる噛み傷からの感染でできる膿瘍、皮脂や角質が蓄積した嚢胞性のもの、肉芽腫、ポリープなどを挙げています。

光が丘動物病院グループは、腫瘍以外で体表にできるしこりとして表皮嚢胞、結節性皮脂腺過形成、皮膚の炎症や感染による膿疱が「しこりのように見えることもあります」と説明しています。

同時に、逆のことも言えます。触ってやわらかいから、痛がらないから、小さいから安心、とも言い切れません。同じ解説のなかで、猫の皮膚・皮下のしこりは統計上およそ半数が悪性腫瘍だとも述べられています。

けんご動物クリニックは「皮膚・皮下のしこりの悪性腫瘍は猫では多く、統計ではおよそ悪性腫瘍50%、良性腫瘍25%、非腫瘍25%になります」と記載しています。あわせて「見た目や触り心地では病名を見分けることはできず、確定診断は病理組織検査」とも明記しています。

「たぶん脂肪腫だろう」と様子見に傾けるだけの材料は、家庭側にはないということです。家庭側の役割は「良性か悪性かを判断すること」ではありません。いつもと違う何かに早く気づいて、判断は動物病院にゆだねる。この線引きをはっきりさせておくと、必要以上に不安をふくらませずにすみます。

メモ

この記事で紹介するのは、あくまで家庭でできる観察の方法です。しこりの性質や進行の見立て、治療方針は動物病院で猫を診てもらったうえで決まります。ここに書かれた特徴に当てはまる・当てはまらないで自己判断せず、気になったら早めに相談してください。

猫に多い腫瘍と、家庭で気づきやすいサイン

腫瘍の種類によって、家庭から見えるサインは大きく異なります。「しこりとして触れるもの」もあれば、「体重や食べ方の変化としてしか表れないもの」もあります。代表的なものを整理しておきます。

腫瘍の例家庭で気づきやすいサインとして挙げられているもの補足
リンパ腫消化器型では下痢や嘔吐、縦隔型では咳や呼吸困難、多中心型では顎・脇の下・内股・膝の裏側などの体表リンパ節の腫れ、皮膚型では湿疹や脱毛若い猫では縦隔型、老齢の猫では消化器型が主とされる
乳腺腫瘍お腹側の乳腺のラインに触れる小さなしこりほぼメスに発生。悪性の割合が高いと報告されている
扁平上皮癌(皮膚)耳・鼻・まぶた・足先などのかさぶた、治らないただれ白い被毛の猫に多く、紫外線の影響が要因のひとつとされる
扁平上皮癌(口腔内)よだれ、口臭、食べ方の変化、口を気にする猫の口の中の腫瘍はほとんどが悪性とされる
肥満細胞腫顔や耳介の小さなできもの、脱毛や炎症。内臓型では嘔吐・下痢・食欲不振中高齢の猫に多い傾向。皮膚型は比較的良性が多いとされる一方、内臓型は悪性度が高いとされる
注射部位肉腫注射した部位に皮下の硬いしこり頸部背側、肩甲骨間、腰部、臀部、大腿部外側などに発生

アニコム損保「みんなのどうぶつ病気大百科」は、猫のリンパ腫を多中心型・消化器型・縦隔型・皮膚リンパ腫に分類し、若い猫に発生が多い縦隔型と老齢の猫に多い消化器型が主となるとしています。症状は消化器型で下痢や嘔吐、縦隔型では胸水がたまることも多く咳や呼吸困難、多中心型では顎・脇の下・内股・膝の裏側などの体表リンパ節が腫れる、皮膚型では皮膚に湿疹や脱毛と説明されています。原因のひとつとして猫白血病ウイルス(FeLV)の感染が挙げられ、治療は抗がん剤の投与とされています。

アニコム損保「みんなのどうぶつ病気大百科」は、猫の肥満細胞腫について皮膚に発生する「皮膚型」と脾臓・肝臓・腸などに発生する「内臓型」があるとし、「『皮膚型』は比較的良性の腫瘍が多いのですが、『内臓型』の場合、悪性度が高く転移しやすいといわれています」と説明しています。皮膚型は顔や耳介に発症することが多く単独または多発性で脱毛や炎症を伴うことも多い、内臓型は嘔吐や下痢、食欲不振などの症状を引き起こすことがあり、転移の場所によっては死にいたることもあるとされています。中高齢の猫に多く発症する傾向があるとも記載されています。

とくに口の中の腫瘍は、外から見て気づくのが難しいタイプです。

光が丘動物病院グループは、猫の口の中にできる腫瘍はほとんどが悪性で、なかでも多いのが口腔内扁平上皮癌だとしています。「ある程度の大きさにならないと症状は現れません」「進行スピードが早く」と述べ、普段から口の中をよく観察することの重要性を挙げています。診断には病理組織検査、広がりの確認にはレントゲン検査やCT、MRIなどの画像診断が必要とされています。

ワクチンの注射部位について

注射部位肉腫の名前を見て不安になった方もいるかもしれません。ここは冷静に受け止めたいところで、ワクチンをやめる理由にはなりません。むしろリンパ腫の原因のひとつとされる猫白血病ウイルスは、ワクチンや感染猫との接触を避けることが対策になります。知っておきたいのは「打った場所にしこりが残っていないか、あとで確かめる」という習慣のほうです。

松原動物病院は、猫の注射部位肉腫(ISS)について、頸部背側、肩甲骨間、腰部、臀部、大腿部外側などに発生し、多くは中年齢以降(平均8歳)に発生するとしています。一般的には皮下に触れる硬固な腫瘤として気づくとされ、生検を検討する基準として「ワクチン接種部位の腫瘤が3ヶ月以上存在するとき」「腫瘤の大きさが直径2cm以上になったとき」「ワクチン接種後1ヶ月以上経過しても腫瘤が大きくなり続けるとき」の3点を挙げています。治療は外科手術を中心とした集学的治療が必要とされています。

注意

ワクチン接種後、一時的に接種部位が腫れることは珍しくありません。問題になるのは、しこりが長く残る・大きくなり続ける・直径2cm以上になる場合です。接種した日と部位をメモしておき、上記のような経過をたどるときは自己判断で様子を見ず、接種した動物病院に相談してください。ワクチンの必要性や回数についても、生活環境をふまえてかかりつけと相談するのが基本です。

乳腺のセルフチェックが特に大切とされる理由

家庭でのチェックが最も直接的に役立つとされているのが、乳腺のしこりです。理由は2つあります。悪性の割合が高いと報告されていること、そして見つかった時点での大きさが予後に関わるとされていることです。

日本獣医がん臨床研究グループ(JVCOG)が運営する「キャットリボン運動」は、猫の乳腺に発生する腫瘤性病変の80%以上が悪性腫瘍で、悪性腫瘍の98%が乳腺癌で占められているとしています。米国コーネル大学の猫の健康情報センターも、猫の乳腺のがん(feline mammary cancers)のおよそ85%は致死的な悪性の腺癌だと説明しています。こちらはしこり全体ではなく、乳腺のがんのうちの内訳を示した数字です。

キャットリボン運動(JVCOG)の学術情報ページは、「猫の乳腺部に発生する腫瘤性病変の80%以上が悪性腫瘍で、悪性腫瘍の98%が乳腺癌で占められている」と記載し、猫の乳腺癌の初診時のリンパ節転移率を20〜42%としています。腫瘍径別の生存期間中央値についても、同ページが引用・改変して掲載しているMacEwenら(1984年)の生存曲線で、直径2cm未満は4.5年、2〜3cmは2年、3cm以上は6か月と示されています。ただし同ページは、腫瘍の大きさと予後の関係を示さなかった研究もあるとして「腫瘍の大きさ単独ですべての猫の乳腺癌の予後を評価することは難しそうである」とも述べています。

Cornell Feline Health Centerは「Approximately 85 percent of feline mammary cancers are lethally malignant adenocarcinomas.」とし、診断は10〜12歳が典型的で、初期の腫瘍は乳頭のすぐ下や横にできる小さく硬い結節として現れ、初期には痛みがなく気づきにくいと説明しています。飼い主に対しては、乳腺と乳頭に沿ってお腹側を毎週触診することをすすめています。

避妊手術の時期との関係

避妊手術を早い時期に行うほど、乳腺腫瘍の発生リスクが下がると報告されています。数値は情報源によって示し方が異なるので、実際に記載されているものをそのまま並べます。

出典記載されている内容
キャットリボン運動(JVCOG)生後6か月未満で避妊手術を実施した場合、乳腺癌の発生率は91%低下(オッズ比0.09)。7〜12か月未満で86%低下(同0.14)、13〜24か月で11%低下(同0.89)、24か月以降は効果なし
Cornell Feline Health Center生後6か月より前に避妊した猫では91%のリスク低減、1歳より前では86%の低減。初回発情前の避妊をすすめており、生後3〜4か月という早い時期でもよいとしている

キャットリボン運動(JVCOG)の学術情報ページは、避妊手術の実施時期別に、生後6か月未満で91%低下(オッズ比0.09)、7〜12か月未満で86%低下(0.14)、13〜24か月で11%低下(0.89)、24か月以降は効果なしと記載しています。この数値の出典として、同ページはOverleyら(2005年)の報告を挙げています。

Cornell Feline Health Centerは「Cats spayed prior to six months of age had a 91 percent reduction in risk and those spayed prior to one year of age had an 86 percent reduction.」と記載しています。避妊の時期については「spayed before they enter their first heat cycle, as young as three to four months of age」とし、初回発情を迎える前の避妊を、生後3〜4か月という早い時期も含めてすすめています。

2つの情報源で6か月未満91%・1歳未満(7〜12か月)86%という数値は一致しています。手術の適齢はその猫の体格や健康状態、動物病院の方針によっても変わるため、実際の時期はかかりつけと相談して決めてください。すでに避妊手術を受けていない成猫と暮らしている場合も、いまから予防効果を期待するというより、セルフチェックと定期健診で早く見つける方向に切り替えるのが現実的です。

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月1回のボディチェックの手順

キャットリボン運動は、乳腺のセルフチェックの目安を月に1回としています。せっかくなので、乳腺だけでなく全身をひととおり触る時間にしてしまうのがおすすめです。爪切りやブラッシングの前後など、すでにある習慣にくっつけると続きます。

  1. 1

    機嫌のいいタイミングを選ぶ

    猫が甘えてきたときや、遊んでほしそうにしているときが向いています。無理に押さえつけると、次から触らせてくれなくなります。
  2. 2

    首から順に、背中・胸・お腹へ広げる

    指の腹を使って、毛の上を滑らせるのではなく、皮膚とその下を感じるくらいの力でゆっくり撫でます。皮膚がたるんでいる部分は、少し擦るように触れると分かりやすいとされています。
  3. 3

    乳腺のラインをたどる

    膝で挟むように仰向けにするか、後ろ足で立たせた姿勢にして、わきの下から後ろ足の付け根まで、上から下へ右側・左側の順に触ります。猫の乳腺は8つあるとされ、乳頭のすぐ下や横に小さな結節ができることがあります。
  4. 4

    体表リンパ節の位置も確認する

    顎の下、脇の下、内股、膝の裏側。左右で大きさが違わないか、以前より腫れていないかを見ます。
  5. 5

    口の中と、色の薄い皮膚をのぞく

    口臭・よだれ・歯ぐきの色や腫れ、口の中のできものを確認します。耳の先や鼻先など被毛の薄い部分に、かさぶたやただれが残っていないかも見ます。
  6. 6

    体重を測って記録する

    猫を抱いて体重計に乗り、自分の体重を引く方法で十分です。日付・体重・気づいたことを、同じノートかアプリにまとめておきます。
  7. 7

    嫌がったら、そこで終わりにする

    「途中でイヤがったら、続きはまた次回でOK」とされています。1回で完璧にやるより、毎月続くことのほうが価値があります。

キャットリボン運動のセルフチェックページは、猫の機嫌がいいときに膝で挟むようにして仰向けにし、「おっぱいの周り、わきの下から足の付け根まで広い範囲をチェック」「上から下に向かって、右側・左側と順に行うと、もれなくチェックできます」と説明しています。頻度の目安は月に1回、「途中でイヤがったら、続きはまた次回でOK!」とし、少しでも違和感や異変を感じたらすぐホームドクターに相談するよう呼びかけています。

光が丘動物病院グループは、毎日のスキンケアやブラッシング、スキンシップの時間を活用して全身を撫でながら確認すること、皮膚がたるんでいる部分は少し擦るように触れるとよいことを挙げています。

キャットリボン運動は、猫には8つの乳腺があるとし、33〜60%の確率で複数の乳がんが確認される可能性があること、99%がメスに発生すること、リスクがもっとも高まるのは10〜12歳であることを挙げています。

しこりを見つけたときは、あわてて何度も揉んだり潰そうとしたりせず、大きさ・場所・硬さ・見つけた日をメモして、そのまま動物病院に相談してください。スマートフォンで撮るときは、隣に定規や硬貨を置くと大きさが伝わりやすくなります。キャットリボン運動のオリジナルピンバッジも、縦の長さが約2cmでセルフチェックの目安に使えるものとして案内されています。手元にある何かを「2cm」の基準として決めておくのも一案です。

キャットリボン運動のチャリティページは、オリジナルピンバッジについて「縦の長さが約2cmになっており、セルフチェック時の目安にお使いいただけます」と説明しています。

健康診断は毎年受けていたのですが、その合間に自分で触る習慣はありませんでした。爪切りのあとに全身を触る時間を作るようにしたら、思っていたよりずっと簡単で。何もなかった月も「今月も何もなかった」と書き残しています。それだけで気持ちが落ち着きます。

見逃されやすい非特異的なサイン

しこりのように「触れば分かるもの」ばかりではありません。むしろ、はっきりしないサインのほうが多いくらいです。コーネル大学の猫の健康情報センターは、意図しない体重減少に警戒すべきだとし、がんは栄養の吸収を低下させ代謝の需要を高めるため、食欲が保たれていても体重が減ることがあると説明しています。

Cornell Feline Health Centerは「Unintended weight loss should set off alarms.」とし、毎日見ていると変化に気づきにくいため月1回の体重測定をすすめています。あわせて、血が混じるよだれは口の中の腫瘤による可能性があること、口の腫瘍はしばしば強い口臭を伴うこと、治らない傷は問題で、とくに白い猫の顔や耳の傷は注意が必要なこと、隠れる時間が増える・活動が減る・毛づくろいをしなくなるといった行動の変化、膨満、食べにくさ、跛行、目に見えるしこりを挙げています。飼い主が猫の普段の見た目を知っておくことで変化に気づけるとし、早期の診断がより有効な治療につながるとしています。

変化家庭での気づき方見落としやすい理由
体重が減っている月1回、同じ条件で測って記録する毎日見ているほど変化に気づきにくい。長毛だと見た目で分かりにくい
毛づやが落ちた・毛玉ができるブラッシング時の手触り、写真の比較加齢のせいと片づけてしまいやすい
毛づくろいが減った顔まわりや背中の毛のべたつき、体臭「おとなしくなった」と好意的に解釈されやすい
寝る場所が変わった・隠れる昼間いる場所を思い出してみる気分や季節の変化と区別しにくい
食べ方が変わった硬いフードを残す、片側だけで噛む、口を前足で気にする食欲自体は落ちていないと安心してしまう
よだれ・口臭顔まわりの濡れ、寝床のにおい歯周病と思い込みやすい。実際に両方が関係することもある
呼吸が速い・咳寝ているときの呼吸数を数える猫は苦しさを表に出しにくい
排泄の変化便の形状、回数、いきむ様子トイレを見ていないと気づけない

体重は、家庭で数字として残せる数少ない指標です。4kgの猫が200g減っても、抱いただけではまず分かりません。だからこそ、コーネル大学の解説でも月1回の測定がすすめられているのだと思います。もっとも、体重が減る原因は腫瘍だけではなく、慢性腎臓病や甲状腺機能亢進症、糖尿病など、シニア期に増える病気の多くが体重減少を伴います。気づいた時点で「がんかもしれない」と決めつけず、まず動物病院で相談してください。老化に伴う変化全般とも重なる部分なので、あわてず順番に確認していきましょう。

皮膚と日光|色の薄い部分は特に見ておく

耳の先や鼻先など、被毛が薄く色素の少ない部分にできるかさぶたやただれは、なかなか治らないときに注意したいサインとして挙げられています。

武内どうぶつ病院は、猫の扁平上皮癌について「猫では、特に毛の色が白い子に発生が多いと言われています。これは紫外線の影響がひとつの要因とされています」と説明しています。発生部位は皮膚(特に耳、鼻、まぶた、足先など)のほか口腔内や肺などにも生じるとされ、病変の外観は「かさぶた状、カリフラワー状、キノコ状など様々」で見た目だけでは診断できないとしています。治療は外科切除、放射線照射、化学療法のほか、COX-2阻害剤などによる緩和療法も試みられているとされます。

「掻き壊したのかな」「ケンカかな」と思って様子を見ているうちに、いったんかさぶたが取れて治ったように見えることもあります。コーネル大学の解説も、治らない傷は問題で、とくに白い猫の顔や耳にできた傷は注意が必要だとしています。同じ場所に繰り返しできる、というのがひとつの目安になります。窓辺の日光との付き合い方は

で扱っています。

受診の目安

次のような様子があるときは、家庭での観察を続けるより先に、動物病院に相談してください。

動物病院に相談したいサイン

  • 体のどこかに、以前はなかったしこりを見つけた
  • しこりが急に大きくなった、表面がデコボコしている、血や液体が出ている
  • 触ると痛がる、硬いしこりがある、1か月以上治らない
  • ワクチンなど注射をした部位のしこりが3か月以上残っている、直径2cm以上になった、接種後1か月以上たっても大きくなり続けている
  • お腹側の乳腺のラインに、コリコリしたものが触れる
  • よだれが増えた、口臭が強くなった、口を前足で気にする、硬いフードを食べなくなった
  • 耳の先や鼻先のかさぶた・ただれが治らない、同じ場所に繰り返しできる
  • 顎の下や脇の下、内股、膝の裏側のふくらみが左右で違う
  • 食欲があるのに体重が減っている、または月1回の測定で減りが続いている
  • 隠れる時間が増えた、毛づくろいをしなくなった、毛づやが落ちた
  • 呼吸が速い、咳が出る、お腹が張っている、足を引きずる

光が丘動物病院グループは、急に大きくなったもの、大きいもの、表面がデコボコしているもの、血や液体が出ているものに注意が必要だとし、針を使って細胞を取り出し顕微鏡で調べる針吸引細胞診(FNA)で腫瘍の種類を推定すると説明しています。中高齢の5〜6歳を過ぎたら年に1回は健康診断をすすめています。

けんご動物クリニックは、受診の目安として「急に大きくなった」「触ると痛がる」「硬いしこりがある」「1か月以上治らない」を挙げ、できるだけ早く受診するようすすめています。

動物病院での検査と、定期健診の位置づけ

診察では、しこりの位置や硬さ、動き方を確認したうえで、必要に応じて検査が行われます。よく行われるのが、細い針でしこりの細胞を吸い取って顕微鏡で見る針吸引細胞診(FNA)です。ただし、細胞診だけで結論が出るとは限りません。

けんご動物クリニックは、細胞診について「一部の細胞で判断することとなり、全体の組織を見られないため、病理検査に比べて確定診断にいたらず疑いのままになることが多い」と説明しています。

そのため、組織の一部または全体を採って調べる病理組織検査や、広がりを確認するレントゲン・超音波・CT・MRIといった画像検査を組み合わせて、方針が決まっていきます。検査が段階的になるのは、慎重に見極めているからです。「一度で分からなかった」ことを不安に感じすぎる必要はありません。

そして、家庭のチェックと並ぶもうひとつの柱が定期健診です。

ペットの健康診断を推進する獣医師団体Team HOPEは、猫について0歳から年に1回の健康診断をすすめ、「7歳以上の猫には年に2回の健康診断を推奨」と明記しています。推奨検査項目は血液検査・尿検査・レントゲン検査で、異常があった際には超音波検査やMRI検査などをかかりつけ医と相談して行うよう案内しています。理由として「猫は人間の約4倍のスピードで年をとります。猫の7歳は人間でいえば、50歳近い年齢です」と説明されています。

家庭のボディチェックは、健診と健診のあいだを埋める役割です。年2回の健診に、月1回のセルフチェックと体重測定を重ねる。これが、いま家庭でできる現実的な組み合わせだと思います。

治療と、決めることの重さ

腫瘍が見つかったあとの治療は、種類・場所・広がり・猫の年齢や体調によって大きく変わります。一般的には、外科手術、放射線療法、化学療法(抗がん剤)、そして症状をやわらげる緩和ケアが選択肢として挙げられます。どれが適しているか、どのくらいの効果が期待できるかは、ここで一般論として断定できるものではありません。担当の獣医師から、その猫の状態に即した説明を受けてください。

メモ

セカンドオピニオンを求めることも、選択肢のひとつです。腫瘍科を専門に扱う動物病院もあり、かかりつけから紹介してもらえることがあります。「疑っているようで申し訳ない」と感じる必要はありません。納得して選ぶための手続きだと考えて大丈夫です。

そして、忘れずに書いておきたいことがあります。この場面で重い荷物を背負うのは、猫だけではありません。治療を続けるかどうか、どこまで負担をかけるか、最期をどう迎えるか。コーネル大学の猫の健康情報センターは、終末期の猫を残された数週間・数か月、場合によっては数年のあいだどう世話していくかという課題そのものを「a formidable, heart-wrenching challenge(耐えがたく、胸が張り裂けるような課題)」と表現しています。安楽死を含む終末期の判断についても、同じ解説のなかで別に触れられています。家庭でできることとして、休む場所の近くにトイレを移すこと、家庭で使える痛みの薬について獣医師から教わっておくこと、食欲が落ちたときの食事の工夫や食欲増進剤について相談することなどが挙げられています。

Cornell Feline Health Centerは、がんの猫の在宅ケアについて、動きにくくなった猫のためにトイレを休息場所の近くへ移すこと、猫が楽な高さで関わること、家庭で投与できる痛み止め(経口・注射・パッチ)について学んでおくこと、呼吸の異常など苦痛のサインを見分けられるようにしておくこと、食欲低下と体重減少に対して食事の変更や食欲増進剤を獣医師と検討することを挙げています。冒頭では、終末期の猫の飼い主が向き合う課題を「How best to care for the beloved animal during the last weeks, months, or possibly years of its life.」として示し、これを「a formidable, heart-wrenching challenge」と表現しています。安楽死を含む重要な終末期の判断については、猫が動けなくなっていく段階の説明のなかで別に述べられています。

早期発見の話をしてきましたが、それは「見つけられなかった飼い主が悪い」という意味ではまったくありません。見つけにくい腫瘍もありますし、見つかった時点でできることが限られている場合もあります。できるのは、気づける習慣を持っておくことと、迷ったときにひとりで抱えず相談することです。

しこりを見つけました。すぐ病院に行くべきですか、少し様子を見てもいいですか?
見た目や触り心地では良性か悪性かは判断できないとされているため、原則として早めの受診をおすすめします。とくに、急に大きくなった、表面がデコボコしている、血や液体が出ている、触ると痛がる、1か月以上治らないといった場合は、できるだけ早く受診するようすすめられています。行くまでの間は、大きさ・場所・硬さと見つけた日をメモし、繰り返し揉んだりしないでください。
避妊手術をしていない7歳の猫です。いまから避妊手術をすれば乳腺腫瘍を予防できますか?
キャットリボン運動(JVCOG)の記載では、避妊手術による乳腺癌の発生率低下は生後6か月未満で91%、7〜12か月未満で86%、13〜24か月で11%とされ、24か月以降の実施では効果なしとされています。したがって成猫になってからの手術に、乳腺腫瘍の予防効果を期待するのは難しいと考えられます。ただし手術には子宮の病気の予防など別の目的もあり、必要性は年齢や健康状態によって変わります。月1回のセルフチェックと定期健診を続けつつ、手術の是非はかかりつけの獣医師に相談してください。
ワクチンの注射部位にしこりが残っています。がんでしょうか?
接種後に一時的なしこりや腫れができること自体は珍しくありません。松原動物病院は、生検を検討する基準として、しこりが3か月以上存在する・直径2cm以上になる・接種後1か月以上たっても大きくなり続ける、の3点を挙げています。これに当てはまるときは自己判断せず、接種した動物病院に相談してください。なお、猫白血病ウイルスの感染はリンパ腫の発症要因のひとつとされており、ワクチン接種そのものをやめる判断は、生活環境をふまえて獣医師と相談したうえで行ってください。
食欲もあって元気なのに体重だけ減っています。放っておいて大丈夫ですか?
コーネル大学の猫の健康情報センターは、意図しない体重減少に警戒すべきだとし、がんは栄養の吸収を低下させ代謝の需要を高めるため、食欲があっても体重が減ることがあると説明しています。ただし体重減少の原因は腫瘍だけではなく、慢性腎臓病や甲状腺機能亢進症、糖尿病などシニア期に多い病気でも起こります。いずれにしても確認したほうがよいサインなので、記録を持って動物病院に相談してください。
健康診断を毎年受けていれば、家でのチェックは不要ですか?
どちらか一方ではなく、組み合わせるのがおすすめです。Team HOPEは0歳から年1回、7歳以上では年2回の健康診断を推奨していますが、その合間にも変化は起こります。家庭のチェックは、健診と健診のあいだを埋める役割を持ちます。逆に、家で触っているから健診は不要ということもありません。血液検査や画像検査でしか分からないこともあるためです。
猫が触られるのを嫌がって、全身チェックができません。
無理に押さえつけると、次から警戒されてしまいます。まずは頭や首など、猫が喜ぶ場所を撫でるところから始め、1回で全身をやりきろうとしないのがコツです。キャットリボン運動も「途中でイヤがったら、続きはまた次回でOK」としています。ブラッシングや爪切りのついでに少しずつ範囲を広げる、月をまたいで部位を分ける、といった進め方でも十分です。急に触られるのを嫌がるようになった場合は、どこかに痛みがある可能性もあるため、その変化自体を動物病院に伝えてください。

まとめ

猫の腫瘍は、シニア期に入るほど身近になっていきます。それでも、体に触れて見つかったしこりのすべてが腫瘍というわけではなく、脂肪腫や炎症性のしこり、ケンカの傷からできた膿瘍のこともあります。見た目や触り心地では病名を見分けられないとされているのですから、家庭の役割は判断することではなく、気づくことです。

家庭でできるのは、月1回のボディチェックと体重測定です。首から背中、胸、お腹へと順に触り、わきの下から後ろ足の付け根まで乳腺のラインをたどり、顎の下・脇の下・内股・膝の裏側のリンパ節を確かめ、口の中と、耳先や鼻先など色の薄い皮膚をのぞく。そして体重を数字で残す。猫が嫌がったら、そこでやめて次回にまわす。これだけで、変化に気づける確率はずいぶん上がります。

猫の乳腺のしこりは悪性の割合が高いと報告されており、キャットリボン運動は2cm以下で発見できるかどうかが生存期間を左右するとしています。避妊手術の時期が早いほど発生リスクが下がるという報告もあり、これから迎える子猫の場合は、手術の時期をかかりつけと相談する価値があります。そして、シニア猫には年2回の健康診断が推奨されています。

しこりを見つけたときも、体重の減りに気づいたときも、ひとりで結論を出さないでください。細胞診・病理組織検査・画像検査を組み合わせて判断するのは動物病院の仕事です。気づいて、記録して、相談する。その3つができていれば、飼い主としてできることはきちんとできています。

本記事は一般的な情報提供であり、診断や治療、手術時期の適否を判断するものではありません。しこりや体調の変化に気づいたときは、かかりつけの動物病院で猫の状態を診てもらったうえでご相談ください。

出典・参考

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